心不全包括管理センター

心不全は,一度発症すると完治が難しく,生涯にわたる継続的な管理が必要な病気です。だからこそ,急性期治療から慢性期の維持管理まで,患者さん一人ひとりに寄り添った「切れ目のないケア」が最も重要となります。

愛知医科大学病院 循環器内科では,この包括的な治療体制を実現するため,2024年5月に心不全包括管理センター「かわせみハート」を設立しました。

センター名「かわせみハート」は,当院のロゴカラーに通じるかわせみの美しい羽の色とその力強く前向きな飛翔姿を,心不全と闘いより良い生活を取り戻そうとする患者さんの姿に重ねて名付けられました。地域の医療機関との密な連携体制のもと,大学病院ならではの専門性と先進性を駆使し患者さんの未来を力強くサポートします。

特に,難治性の弁膜症や特殊心筋疾患(心アミロイドーシス,肥大型心筋症など)といった高度な専門知識が求められる疾患に対し,最先端の診断と治療を提供しています。

「かわせみハート」という名称は,かわせみの羽の色が愛知医科大学および大学病院のロゴと似ていること,そしてその力強い飛翔姿が心不全と闘う姿勢を象徴しているためです。また,愛知医科大学循環器内科の同門会「かわせみ会」にも由来しています。

診療部門からのごあいさつ

部長 天野哲也

心臓病と共に生きる,その人生を支える「二人主治医制」

心不全は,進行性の疾患であり,患者さんの病状やライフステージによって必要なサポートが多岐にわたります。私たちは,心不全の予防から急性期治療,そして回復期・慢性期の生活サポートまで,地域全体で患者さんを支える体制が不可欠だと考えています。
心不全包括管理センター「かわせみハート」の設立には,二つの大きな使命があります。

1.心不全発症予防への早期介入

ステージA/B(リスク段階)での精密検査と生活指導により,心不全の新規発症そのものを防ぎます。

2.再入院の徹底的な予防

ステージC/D(発症後)に進行した患者さんに対し,心臓リハビリテーションを含む集中的な管理を行い心不全の再増悪による入院を最小限に抑えます。

当センターでは,地域の「かかりつけ医」の先生方と,当センターの「循環器専門医」が連携して診療にあたる『二人主治医制』を推進しています。日常の細やかな健康管理と,大学病院での高度な専門治療を両立させ,患者さんが生涯にわたり安心し,質の高い生活(QOL)を送れるよう,地域全体で継続的にサポートいたします。

このような方は,ぜひ当センターの受診をご検討ください

  • 健康診断で心臓の異常(心雑音,心電図異常,心拡大など)を指摘された方。
  • 高血圧・糖尿病・心筋梗塞の既往など,心不全のリスクがあり,専門的な管理を希望される方。
  • 心不全と診断され,日々の生活(食事・運動・服薬など)に大きな不安を感じている方。
  • 心不全による入退院を繰り返し,「もう入院したくない」と強く願っている方。

主な対象疾患

当センターでは,心不全に深く関わる以下の疾患に対し,医学的エビデンスに基づいた専門的な診断と治療を提供します。

  • 心不全:心臓のポンプ機能が低下し,全身に必要な血液を送り出せなくなる状態。
  • 虚血性心疾患:急性心筋梗塞,陳旧性心筋梗塞,狭心症など。
  • 弁膜症大動脈弁狭窄症僧帽弁閉鎖不全症など,心臓の弁の異常。
  • 不整脈:心房細動,房室ブロック,心室頻拍など,脈の乱れ。
  • 心筋症:拡張型心筋症,肥大型心筋症,特殊心筋疾患(心アミロイドーシスなど)を含む,心臓の筋肉自体の病気。
  • 成人期の先天性心疾患:心房中隔欠損症など。

業務案内

部門 目的と主な治療内容 期待できる効果
A 予防部門 高血圧・糖尿病・心房細動など,心不全発症リスクの高い患者さんに対し生活指導と薬物治療を中心に疾病を管理。 心不全の新規発症を強力に抑制し,健康寿命を延ばします。
B 急性期部門 症状が現れた急性心不全(ステージC)や,侵襲的治療が必要な心不全前段階(ステージB)の患者さんを専門的に管理治療。 心不全の再増悪を食い止め,再入院のリスクを低減します。
C 回復期・慢性期部門 心臓リハビリテーションを核として継続的な維持管理を実施。個別化された運動療法・服薬・栄養指導を提供。 自宅でのQOL(生活の質)を大幅に向上させ,再発を予防します。

※ 当院でのリハビリテーションが不十分な場合は,分院の愛知医科大学メディカルセンターとも連携し,継続的なサポートを行います。

心不全を早期診断治療するために

「手遅れ」になる前に,専門的な検査と介入を

心不全は,発症すると徐々に進行し,入退院を繰り返すことで治療が難しい状態(治療抵抗性心不全:ステージD)へと移行します(図1参照)。良い経過を得るためには,症状が出る前の「ステージA/B(心不全リスク・前心不全)」段階での早期介入が極めて重要です。

当センターでは,かかりつけ医の先生方からのご相談や,専用の『心不全早期診断シート』によるご紹介を受け,迅速かつ精密な検査体制を整えています。


  • 早期発見の鍵: まずは心エコー検査で心臓の構造的異常やポンプ機能を確認し,血液検査(BNP・NT-proBNP)で心不全の有無やリスクを評価します(図2参照)。
  • 精密検査: 必要に応じて,CT・MRI・シンチグラムなどの高度な画像診断を行い,心機能低下の根本原因を徹底的に特定し,早期治療介入につなげます。

図1

図2

心不全を発症した場合には

再入院を減らす包括的管理

心不全の増悪により,約25%の患者さんが1年以内に再入院すると言われています。この再入院を予防し,心臓病と共に歩む人生をより豊かにすることが私たちの最大の使命です。



  1. 原因疾患の特定と治療: 心不全の増悪を断ち切るため,まずは心不全を引き起こしている根本的な原因(虚血性心疾患,不整脈,弁膜症,高血圧,心筋症など)を特定し,カテーテル治療,外科手術,デバイス治療(ペースメーカー,CRTなど),薬物治療を組み合わせた最適な治療を迅速に実施します。
  2. 継続的な心臓リハビリテーション(心リハ): 急性期治療が終了した後も,薬物治療に加え運動療法である心臓リハビリテーションを継続することが,心不全の増悪予防に極めて有効です。当院は,入院中から退院後の外来まで,一貫した心リハに注力しています。 2025年1月に開設した≪プロリハ≫リハビリテーションでは,多くの患者さんが心リハを利用され,自宅退院率の向上や心不全再入院率の低下という確かな成果を上げています。


  3. 再入院リスクが高い退院後6ヶ月間は当センターで集中的な管理を行い,病状安定後はかかりつけ医の先生方との連携を強化しながら,外来心臓リハビリテーションを継続。地域全体の心不全診療レベル向上に貢献します。


    図3

高度な医療

多職種連携による生活の質(QOL)を最優先したチーム医療

心不全包括管理センターは,患者さんのニーズに応じた専門医療を提供します。



  • 先進的な診断と治療の統合:心不全の原因と状態を正確に把握し,薬物療法・デバイス治療・カテーテル治療・外科手術を組み合わせた患者さん個々の生活に最適な治療計画をご提案します。
  • 多職種連携チームによるケア:医師・心不全認定看護師・理学療法士・管理栄養士・薬剤師など,専門資格を持つ多職種が密に連携するチーム医療を実践し単に命を救うだけでなく,患者さんの生活の質(QOL)向上と再入院リスクの低減を最優先した指導を心がけています。


心不全教育入院(3泊4日プログラム)

心不全の予防と増悪を防ぐには,患者さん自身の知識と実践が不可欠です。当院では,短期間で集中的に心不全の知識を習得する3泊4日の集中プログラムをご用意しています。



<教育入院で得られる3つの大きなメリット>

  1. 生活習慣の見直し: 栄養士による個別栄養指導や,心臓に優しい運動療法の習得。
  2. 確実な服薬指導: 薬剤師が,退院後の複雑な服薬スケジュールを分かりやすく指導。
  3. 再入院リスクの低減: 退院後の安心した生活をサポートし,心不全の増悪と再入院を大幅に減らします。

図4

心臓病をお持ちの全ての患者さんに,ぜひご利用をお勧めいたします。

心臓弁膜症について

その息切れ,治療できる心臓の病気かもしれません

「階段を上ると息が切れる」「最近,疲れやすくなった」こうした症状を,「年のせい」と諦めていませんか?もちろん加齢による体力の低下もありますが,もしかするとそれは,心臓の”扉”が悪くなる病気,「心臓弁膜症」のサインかもしれません。

心臓弁膜症は進行すると心不全に至りますが,近年,ご高齢の方でも負担の少ないカテーテル治療が登場し,早期に発見・治療すれば再び元気に生活を送ることが可能です。

当センターでは,専門家チーム(ハートチーム)が一丸となり,最新の診断・治療に取り組んでいます。



  1. 心臓弁膜症とは?
    心臓は全身に血液を送るポンプです。心臓には4つの部屋があり,血液が一方通行で流れるよう,出口に「弁(扉)」がついています。心臓弁膜症は,この弁が開きにくくなったり(狭窄),うまく閉じず血液が逆流したり(閉鎖不全)する病気です。

    弁の働きが悪くなると心臓のポンプ効率が落ち,心臓に大きな負担がかかり続けます。この状態が続くと,心臓が疲れ果て(心機能の低下),最終的に心不全という命に関わる状態に陥ります。




  2. こんな症状は「年のせい」? 危険なサインを見逃さないで


    【心臓の負担が限界に近づくと現れる代表的な症状】





    ご高齢の方は,無意識のうちに活動量(外出,家事,運動など)を減らしてしまいがちです。そのため,「症状はない」と思っていても,病気が深刻に進行しているケースが少なくありません。



    症状が出た時点で「重症」です。 放置すると命に関わるため,すぐに受診してください。また,症状がなくても検査結果(心機能の低下など)によっては,早期の治療をお勧めすることがあります。




  3. 診断:カギは「心雑音・心エコー検査」

    弁膜症の第一の手がかりは,健康診断などで指摘される「心雑音」です。心雑音を指摘された場合は,必ず循環器専門医を受診してください。
    診断は,体に負担が少ない「心エコー図検査(心臓超音波検査)」で行います。この検査で,弁の傷み具合や心臓のポンプ機能を痛みなく正確に評価できます。
    弁膜症は進行する病気のため,すでに診断されている方も,半年〜数年に一度の定期的な心エコー検査が不可欠です。


  4. 治療法:お薬では治りません

    残念ながら,傷んだ弁を薬で元に戻す(治す)ことはできません。 薬は,心臓の負担を一時的に和らげたり,むくみを取ったりする「対症療法」に過ぎません。
    病気が「重症」になり,症状や心機能の低下が現れた場合は,根本的な治療として,悪い弁を新しい人工弁に取り替える「手術治療」が必要になります。


  5. 愛知医科大学病院の「ハートチーム」

    当センターでは,循環器内科医,心臓血管外科医など各分野の専門家が集まった「ハートチーム」を編成しています。患者さん一人ひとりの年齢,体力,持病などを総合的に判断し,最適な治療法をチームでご提案します。


  6. 大動脈弁狭窄症の治療

    大動脈弁狭窄症とは,主に加齢や動脈硬化によってこの大動脈弁が硬くなり,開きにくくなる(狭くなる)病気です。治療法は,主に①開胸手術(SAVR)と②カテーテル治療(TAVI)の2つがあります。


    • 外科的人工弁置換術(SAVR):胸骨を切開し,心臓を一時的に止め,人工弁に付け替える従来から確立された治療法です。長期耐久性に優れ,75歳未満の方や,他の心臓手術も同時に必要な方に適しています。
    • 経カテーテル大動脈弁留置術(TAVI):胸を切らず,心臓も止めずに,足の付け根の血管からカテーテルを挿入し,人工弁を留置する体への負担が非常に少ない最新の治療法です。入院期間が短く,早期の社会復帰が期待できます。80歳以上の方や,持病などで手術リスクが高い方の標準治療となりつつあります。
  7. 僧帽弁閉鎖不全症

    僧帽弁閉鎖不全症は,僧帽弁がうまく閉じず,血液が逆流してしまう病気です 。この病気には,以下の2つのタイプがあります 。


    • 外科的手術: 胸を開いて心臓を止め,弁を修復する「弁形成術」(器質性に優先)か,人工弁に替える「弁置換術」を行います。長期実績があり確実ですが,体への負担は大きい治療です。

    • カテーテル治療(経皮的僧帽弁接合不全修復術):胸を切らず,心臓も止めずに,足の付け根からカテーテルを挿入し,クリップで弁をつまんで逆流を減らします。

      【適応となる方】
      ①ご高齢や持病(肺・肝疾患など)があり,外科手術が難しい方
      ②心不全の治療を十分に行っても,機能性の逆流と症状が続く方


  8. 地域の皆様へ
    「年のせい」と諦めていた息切れ,疲れやすさ,あるいは健康診断で「心雑音」を指摘された方は,心臓弁膜症が隠れている可能性があります。ぜひ一度,当センターにご相談ください。

  9. 医療機関の先生方へ
    心雑音や心エコー検査で心臓弁膜症が疑われる患者さんがいらっしゃいましたら,お気軽に当センターへご紹介ください。ハートチーム一同で,最適な治療方針を検討・提供いたします。

肥大型心筋症について

肥大型心筋症について

肥大型心筋症(Hypertrophic Cardiomyopathy: HCM)は,高血圧など他の病気がないにもかかわらず,心臓の筋肉(心筋)が部分的に厚くなる病気です。日本では国の指定難病とされており,およそ500人に1人程度の有病率と推定されていますが,診断されていない方も多くいると考えられています。

心臓の筋肉が厚くなると,心臓の部屋(左心室)が硬くなって広がりにくくなったり,血液を全身に送り出す出口が狭くなったりすることがあります。これにより,心臓のポンプ機能に異常が生じ,心不全や不整脈の原因となります。



原因

肥大型心筋症の約半数は遺伝的な要因が関わっているとされます。心臓の筋肉を動かすタンパク質の設計図である遺伝子に異常があると,筋肉が過剰に収縮し,心筋が厚くなると考えられています。



症状

症状がないまま生活している方も少なくありません。病気の進行やダメージの蓄積によって,以下のような症状が現れることがあります。


肥大型心筋症は以下の重大な合併症を伴うことがあります。

  • 心不全
  • 不整脈(心房細動):脳梗塞の原因となる血栓ができやすくなります。
  • 突然死(心室細動):頻度は高くないものの,適切な予防診断と治療が重要です。


肥大型心筋症のタイプ

肥大型心筋症は,心筋が厚くなる場所や状態によって以下のタイプに分類され,治療方針が異なります。

  1. 閉塞性肥大型心筋症 (HOCM):心臓の出口が狭くなるタイプ。運動などで狭くなる場合(誘発性)もあります。
  2. 非閉塞性肥大型心筋症 (non-HOCM):筋肉は厚いが,血液の出口は狭くならないタイプです。
  3. 心尖部肥大型心筋症:心臓の先端部分の筋肉が厚くなるタイプです。


診断と検査

重症度の評価,治療方針の決定のために,以下のような検査を行います。

  • 心エコー(心臓超音波)検査
    心臓の形・筋肉の厚さ・動き・血液の流れ・出口が狭くなっていないか(閉塞の有無)などを詳しく調べます。
  • 精密検査
    • 心臓MRI:筋肉の厚さ,線維化などの状態を詳細に評価します。
    • 心臓CT:心筋の構造や,冠動脈の状態を調べます。
    • 心臓カテーテル検査:心臓内部の圧力や,冠動脈の状態を評価します。
    • 心筋生検:筋肉の組織をごく少量採取し,顕微鏡で詳しく調べます。
    • 遺伝子検査:血液検査で,原因となる遺伝子の異常がないかを調べます。


治療

早期に診断し,適切な治療を受けることで,症状の防止や改善が期待できます。治療法は,病気のタイプ,症状,合併症の有無などによって異なります。

  1. 薬物治療
    • 症状を和らげる薬: 息切れや動悸などの症状を緩和するため,心臓の負担を減らす「β(ベータ)遮断薬」や「カルシウム拮抗薬」などを第一選択薬として用います。
    • 心筋ミオシン阻害薬(マバカムテン):心臓の筋肉が過剰に収縮する原因に直接作用する新しいタイプの治療薬です。従来の薬で改善しなかった閉塞性肥大型心筋症の患者さんにとって,新たな選択肢となります(2025年の心不全診療ガイドラインでも推奨)。
  2. 非薬物治療(カテーテル治療・手術・デバイス)
    薬物治療で症状が十分に改善しない場合や,危険な不整脈のリスクが高い場合に検討されます。
    中隔縮小療法(HOCMの場合)
    • 経皮的中隔心筋焼灼術(PTSMA):カテーテルでアルコールを注入し,厚くなった心筋を意図的に薄くする治療です。
    • 外科的中隔心筋切除術(Morrow手術):外科手術で,厚くなった心筋を直接切り取り,血液の通り道を広げる治療です。

トランスサイレチン型心アミロイドーシスについて

トランスサイレチン型心アミロイドーシス(ATTR-CM)は,心不全の原因となる国の指定難病(指定難病28)の一つです 。近年,病気の進行を抑える薬物治療が進歩したことにより,早期発見・治療が予後を大きく改善させることが期待されています 。

  1. アミロイドーシスとは?
    アミロイドーシスとは,体内のタンパク質が異常な線維状の物質(アミロイド)に変化し,これが様々な臓器に沈着することで,その臓器の機能を低下させる病気です。


  2. トランスサイレチン型心アミロイドーシス(ATTR-CM)とは?
    ATTR-CMは,本来はビタミンAなどを運ぶトランスサイレチン(TTR)というタンパク質が異常化し,アミロイド線維となって主に心臓の筋肉に沈着することで機能が低下する病気です。このATTR-CMは,TTRが不安定になる原因によって,大きく2つのタイプに分けられます。

    • 野生型:主に加齢によってTTRが不安定になるタイプです。60歳以上の高齢男性に多いとされます 。
    • 遺伝性:TTRの遺伝子変異が原因で,TTRが不安定になりやすいタイプです。比較的若い年齢でも発症し,心臓だけでなく神経などにも症状が出やすいことがあります 。


  3. どのような症状がありますか?
    心臓の症状と病態: 心臓にアミロイドが溜まると,心臓の筋肉が硬く,厚くなるため心臓がうまく広がれなくなり,ポンプ機能が低下して心不全・不整脈を発症します。


    心臓以外の特徴的な症状(早期発見の重要な手がかり): ATTR-CMの診断において重要な点は,心臓の症状が出る以前に,心臓以外の症状が出ることがある点です 。以下の整形外科領域の病気は,ATTR-CMの「予備軍」である可能性が知られています 。
    • 手根管症候群:両手に見られることが多く,手首の神経の通り道にアミロイドが溜まり,しびれや痛みが起こります 。
    • 脊柱管狭窄症:背骨の神経の通り道にアミロイドが溜まり,足腰のしびれや痛みが起こります 。


      主な心臓の症状(心臓の負担が限界に近づくと現れる代表的な症状)




  4. どのように診断しますか?
    ATTR-CMの診断は,複数の検査結果を組み合わせて行います 。


    ステップ1:心アミロイドーシスを疑うきっかけ
    以下のサインは,心アミロイドーシスを疑う重要なきっかけです 。
    • 原因不明の心不全,または心臓の壁が厚い(心肥大)
    • 手根管症候群・脊柱管狭窄症の既往歴がある
    • 高齢者の心不全
    • 心電図の異常
    • 血液検査でBNPが高い

    ステップ2:心エコー(超音波)検査で心臓の状態を詳しく調べます
    • 心臓の壁が厚い(心室中隔壁厚 ≧12mm)
    • 心臓が硬く,広がりにくい(拡張障害)
    • 特徴的な画像所見(Apical sparingなど)

    ステップ3:精密検査(タイプの特定)
    心アミロイドーシスが疑われたら,診断のために2つの重要な検査を同時に行います 。
    • ピロリン酸シンチグラフィ:TTRアミロイドが心臓にたまっているかを画像で確認できる特殊な検査です 。
    • 血液・尿検査(M蛋白の確認):別のタイプ(ALアミロイドーシス)ではないことを確認するために必須の検査です 。

    ステップ4:診断の確定
    • ATTR-CM:ピロリン酸シンチグラフィ陽性 + M蛋白陰性
    • ALアミロイドーシス:ピロリン酸シンチグラフィ陰性 + M蛋白陽性
    • 最終確認:両方陽性など判断が難しい場合は,心筋生検(心臓の筋肉を少量採取する検査)で最終確認します 。

    ステップ5:ATTR-CMのタイプの決定
    ATTR-CMと診断されたら遺伝学的検査を行い,「野生型」か「遺伝性」かを確定させます (治療方針やご家族への影響(遺伝カウンセリング)などを検討するために重要です )。

  5. どのような治療法がありますか?
    1. アミロイドーシスそのものに対する治療(根本治療)
      • トランスサイレチン四量体安定化薬(飲み薬):TTRがバラバラになるのを防ぎ,安定させることで,アミロイドの発生を抑えます。
      • 遺伝子治療薬(TTRサイレンサー)(注射薬): 肝臓に対し,TTRタンパク質そのものを作らせないようにする新しい作用の治療薬です。
    2. 心臓の症状に対する治療(対症療法)
      心不全や不整脈によって起こる症状を和らげる治療です。


  6. 利用できる医療制度・社会制度について
    トランスサイレチン型アミロイドーシスは,「全身性アミロイドーシス」として国の指定難病に定められています。重症度などの要件を満たすことで,様々な公的支援を受けることができます。
    【利用可能な主な制度】
    • 難病医療費助成制度: 重症度などの要件を満たした場合,医療費の助成が受けられます。
    • 高額療養費制度: 医療費が高額になった場合の自己負担を軽減します。
    • 介護保険サービス
    • 身体障害者手帳
    これらの制度の利用については,当院の医療ソーシャルワーカーが患者さんやご家族の状況に合わせてサポートいたします。お気軽にご相談ください。

受診について

心不全包括管理センターへの受診は,かかりつけ医を通じての予約が必要です。必要な検査(心エコー,血液検査など)は可能な限り来院当日に行います。かかりつけ医がいない場合や,紹介状がない場合の受診方法もございますので,詳しくは当院の地域医療連携室までお問い合わせください。

  1. かかりつけ医より愛知医科大学病院・地域医療連携室(TEL:0561-65-0221 FAX:0561-65-0225)を通してご予約ください。「心不全早期診断シート診療情報提供書(兼)受診依頼票」を同封の上,愛知医科大学病院循環器内科宛にご紹介をお願いいたします。
  2. かかりつけ医がない等で当院に直接受診いただく場合には,中央棟1階16番総合受付にて「心不全地域連携プロジェクト希望」とお伝え下さい。予約外受診の場合は,各曜日10時までの受付をお願い申し上げます。なお,紹介状無しで受診いただく場合は,初診時に通常の医療費の他に選定療養費用として7,700円(税込)が必要となりますので,予めご承知おきください。
  3. その他ご不明点がございましたら,愛知医科大学病院・地域医療連携室 (直通TEL:0561-65-0221)までご連絡ください。

キーワード

心不全,カワセミ,早期診断介入,新規発症予防,心臓リハビリテーション,心不全地域連携診療,二人主治医制

関連リンク

連絡先

愛知医科大学病院循環器内科
愛知県長久手市岩作雁又1-1

TEL
0561-62-3311(代表)
070-6957-5105(循環器ホットライン)
FAX
0561-63-8482
E-mail
kawasemi@aichi-med-u.ac.jp