心不全包括管理センター

心不全患者数は世界で6000万人を超えると言われ年々増加し『心不全パンデミック』と言われる時代になっています。我が国における心不全の有病率は120万人以上・年間の心不全新規発症者数は約35万人と増加の一途を辿っており、特に高齢心不全症例の増加が著しい状況です。心不全は治癒することなく生涯通じて継続治療が必要な疾患です。近年ARNI・ベータ遮断薬・ミネラルコルチコイド拮抗薬・SGLT2阻害薬を中心とした新規心不全治療や植え込みデバイスの登場・進歩で以前と比較して院内死亡率には減少傾向がみられるものの入院後1年死亡率は20%程度から変化しておらず、心不全患者の退院後1年の再入院率も25%程度で経時的な改善はみられていません。特に増加を続ける高齢心不全症例では併存疾患も多く、心不全増悪因子として社会的要因も多いため病院だけでの疾病管理だけでは困難でありかかりつけ医や訪問診療まで連携することが重要であると考えられております。
愛知医科大学病院近隣地域における心不全有病患者数シミュレーションを図1に示します。長久手市・尾張旭市・日進市・名東区・守山区において2045年まで図のような増加が予測されております。2025年における各地域での新規心不全発症患者推定数はそれぞれ、長久手市228人/年・尾張旭市474人/年・日進市410人/年・名東区816人/年・守山区787人/年と推定されており、今後も新規心不全発症患者推定数は年を追うごとに増加すると予測されています。当地域において心不全診療の強化は早急に取り組むべき課題と考えられます。

診療部門からのごあいさつ

部長 天野哲也

部長 天野哲也

先述のように心不全は治癒することなく生涯通じて継続治療が必要な疾患で各年代・各病期それぞれでの対応が多岐に渡るため、予防から急性期、回復期・慢性期に至るまでのシームレスな継続・一貫した疾病管理を行うことが必要です。そのために前方後方連携を含む緊密な地域医療連携体制の構築は非常に重要と考えられます。今回の地域医療連携プロジェクトの中での中心となる目標は、1)心不全ステージA/Bからの早期介入による心不全の新規発症予防(ステージCへの進行予防)、2)ステージC /Dとなった心不全症例の再入院予防への取り組みが中心となると考えております。さらに、愛知医科大学病院循環器内科は、現在国が推奨している「二人主治医制」を軸にして地域連携を深め心不全パンデミック問題に取り組んでいくために、この度心不全包括管理センター(かわせみハート)を立ち上げることになりました(図2;心不全包括管理センター組織図)。


【かわせみハートの由来】
かわせみの羽色は愛知医科大学および大学病院のロゴと酷似しており、力強く羽ばたく姿は心不全センターの通称にふさわしい。また、「かわせみ会」は愛知医科大学循環器内科同門会名でもある。

業務案内

A予防管理治療部門
予防管理治療部門では心不全ステージAにおける高血圧・糖尿病などのcommon diseaseや心房細動・虚血性心疾患・弁膜症などの心不全発症前の症例に対して心不全ステージが進行しないよう予防を意識した生活指導・薬物治療介入を中心とした疾病管理を行い、心不全の新規発症抑制を目指します


B急性期管理治療部門
急性期管理治療部門では主に心不全ステージCの急性期の管理治療、心不全ステージBの侵襲的治療を主に担当します。狭心症・心筋梗塞に対するカテーテル治療は、薬剤溶出性ステントなどの進歩で再狭窄も劇的に減少し、またデバイスの向上で複雑病変に対する介入も可能となってきました。大学病院ならではの先進治療を実践し、心不全発症予防、心不全再入院予防を目指します。


C回復期・慢性期管理治療部門
回復期・慢性期管理治療部門では急性期の治療早期より多職種心不全チームの介入を開始し慢性期・維持期まで継続・一貫した疾病管理を行っていきます。疾病管理の中心となるのが心臓リハビリテーションとなります。心不全の再発・重症化を予防することを目標として医学的評価に基づいた運動処方・運動療法、生活指導・服薬指導などの患者教育、カウンセリングなど長期にわたる総合的活動プログラムです。急性期病院のため入院期間が限られるため本院での心臓リハビリテーションが不十分なる場合などは、分院である愛知医科大学メディカルセンターとも連携して心臓リハビリテーションを強化し退院早期の再入院予防を行なっています。

図1:心不全患者発症数推移(予測)

図2:組織図

キーワード

心不全、病診連携、かわせみ

関連リンク

連絡先

TEL
0561-62-3311(代表)
070-6957-5105(循環器ホットライン)
E-mail
kawasemi@aichi-med-u.ac.jp