〒480-1195 愛知県長久手市岩作雁又1番地1
概要
心不全は、心臓の働きが弱くなり、全身に十分な血液を送り出せなくなる病気です。病状が進行すると、息切れやむくみが起こり、次第に悪化して入退院を繰り返すことになってしまいます。心不全を発症する患者さんの人数はどんどん増加しており、愛知医科大学病院近隣地域での新規に心不全を発症する患者数は年間300−800人と推定されています。
心不全は発症すると治癒することはなく、生涯通じた継続治療が必要です。そのため急性期から慢性期に至るまで一貫した病気の管理を行うことが大切ですが患者さん一人一人の病状に応じた対応が多岐にわたるため、病院だけでなく地域の医療機関と連携を取って病気を管理することが非常に大切です。
愛知医科大学病院循環器内科では地域の医療機関と密に連携して心不全の患者さんの治療を一貫して行うために2024年5月に心不全包括管理センター(かわせみハート)を立ち上げ、守山区・名東区・瀬戸・尾張旭・東名古屋医師会と連携しています。
【かわせみハートの由来】
「かわせみハート」という名称は、かわせみの羽の色が愛知医科大学および大学病院のロゴと似ていること、そしてその力強い飛翔姿が心不全と闘う姿勢を象徴しているためです。また、愛知医科大学循環器内科の同門会「かわせみ会」にも由来しています。
診療部門からのごあいさつ
部長 天野哲也
先述のように心不全は治癒することなく生涯通じて継続治療が必要な疾患で各年代・各病期それぞれでの対応が多岐に渡るため、予防から急性期、回復期・慢性期に至るまでのシームレスな継続・一貫した疾病管理を行うことが必要です。そのために前方後方連携を含む緊密な地域医療連携体制の構築は非常に重要と考えられます。心不全包括管理センター「かわせみハート」を設立した目的は、次の2点に集約されます。
(1)心不全ステージA/Bでの早期介入による新規発症予防
(2)ステージC /Dに進行した心不全症例の再入院予防
愛知医科大学病院循環器内科では、国が推奨する「二人主治医制」を取り入れ地域と連携して心不全のパンデミック問題に取り組んでいきます。
主な対象疾患
当センターで対象となる主な疾患は以下の通りです。どれも心不全に関連する病気で当センターではこれらの疾患に対する専門的な治療を行います。
- 心不全(心臓の機能が低下し、全身に十分な血液を送り出せなくなる状態)
- 虚血性心疾患(急性心筋梗塞,陳旧性心筋梗塞,無症候性心筋虚血,狭心症など)
- 弁膜症(大動脈弁狭窄症、大動脈弁閉鎖不全症、僧帽弁閉鎖不全症、僧帽弁狭窄症など)
- 不整脈(洞不全症候群,房室ブロック,上室性頻拍,心房細動,心房粗動,心室頻拍など)
- 心筋症(拡張型心筋症,肥大型心筋症,急性心筋炎,中性脂肪蓄積心筋血管症など)
- 成人期の先天性心疾患(心房中隔欠損症など)
業務案内
A 予防管理治療部門
高血圧、糖尿病といった生活習慣病や心房細動・虚血性心疾患など心不全発症リスクが高い患者に対し、生活指導や薬物治療を中心に予防的な疾病管理を行います。心不全の新規発症抑制を目指します。
B 急性期管理治療部門
主に心不全ステージCの急性期の管理治療、心不全ステージBの侵襲的治療を主に担当します。薬物治療だけでなく狭心症や心筋梗塞、不整脈、弁膜症に対するカテーテル治療など大学病院ならではの先進的な医療技術を駆使し、心不全の発症や再増悪による再入院を予防します。
C 回復期・慢性期管理治療部門
急性期の治療が終了した後も、心臓リハビリテーションを中心に慢性期・維持期まで継続一貫した管理を行います。患者さん一人ひとりに合った運動療法や服薬指導・栄養指導などの生活指導を提供し、心不全の再発を防ぎます。
急性期病院のため入院期間が限られるため本院での心臓リハビリテーションが不十分な場合などは、分院である愛知医科大学メディカルセンターとも連携して心臓リハビリテーションを行なっています。
心不全を早期診断治療するために
一度心不全を発症しまうとだんだんと病気が悪くなり入退院を繰り返すようになり、最終的には治療が難しい状態となります。図1は治療開始のタイミングと心不全患者さんの治療経過の相関を示した図になります。
① 心不全患者さんの自然経過(治療されなかった患者さんの経過)
② 心不全を発症してから(ステージCとなってから)治療を開始された患者さんの経過
③ 心不全ステージ早期(ステージA、B)で治療開始となった患者さんの経過
早期診断治療により良い経過が得られるため、心不全発症のリスクの高い患者さんに早期から循環器専門医による精密検査を行うことが必要と考えられるようになってきています。
図2に示すように心不全ステージAは高血圧・糖尿病などの生活習慣病で心不全発症のリスクが高い段階です。ステージBは心肥大、弁膜症、心筋梗塞といった心臓に構造的な異常を認める段階で心不全前状態と考えられています。ステージA・Bの診断はまず、心エコーと血液検査(BNP・NT-proBNP)を組み合わせて評価し必要に応じてCT・MRI・シンチグラムなどで精密検査を行い心臓の機能が悪くなった原因を調べます(図3)。
図1
図2
図3
心不全を発症した場合には
心不全の原因に対するきちんとした治療・管理がされないと心不全の増悪を繰り返してしまいます(1年以内に25%の患者さんで心不全が再増悪して再入院すると言われています)。そのため、まずは心不全の原因を検査し、原因となる病気に対する治療が必要です。
心不全の原因となる病気の治療を行った後も、継続して薬物治療は必要となります。薬物治療だけでなく心不全に対する運動療法である心臓リハビリテーションを行うことが心不全の増悪予防に非常に有効であることが分かっています。当院も入院から外来まで継続した心臓リハビリテーションに力を入れております。
再入院のリスクが高い退院後6ヶ月程度経過するまでは愛知医科大学循環器内科で外来通院+心臓リハビリテーション継続します。病状が安定した後の外来通院はかかりつけの医療機関にお願いし、外来心臓リハビリテーションは愛知医科大学病院で継続しながら心不全患者さんをフォローアップして地域での心不全診療の治療向上を実現したいと考えています。
高度な医療
心不全包括管理センターでは患者さん一人ひとりのニーズに応じた高度な専門医療を提供します。 最先端の検査機器を使用し心不全の原因や状態を正確に把握した上で薬物療法・デバイス治療・カテーテル治療・外科手術などの選択肢を組み合わせ、患者さんに最適な治療計画を提案しています。
心不全の診断から治療・予防まで包括的なケアを実現するために医師・看護師・理学療法士・管理栄養士・薬剤師など多職種が連携してチーム医療を実践しており患者さんの生活の質を向上させ、再入院のリスクを低減することを目指しています。
心不全の発症・増悪の予防にも力を入れており早期発見と早期介入を推進しています。地域の医療機関との連携を強化し、心不全の予防教育や啓発活動も行っています。
心不全発症・増悪予防には、まず患者さん自身に心不全についてよく知っていただくことが重要で日常生活で注意することを理解し実践していただくことが必要になります。そのためには患者さんに心不全に関する知識を深めていただく必要あるため、当院では心不全教育入院をおこなっております。3泊4日の日程を通じて医師・看護師・管理栄養士・薬剤師・理学療法士がチームとなって、服薬指導・心臓に優しい運動療法・栄養指導・生活習慣を見直すためのアドバイスをわかりやすくお伝えします (図4)。心疾患をお持ちの患者さんはぜひご利用を検討してみください。
図4
受診について
心不全包括管理センターへの受診は、かかりつけ医を通じての予約が必要です。必要な検査(心エコー、血液検査など)は可能な限り来院当日に行います。かかりつけ医がいない場合や、紹介状がない場合の受診方法もございますので、詳しくは当院の地域医療連携室までお問い合わせください。
- かかりつけ医より愛知医科大学病院・地域医療連携室(TEL:0561-65-0221 FAX:0561-65-0225)を通してご予約ください。「心不全早期診断シート診療情報提供書(兼)受診依頼票」(https://www.aichi-med-u.ac.jp/hospital/files/link/shinfuzen_shinryoujouhou.pdf)をご利用の上、愛知医科大学病院循環器内科宛にご紹介をお願いいたします。
- かかりつけ医がない等で当院に直接受診いただく場合には、中央棟1階16番総合受付にて「心不全地域連携プロジェクト希望」とお伝え下さい。予約外受診の場合は、各曜日10時までの受付をお願い申し上げます。なお、紹介状無しで受診いただく場合は、初診時に通常の医療費の他に選定療養費用として7,700円(税込)が必要となりますので、予めご承知おきください。
その他ご不明点がございましたら、愛知医科大学病院・地域医療連携室 (直通TEL:0561-65-0221)までご連絡ください。
キーワード
心不全、カワセミ、早期診断介入、新規発症予防、心臓リハビリテーション、心不全地域連携診療、二人主治医制
関連リンク
連絡先
愛知医科大学病院循環器内科
愛知県長久手市岩作雁又1-1
- TEL
- 0561-62-3311(代表)
070-6957-5105(循環器ホットライン) - FAX
- 0561-63-8482
- kawasemi@aichi-med-u.ac.jp