腎移植外科

近年,わが国の臓器移植は腎移植を始めとして心・肝・肺・膵移植等の多臓器移植が実施されるようになり,多くの臓器不全患者の命を救い移植者のQOL向上を実現してきています。しかし,実施臓器移植数は欧米諸国に比べ極端に少なく,移植を希望する患者に移植医療を提供することは困難な現状であります。特に慢性腎不全医療における透析療法と腎臓移植手術のアンバランスは著しく,わが国の約30万人の慢性透析患者に対する年間腎移植実施件数は僅か1,600件足らずであり,米国の1/10にも満たないというのが現状です。実際,献腎登録から移植手術までの待機期間は平均14年余りであり,1万2000人以上の献腎移植希望者が手術を待っています。このようなわが国の慢性腎不全医療を打破するために,愛知医科大学において腎不全患者に対する包括的な医療体制を確立する事・腎移植を可能な限り多くの方に安全に確実に行う事を目的として平成24年4月より臓器移植外科が設立されました。具体的には,年間50件以上の規模の腎移植手術実施体制を整備し,将来的には,膵臟・肝臓移植などの多臓器移植をも視野に入れる予定であります。また教育・研究分野においては,移植医療に密接に関連し,臨床に即したオーダメード免疫抑制療法の開発(Gene polymorphism,薬物動態・薬力学,免疫応答,免疫寛容などの解析)を併せ行うことを考えています。

診療部門からのごあいさつ

教授 小林孝彰

教授 小林孝彰

腎移植外科

腎移植外科では,腎臓の機能が悪くなり腎代替療法を必要とされる方,すでに透析療法を施行されている方に健康な腎臓を移植する腎臓移植手術を行っております。 腎臓提供者に対するドナー腎摘術も鏡視下手術で行なっており,手術侵襲も大変軽減しています。 当科は愛知県を始め,岐阜県,三重県,静岡県,長野県,そして九州地方を含めた多くの透析施設と連携し,患者さんを受け入れています。


慢性腎臓病のため腎代替療法を必要とされる方へ
医学・薬学の進歩により移植成績は向上し,腎移植では5年生着率(5年後に移植した腎臓が機能している割合)が94%近くになっています。 しかし,日本では,移植医療は身近な医療として広く知られていません。 国民成人の8人に1人が慢性腎臓病ともいわれ末期腎不全になれば,透析(血液,腹膜)か腎移植が必要となります。
移植には亡くなられた方から提供していただく死体移植(献腎移植)と生きている方(親,きょうだい,配偶者など親族)からの生体移植があります。 本来は,亡くなられた方からの善意の提供(Gift of Life)が望ましいのですが,日本ではその数が極めて少なく,腎移植の約90%は生体ドナー(提供者)であるというのが現状です。
生体腎移植は,レシピエント(移植を受ける方)を思う献身的なドナーの行動があって初めて成り立つ医療です。 しかし,移植に至るまでには,不安,悩み,葛藤も存在します。 私たち愛知医科大学病院の移植チームは,他の診療科,とくに,腎臓・リウマチ膠原病内科,精神神経科・こころのケアセンター,看護部,薬剤部,中央臨床検査部,栄養部,病院事務部などと連携し,腎提供・移植,透析療法について,ご家族の皆さんが最善の選択をできるように情報を提供しております。 血液型が異なっていても安全に移植できます。 手術後の入院期間は,ドナー1週間,レシピエント2週間です。
移植を選択された場合には,ドナーの方も含めて生涯にわたりフォローアップさせていただきます。 多くの場合,ドナー,レシピエントは移植を通して,さらに強い絆で結ばれるようです。 そして,愛,希望,勇気,感謝といった感動を私たち医療チームにも与えていただいております。 それが,私たちの活動の源になっています。
愛知医科大学病院では移植患者の会(ドレミの会:「ド」ナー,「レ」シピエント,関係者「み」んな)があり,年2回の勉強会,グループトークとともに,毎月ドレミの広場を開催し,これから移植を受ける方の質問,相談を受けております。 実際に移植を受けた方,提供者の方からの話を聞いて,安心される方が多いようです。
私どもは, 「感動を分かち合う移植医療,チームの力でサポートします」のキャッチフレーズのもとに活動をしております。 腎移植に興味のある方は,生体腎移植,献腎移植の説明をいたしますので,ぜひ,ご家族の方と一緒に,お越しください。 どうぞ,よろしくお願いします。

主な対象疾患

慢性腎不全(保存期腎不全~末期腎不全まで)

  • 透析療法を施行中であり,腎移植を希望されている方 。
  • 慢性腎不全と診断され,近いうちに腎代償療法(透析療法,腎移植)が必要と言われている方 。
  • 慢性腎不全と診断され,近くはないけれどいずれ腎代償療法(透析療法,腎移植)が必要と言われている方 。
  • 身内に腎不全の方がおり,移植に興味のある方。
  • 腎移植とはどのようなものか,取りあえず話だけでも聞いてみたい方。

高度な専門医療

高度な医療

レシピエント(腎移植を受ける方)

わが国の腎臓移植手術症例数は,末期腎不全患者の増加とともに徐々に増加しており,2013年では1,586例(内献腎移植155例)が施行されております。同時に2000年以降,免疫抑制剤の発展・組織適合検査の発展・抗ウイルス薬の発展等により腎生着率(生体腎移植)において1年生着率97.2%,5年92.3%,10年生着率84.9%・15年生着率60.3%と非常に良好な結果が得られております。この確立された腎移植治療を当院でも確実に,そして安全に施行するべく取り組んでおります。

ドナー(腎臓を提供する方)

ドナーとなれる方は,心身ともに健康な方に限ります。逆に言えば血液型や血縁は関係しない段階まで移植医療は進歩しました。摘出手術も安全性を優先しており手術後1週間での退院・社会復帰を確立しております。

専門外来

腎移植外科

中央棟4階 48番にて,腎移植の相談~腎移植前のレシピエント・ドナーの診察/検査,腎移植後の定期的な受診を行います。初診時の受診方法は下記をご参照下さい。

曜日 月-水-木-金(火曜日以外)
診療時間 午前中
担当者 小林孝彰,石山宏平,安次嶺聡
初診から移植まで 初診から移植まで約2ヶ月必要です。
1)1時間程度,移植のお話をして,質問をお受けします。
2)移植を希望されましたら,外来に3回(3日)お越しいただき一次検査(血液,尿,放射線,内視鏡検査,他科診察など)を行います。
3)異常がなければ,2泊3日の検査を行います。
4)最終の移植前検査結果を説明し,移植意思について再度確認をします。
5)移植入院

移植を受ける方(レシピエント)は,4日前に入院,移植後2週で退院となります。(ABO血液型不適合移植は,2週前に入院,手術後1週で退院となります。)
初回受診方法
1)現在かかっている病院の主治医から紹介してもらう方法
腎移植外科への直接紹介の場合は,愛知医科大学病院地域医療連携室(電話0561-65-0221,FAX0561-65-0225)に「診療情報提供書(兼)受診依頼票」を用いて診察予約をしていただきます。
2)電話での問い合わせ方法
愛知医科大学(0561-62-3311)へ電話をして,レシピエント移植コーディネーターもしくは腎移植外科医師へ直接繋いでもらって下さい。
<受付時間:午前10時~午後4時>
3)FAXでの問い合わせ方法
腎移植外科直通FAX(050-3142-9631)へ貴方の連絡先と相談したい事項を書いて送信して下さい。
4)メールでの問い合わせ方法
愛知医科大学病院  腎移植外科  小林孝彰
takaaki.kobayashi@aichi-med-u.ac.jp

診療・治療実績

移植件数

2018年 20件
2019年 18件
2020年 20件
2021年 18件
2022年 29件

(2022年末  生体253件,献腎2件)

年齢

レシピエント平均年齢 52.9歳(14.5歳~73.8歳)
ドナー平均年齢 52.9歳(25.0歳~78.8歳)

(高齢者の移植が増えています)

ドナーの続柄(生体のみ)

夫婦 153件(60.5%)
71件(28.0%)
兄弟姉妹 21件(8.3%)
その他 8件(3.2%)

(夫婦間の移植が増えています)

ABO血液型(生体のみ)

一致/適合 157件(62.1%)
不適合 96件(37.9%)

(血液型が異なっても,成績は変わりません)

透析導入(生体のみ)

なし 137件(54.2%)
あり 116件(45.8%)

(最長  透析歴38年)

移植後成績(生体のみ)

生存率 1年 98.4%,5年 96.3%
生着率 1年 97.5%,5年 96.4%
移植後成績(患者生存率)2012/7-2020/12
移植後成績(移植腎生着率)2012/7-2020/12

今後の予定

月2-4例,年間30-40件の生体腎移植を予定しています。
私どもの診療科には,移植専門のコーディネーターが常勤し,他科(腎臓・リウマチ膠原病内科,精神神経科,こころのケアセンターなど)との連携も良好です。
移植を受ける患者さんだけでなく,ご家族の皆さんが幸せになれるように,治療選択し,最新の技術を駆使して,安心,安全,希望の医療をお届けします。
キャッチフレーズは,「感動を分かち合う移植医療,チームの力でサポートします」です。
また,2016年より献腎移植登録を開始しております。外来は,木曜日,金曜日午後になります。

愛知医大の特徴

  • 豊富な経験(安心、安全、質の高い、希望の移植医療を提供
  • チーム医療の充実
    レシピエント移植コーディネーター設置 (1名→1.5名)
    他の診療科、薬剤、検査、医療福祉相談部などと密な連携
    患者会(ドレミの会)もチームの一員
  • きめ細かな対応
    検査、手術、入院(短い待ち時間)、緊急も容易に対応
  • 車なら通院に便利  インターの近く、大きな駐車場
  • 地域医療連携推進(基幹病院として)
  • 個々の患者さんに最適の医療(個別化医療)の提供

患者会(ドレミの会)

移植患者さんが中心となり,「ドナー,レシピエント,みんな」の最初の文字をとって,ドレミの会を結成し,年2回の勉強会と,毎月第4水曜日にはドレミの広場を開催しています。

気軽に声をかけてください

問い合わせ先

移植のこと何でも(生体、献腎)
愛知医大 0561-62-3311 交換で呼び出してください
(月から金 9時〜17時)
渡邉レシピエント移植コーディネーター まで
移植経験者(ドナー、レシピエント)のお話し(ドレミの広場)
毎月第4水曜日14時から、愛知医大・立石プラザ3階(要予約)
ドレミの会 事務局 0574-65-7248 まで
メールでのお問い合わせ(全て)
takaaki.kobayashi@aichi-med-u.ac.jp
愛知医大 腎移植外科 小林孝彰

スタッフについて

スタッフ紹介

担当医 職名 勤務形態 専門分野
小林孝彰 教授 常勤 腎移植外科
石山宏平 准教授(特任) 常勤 腎移植外科
安次嶺聡 講師 常勤 腎移植外科
雫 真人 助教 常勤 腎移植外科
渡邉  恵 常勤 レシピエント移植コーディネーター
長屋さつき 常勤 レシピエント移植コーディネーター

スタッフ募集

腎移植外科では,腎移植医療を我々と一緒に行っていきたい方を募集しています。募集する人材については,下記の条件を満たしている方です。

  1. 腎移植医療に興味がある方
  2. 卒後3年目以降で外科(一般外科・泌尿器科を含む)を希望されている方
  3. 日本における今後の腎移植医療の発展を望む方
  4. 1~2年経験をしたいという方でも可能です
給与
仕事内容等について,詳細は下記のメールアドレスまでお問い合わせください。
担当
愛知医科大学 腎移植外科 石山宏平(イシヤマ コウヘイ)
ishiyama@aichi-med-u.ac.jp

博士課程大学院生募集

外科学講座(腎移植外科)では,腎疾患・移植免疫学寄附講座と連携し,社会人大学院生として,働きながら研究することもできます。
10名が卒業(6名が修了,3名が論文作成中),1名(1年生)が在籍しております。
内訳は外科4名,内科2名,小児科2名,泌尿器科1名,薬剤師1名,検査技師1名です。
現在,3名がアメリカ(ボストン)留学中です。

腎移植News Letter

慢性腎臓病の患者さんや透析患者さんに最新の腎移植情報を提供する事を目的とした小冊子を配布しております。過去のバックナンバーをご参照ください。

2012年 創刊号

2012年 創刊号

2012年 第2号

2012年 第2号

愛知医大・腎臓病公開講座

慢性腎臓病の患者さんや透析患者さんとそのご家族に対して,腎移植を中心とした腎臓病に対する情報提供と実際に腎移植を受けられた方や実際に腎臓を提供した方の生の声を届けるべく,定期的に公開講座を開催しております。是非ご参加ください。

キーワード

腎不全,腎移植,臓器移植,免疫抑制療法

医療連携について

腎移植医療

腎臓移植医療はチーム医療です。当科では院内だけでも,レシピエント移植コーディネーター・腎臓内科医師・精神科医師・薬剤師・看護師・ソーシャルワーカー・臨床工学技士・臨床心理士・栄養管理士etc,多数・多方面の協力のもと成り立っています。
他院との医療連携としては,中日本腎臓移植グループを中心に日本の移植医療への貢献に努めていきます。

関連リンク

連絡先

腎移植外科

TEL
外線:0561-62-3311(代表)
FAX
050-3142-9631(直通)
Mail
aichiidai.tx@gmail.com
(直通はFaxとmailのみです)