概要
疼痛緩和外科・いたみセンターでは,痛みに関連した病気に悩んでいる患者さんを,総合的に診断し治療を行っています。痛みは多くの病気でみられるありふれた症状の1つですが,主観的な症状のため他人からはなかなか理解されにくく,日常生活や社会活動にも多大な影響を与えます。当センターは,このような痛みに対して2002年に国内で初めて開設された集学的な治療・研究施設です。
頭痛,腰痛,肩こり,各種神経痛,手術後の痛み,また,原因がはっきりしない痛み,がんなどの治療後に病気が治って痛みだけが残ったものなど,疼痛疾患全般を治療対象としています。
治療は,運動器に対する理学療法,各種薬物療法(漢方を含む),及び神経根ブロック療法,高周波パルス療法などを組み合わせた治療、脊髄小侵襲手術(脊髄刺激療法など)を行っています。
特に,難治性の神経障害性疼痛や高齢者の慢性疼痛など治療に難渋している症例に対して,器質面へのアプローチだけでなく,精神科専門医,心理士による精神・心理学的方法も含めた多角的な診療を目指しています。
現在,順調に遠方の他施設や地域医療施設からの紹介患者が増加しており,当センター独自の治療方針を確立し,日本の痛み治療をリードしていきたいと考えております。
診療部門からのごあいさつ

部長 牛田享宏
~痛みと向き合い,ともに考える~
疼痛緩和外科・いたみセンターは本院における痛みの総合診療センターとしての役割を担っており,痛み治療の専従エキスパートが,痛みの身体的,精神的,社会的な相互関係を多方面から評価し,各専門医学領域と提携して集学的かつ統合的なアプローチを行っていくことを目的としており,高い理想をもって疼痛制御に関する診療を行う施設です。
急性期の痛みは,生体へと危険を知らせる警告信号として重要な役割を果たしていますが,その痛みが慢性化すると,苦悩や生活の質を損なうことになります。その結果,就労復帰が困難になり,また医療経済的な面にも影響を及ぼすなど社会的にも大きなマイナス要因となっています。これまで慢性の痛みがある患者さんへの対応は,各診療科が個別に行ってきましたが,十分な改善・満足が得られていないのが現状です。現在,日本では高齢化社会が急速に進んでおり,今後痛み治療が医療において重要な位置を占めると考えられ,集学的な治療を行う痛みセンターがその中心的な役割を担うことが期待されています。
平成23年度から,厚生労働省指定研究班の中核施設として専門的な観点から慢性の痛みの課題の整理や対応策の研究開発を推進しています。現在は慢性の痛み情報センター(https://itami-net.or.jp/)の実運営を行っており、慢性の痛み対策として,全国の患者さん,市民,医療従事者に対する痛みの正しい情報の発信に努めているほか、教育啓発活動として市民セミナーや研修会を行っています。
主な対象疾患
- 頚椎・腰痛変性疾患,神経根症
- 肩・肘・膝・股関節変性疾患
- がん性疼痛、がん治療後疼痛
- 神経障害性疼痛など
- 頭痛,顔面痛,三叉神経痛
- 脊髄障害性疼痛症候群
- 線筋痛症
- 複合性局所疼痛症候群
診療・治療実績
診療実績
内容 | 平成28年度 | 平成29年度 | 平成30年度 | 令和元年度 | 令和2年度 |
---|---|---|---|---|---|
新規患者数 | 665人 | 683人 | 711人 | 748人 | 666人 |
再来患者数 | 8,332人 | 8,654人 | 8,895人 | 9,029人 | 8,685人 |
総患者数 | 8,997人 | 9,337人 | 9,606人 | 9,777人 | 9,351人 |
入院患者延べ数
内容 | 平成28年度 | 平成29年度 | 平成30年度 | 令和元年度 | 令和2年度 |
---|---|---|---|---|---|
入院患者延べ数 | 2人 | 201人 | 461人 | 498人 | 577人 |
治療方針
診察
痛みに関する質問だけではなく、心理社会的背景にも配慮した多角的な質問票を使うことで、様々な側面から評価を行なっています。
看護師による医療面接では、答えていただいた質問票を元に、さらにお話を伺います。その中で患者さんが新たに思い出したり気づいたりすることを問診票に追加し、検査や治療選択のためより情報を充実させていきます。
検査
- 身体検査
- 運動機能評価(最大酸素摂取量、有酸素性作業閾値)
- 心理・精神的検査(HADS、MMPIなど)
- 痛み度測定(ペインビジョン など)
- 関節可動域測定
- 骨密度評価(DEXA法)
- 簡易神経機能検査(触覚、圧痛、電気的知覚)
- 精密神経機能検査(神経伝導検査、体性感覚誘発電位(SEP)、運動誘発電位(MEP)、筋電図など)
- 経頭蓋磁気刺激による電気生理検査法
- 画像検査(Plane XP、fMRI、Long XP(Long XPと併せて分析するシステムを構築)、RI検査(SPECT)、PET など)
- 心理検査
治療
- 運動療法・リハビリテーション・作業療法
- 薬物療法・漢方療法
- 心理療法(認知行動療法・睡眠療法)
- 神経ブロック
- 高周波熱凝固法(Radiofrequency thermocoagulation: RF法)
- 脊髄刺激療法(Spinal Cord Stimulation: SCS法)
- 静脈内局所麻酔法(Intravenous regional anesthesia: IVRA)
カンファレンス
- 週2回開催
受診を希望される方へ
- 完全予約制です
※かかりつけの医療機関から地域医療連携室までFAX(0561-65-0225)でお申し込みください。
慢性痛教室・ペインキャンプ
慢性痛教室
疼痛緩和外科・いたみセンターと運動療育センターで慢性痛の患者さんを対象とした「慢性痛教室」を開設しております。本教室は,痛みに対する知識,心理教育的側面からのアプローチと,自主的な身体運動を促す運動アプローチを併用し,集団的治療効果が期待されます。
これまでに17回開催し,延べ99名(平成28年3月末時点)の患者さんにご参加いただいております。ご興味をお持ちの方は疼痛緩和外科・いたみセンター主治医,または受付までご相談ください。
ペインキャンプ
ペインキャンプは生活や就労に制限・困難を期した主に若中年層の慢性疼痛患者を対象としています。 「痛みがあっても活動的な人生を送る」ことを目標に、医師をはじめとした医療専門職者らとともに種々の課題に取り組み、痛みに負けない身体づくりと、痛みや身体の不調に影響を与えるストレスへの適切な付き合い方を学び、自分自身で痛みへ対処する方法を習得することを目指した短期入院型のグループプログラムです。
からだを鍛える
理学療法士の指導による,各個人に合わせた徹底した筋力トレーニングと有酸素運動
こころを鍛える
・臨床心理士と行う、ストレスコーピングスキルの習得とリラクセーションの実践
・ヨガ専門インストラクターによる,マインドフルネス・ヨーガ体験

キーワード
学際的(集学的,総合的)な,各種診療科・職種による疼痛の緩和
関連リンク
連絡先
- TEL
- 外線:0561-62-3311(代表)