感染制御部

感染制御部は、2007年8月に初代教授の三鴨廣繁先生により設置されました。
感染制御部では、医師、看護師、薬剤師、臨床検査技師など多職種で構成されるInfection Control Team(ICT)およびAntimicrobial Stewardship Team(AST)が中心となり、病院全体の感染対策および抗菌薬適正使用を推進しています。
標準予防策をはじめとする基本的な感染対策の徹底に加え、MRSA、ESBL産生菌、CREなどの薬剤耐性菌や、COVID-19をはじめとする伝播リスクの高い感染症を早期に把握し、適切な感染対策を講じることで院内伝播の防止に努めています。また、薬剤耐性菌や医療関連感染の発生動向を継続的に監視・分析し、必要に応じて各診療部門へフィードバックすることで、感染症の発生予防と患者さんの安全確保、さらには病院全体の診療機能への影響を最小限にすることを目指しています。
また、感染症および感染対策に関する人材育成も感染制御部の重要な役割です。医学生に対する卒前教育に加え、研修医、看護師、薬剤師、臨床検査技師、診療看護師をはじめとする医療従事者への卒後教育・研修を行い、感染症診療および感染対策に関する知識と実践能力の向上に取り組んでいます。

ごあいさつ

感染症は、あらゆる診療領域において起こりうる疾患です。感染症診療では、感染症を適切に「診断」し「治療」することが重要である一方、感染制御では、医療関連感染の発生を「予防」し、感染症の院内伝播を防ぐことが重要な役割となります。当院では、感染症診療と感染制御を「車の両輪」と捉え、両者が緊密に連携することで、患者さんに安全で質の高い医療を提供することを目指しています。
感染制御部では、医師、看護師、薬剤師、臨床検査技師、事務職員などの多職種が、それぞれの専門性を活かしながら協働しています。標準予防策をはじめとする基本的な感染対策の推進、薬剤耐性菌や医療関連感染のサーベイランス、抗菌薬適正使用の推進、アウトブレイクへの対応、職員の職業感染対策など、病院全体の感染対策に幅広く取り組んでいます。
感染制御においては、科学的根拠と院内のデータに基づいて感染症の発生状況や感染対策上の課題を把握し、その結果を現場へ還元して継続的な改善につなげることが重要です。当院では、「科学的根拠に基づく感染対策」「情報の共有と可視化」「多職種によるチーム医療」「地域医療機関との連携」を重要な柱として、医療関連感染の発生を可能な限り低減することに努めています。
また、感染対策は一つの医療機関だけで完結するものではありません。地域の医療機関と感染症や薬剤耐性菌の発生状況、感染対策に関する情報を共有するとともに、感染対策向上加算に基づく地域連携、合同カンファレンス、相互評価、研修・教育などを通じて、地域全体の感染対策の質の向上に取り組んでいます。
今後も、感染症科、感染検査室、感染管理室をはじめとする院内各部門が緊密に連携し、科学的根拠に基づいた感染対策と抗菌薬適正使用を推進するとともに、教育・研究・地域連携を通じて、患者さんと医療従事者の双方にとって安全で信頼される医療環境の実現を目指してまいります。

院内感染対策のための指針

1.医療関連感染の定義
医療関連感染とは、医療の提供に関連して患者に発生する感染症であり、入院中に発症した感染症のみならず、医療行為や医療環境に関連して退院後に発症した感染症も含む。また、医療従事者が業務に関連して罹患する感染症についても、感染対策の対象とする。


2.院内感染対策に関する基本的な考え方
(1)目的
愛知医科大学病院における感染対策は、患者、職員をはじめ、病院を利用するすべての人を対象とし、医療関連感染の発生を可能な限り予防するとともに、感染症が発生した場合には、その拡大を防止し、患者および医療従事者の安全を確保することを目的とする。

(2)組織・体制
医療関連感染の発生および感染拡大のリスクを低減するため、病院全体で組織的に感染対策に取り組む。
感染制御部を中心として、感染症および薬剤耐性菌等に関する情報の収集・分析、サーベイランス、感染対策の立案・実施・評価、各部署へのフィードバックならびに職員への教育・研修を行う。
また、アウトブレイクまたはその兆候を早期に把握し、発生時には速やかに疫学的調査および必要な感染対策を実施して、感染拡大の防止および早期終息を図る。

(3)感染対策の基本
当院の感染対策は、すべての患者に対して標準予防策を適用することを基本とし、感染症の病原体および感染経路に応じて、接触予防策、飛沫予防策、空気予防策などの感染経路別予防策を追加して実施する。

(4)地域・社会への貢献
大学病院として、地域の医療機関、関係行政機関等との連携を推進し、感染症および薬剤耐性菌に関する情報共有、感染対策に関する相談・支援、教育・研修等を通じて、地域全体の感染対策の質の向上に貢献する。


3.院内感染対策のための委員会および感染対策関連組織に関する基本的事項
(1)感染予防対策委員会
感染予防対策委員会は、当院における感染対策に関する重要事項を審議し、方針を決定する機関とする。
委員会は、病院長、院内感染対策担当副院長、感染制御部長、感染制御部技師長のほか、診療部門、臨床検査部門、洗浄・滅菌消毒部門、栄養部門、薬剤部門、看護部門、事務部門等を代表する職員、ICTの構成員およびその他病院長が必要と認めた者により構成する。
委員会は原則として月1回開催し、必要に応じて臨時に開催する。

(2)感染制御部
感染制御部は、当院における感染対策および感染症診断を専門的に支援する部門である。
感染制御部は、感染対策に関する業務を担う感染管理室と、微生物検査および病原体遺伝子検査等に関する業務を担う感染検査室で構成する。
感染制御部は、ICTおよびASTを中心として院内各部門と連携し、医療関連感染対策、サーベイランス、薬剤耐性菌対策、抗菌薬適正使用、アウトブレイク対応、職業感染対策、教育・研修等を推進する。

(3)感染制御チーム(Infection Control Team:ICT)
ICTは、感染制御部内に設置され、医療関連感染の発生予防および感染拡大防止に関する実務を担う。
ICTは、病院長から感染対策に関する権限を委譲され、院内各部署に対して組織横断的に感染対策を推進する。
ICTは、感染対策に関する十分な知識と経験を有する医師、看護師、薬剤師、臨床検査技師および感染制御部長が必要と認めた者により構成される。
ICTのリーダーは感染制御部長とし、院内感染管理者として感染対策の企画、立案、実施および評価を行う。
ICTは、院内ラウンド、医療関連感染および薬剤耐性菌等のサーベイランス、感染対策の評価・改善、アウトブレイク対応、職員教育等を行う。

(4)抗菌薬適正使用支援チーム(Antimicrobial Stewardship Team:AST)
ASTは、感染制御部内に設置され、抗菌薬をはじめとする抗微生物薬の適正使用を支援する。
ASTは、感染症診療および抗菌薬適正使用に関する十分な知識と経験を有する医師、看護師、薬剤師、臨床検査技師および感染制御部長が必要と認めた者により構成する。
ASTのリーダーは感染制御部長とする。
ASTは、抗微生物薬の使用状況を把握し、必要に応じて感染症の診断、抗微生物薬の選択、投与量、投与期間等について支援を行う。また、抗菌薬使用量や薬剤耐性菌の動向等を評価し、抗菌薬適正使用を推進することで、治療成績の向上および薬剤耐性(AMR)の抑制を図る。

(5)インフェクションコントロールマネージャー(Infection Control Manager:ICM)
ICMは、院内各部署における感染対策を推進する担当者とする。
ICMは、各診療科の医師、各中央診療部門の医師および医療職員、医療安全管理室、卒後臨床研修センター、薬剤部の職員ならびに感染予防対策委員長が必要と認めた者等により構成する。
ICMは、各部署における感染対策が円滑に実施されるよう活動するとともに、ICTとの連絡・調整を行う。

(6)リンクナース
リンクナースは、各病棟および外来部門における感染対策を推進する担当者とする。
リンクナースは、原則として各病棟・外来部門の看護師各1名で構成する。
原則として月1回リンクナース会を開催し、各部署における感染対策の実践・改善を推進するとともに、ICTとの連絡・調整を行う。


4.院内感染対策のための職員研修に関する基本方針
感染対策に関する基本的な考え方および具体的な対策について、院内で業務に従事するすべての職員に周知し、感染対策に関する知識、意識および実践能力の向上を図る。
職員の感染対策に関する知識および技術の向上を目的として、院内感染対策に関する研修を年2回以上実施する。
研修の実施内容および参加状況を記録し、適切に保存する。
また、新興・再興感染症の発生や院内における感染対策上の重要な課題が生じた場合には、必要に応じて臨時の研修、情報提供等を行う。


5.感染症および医療関連感染の発生状況の把握・報告に関する基本方針
職員は、院内で医療関連感染の発生またはその疑いを認めた場合、あるいは他の患者や職員への伝播のおそれがある感染症を認めた場合には、院内の定められた手順に従って速やかに感染制御部またはICTへ報告する。
感染制御部は、微生物検査結果、薬剤耐性菌の検出状況、医療関連感染の発生状況等について継続的にサーベイランスを実施し、その結果を分析するとともに、必要に応じて院内各部署へフィードバックする。
特に、薬剤耐性菌の検出状況や発生動向を継続的に監視するとともに、中心ライン関連血流感染(CRBSI)、カテーテル関連尿路感染(CAUTI)、人工呼吸器関連肺炎(VAP)、手術部位感染(SSI)等の医療関連感染についてサーベイランスを実施し、感染対策の評価・改善に活用する。
感染症法その他の関係法令に基づき届出が必要な感染症を診断した場合には、法令に従って所管の保健所等へ速やかに届け出る。


6.院内感染発生時の対応に関する基本方針
ICTは、職員、感染検査室その他の院内部門からの報告およびサーベイランス情報等を基に、医療関連感染の発生状況を迅速に把握する。
アウトブレイクまたはその疑いを認めた場合には、感染制御部を中心として速やかに疫学的調査を開始し、必要に応じて微生物学的検査、対象患者および接触者のスクリーニング、感染経路の評価、隔離・感染経路別予防策、環境対策等を実施し、感染拡大の防止および早期終息を図る。
重大な事例については、病院長および感染予防対策委員会等の関係部署へ速やかに報告する。
院内のみでの対応が困難と判断される場合には、必要に応じて地域の連携医療機関、外部の感染症・感染制御の専門家、保健所その他の関係行政機関等と連携し、感染拡大防止のために必要な対策を講じる。


7.患者等による本指針の閲覧に関する基本方針
本指針は、愛知医科大学病院ホームページに掲載し、患者、家族その他の希望者が自由に閲覧できるものとする。


8.その他、院内感染対策を推進するために必要な基本方針
本指針は、関係法令、診療報酬上の施設基準、国内外の感染対策に関する指針、院内の感染症発生状況等を踏まえて定期的に見直し、感染予防対策委員会の審議を経て改正する。
院内感染対策マニュアルについても必要に応じて随時見直しを行い、最新の科学的知見および院内の状況を反映した内容を維持する。
また、感染対策の実施状況およびその効果を定期的に評価し、PDCAサイクルに基づいて継続的な改善を図る。


業務案内

感染制御部では、患者さんおよび医療従事者を医療関連感染から守り、安全で質の高い医療を提供するため、院内各部門と連携しながら、以下の業務を行っています。

(1)医療関連感染の予防・感染対策
標準予防策、感染経路別予防策、手指衛生、個人防護具(PPE)の適正使用、環境整備など、院内における基本的な感染対策を推進しています。また、ICT(Infection Control Team)による院内ラウンドを実施し、各部署の感染対策の実施状況を確認するとともに、必要な改善策を提案しています。


(2)サーベイランスと感染対策の改善
薬剤耐性菌の検出状況や発生動向を継続的に監視するとともに、中心ライン関連血流感染(CRBSI)、カテーテル関連尿路感染(CAUTI)、人工呼吸器関連肺炎(VAP)、手術部位感染(SSI)などの医療関連感染についてサーベイランスを実施しています。得られたデータを分析して各診療部門へフィードバックし、感染対策の評価と継続的な改善につなげています。


(3)薬剤耐性菌対策・アウトブレイク対応
MRSA、ESBL産生菌、CREをはじめとする薬剤耐性菌や、院内伝播の可能性がある感染症を早期に把握し、感染拡大防止に取り組んでいます。アウトブレイクが疑われる場合には、疫学的調査や微生物学的検査を行い、感染経路を評価するとともに、スクリーニング、接触者への対応、環境対策など、必要な感染拡大防止策を迅速に実施します。


(4)抗菌薬適正使用支援(Antimicrobial Stewardship)
Antimicrobial Stewardship Team(AST)を中心に、抗菌薬・抗真菌薬・抗ウイルス薬などの適正使用を推進しています。広域抗菌薬や特定抗菌薬の使用状況を把握し、必要に応じて感染症の診断、抗微生物薬の選択、投与量、投与期間などについて主治医への支援を行い、治療成績の向上と薬剤耐性(AMR)の抑制を目指しています。


(5)感染症の迅速診断・微生物検査
感染検査室と連携し、培養検査、薬剤感受性検査、質量分析装置(MALDI-TOF MS)による微生物の迅速同定、PCR法をはじめとする各種遺伝子検査などを活用して、感染症の迅速かつ正確な診断を支援しています。検査結果を感染症診療だけでなく、薬剤耐性菌の監視や院内感染対策にも活用しています。


(6)職業感染対策・ワクチン接種
針刺し・切創、血液・体液曝露などの職業感染への対応および予防に取り組んでいます。また、医療従事者に必要なB型肝炎、麻疹、風疹、水痘、流行性耳下腺炎などの免疫状況を評価し、必要に応じてワクチン接種を推進しています。


(7)教育・研修
医学生への卒前教育をはじめ、研修医、看護師、薬剤師、臨床検査技師、診療看護師などの医療従事者を対象として、感染症診療、標準予防策、手指衛生、個人防護具(PPE)の使用方法、抗菌薬適正使用などに関する教育・研修を行っています。


(8)地域医療機関との感染対策連携
感染対策向上加算に基づく地域連携を中心として、連携医療機関との合同カンファレンス、相互評価、感染対策に関する相談・支援、研修・教育などを行っています。平時から地域の医療機関と情報を共有し、薬剤耐性菌や新興・再興感染症、アウトブレイクなどの発生時にも地域全体で対応できる感染対策体制の構築を目指しています。


キーワード

感染対策、標準予防策、職業感染対策、地域医療連携

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