肝胆膵内科

様々な肝の不調に対応すべく最新の知見をもって診断・治療にあたっています。例えばB型慢性肝炎では核酸アナログやインターフェロンを用いて,ウイルスの排除,抑制を目指し,C型慢性肝炎に対しては飲み薬(直接作用型抗ウイルス剤)による治療を行っています。肝癌に対しては大きさや個数,各個人の肝臓の能力に応じて最適な治療法を検討し,ラジオ波焼灼療法や,肝動脈塞栓療法,手術,分子標的治療薬や免疫チェックポイント阻害薬を含めた化学療法などの集学的治療を実践しています。

また生活習慣病における肝臓での表現型である脂肪肝の中には,非アルコール性脂肪肝炎(NASH)という肝硬変へ進展する恐れのある疾患が近年注目されています。この疾患についてマスコミ等で当教室が紹介されるなど,このような分野においても大きな成果をあげています。 そして膵・胆道系に存在する良性疾患および悪性疾患に対しては,CT,MRCP,超音波内視鏡検査(EUS),超音波内視鏡下穿刺吸引細胞診(EUS-FNA),内視鏡的逆行性膵胆管造影検査(ERCP)等による検査・治療法を駆使し,積極的に診断・治療を行っております。膵・胆道系の悪性腫瘍は早期発見・治療が非常に困難な疾患ですが,当科では,EUS,管腔内超音波検査(IDUS),EUS-FNAを積極的に行い,初期の小さな病変の発見に努めております。診断後の治療については,外科的手術のみならず化学療法(抗がん剤治療),内視鏡的緩和治療などを組み合わせた集学的治療を行っております。

胆道良性疾患の代表である胆のう結石・胆管結石は,ときに胆のう炎,胆管炎,閉塞性黄疸,敗血症などの重篤な合併症へ進展する可能性のある疾患です。このような疾患に対しても,超音波検査,CT,MRCP,EUS等で画像診断を進め,ERCPによる胆道ドレナージや内視鏡的乳頭切開術(EST)による採石術により治療を行っております。

診療部門からのごあいさつ

部長 

部長 伊藤清顕

2023年7月1日付で肝胆膵内科の教授・部長に就任しました伊藤清顕(いとうきよあき)と申します。我々の専門分野である肝胆膵領域は肝臓、胆道(胆嚢と胆管)、そして膵臓が対象となります。この分野の「がん」は悪性度の高いものが多く、2020年の国立がん研究センターのまとめによりますと5年生存率のワースト1位が「膵臓がん」であり、2位が「胆道がん」、3位が「肝臓がん」でありました。このように、当科が対象とする悪性腫瘍がワースト1~3位を占めているのが現状です。このような悪性度の高い「がん」に対して、我々スタッフ一同は少しでも治療効果を高めるべく全力で診療に取り組んでいます。
「尾張東部膵がん早期診断プロジェクト」では地域のクリニックの先生方と連携して、膵がんのリスクの高い方を紹介していただき積極的に早期発見・早期治療に努めています。肝臓がんの原因となるC型肝炎ウイルスに対しては効果的な「直接作用型抗ウイルス剤」による治療を実施することにより、既に数百人以上の患者さんからC型肝炎ウイルスを完全排除することに成功しました。同じく肝臓がんの原因となるB型肝炎ウイルスに関しては、現在愛知県下で最も多くの患者さんを診療しており、インターフェロンや核酸アナログ製剤を効果的に使用することにより肝臓がんの発生を少しでも低下させるように努めています。また、B型肝炎ウイルスに対しても、C型肝炎ウイルスのように薬物による完全排除が達成できるように、国の研究資金を獲得して新規抗ウイルス薬の開発にも全力で取り組んでいます。最近、アルコールや脂肪肝、糖尿病などが原因となる肝臓がんが増加しています。我々は、いかにこのような非ウイルス性(非B非C)肝臓がんを早期に発見するかという対策にも取り組んでいます。
このように我々は特定機能病院として高度で先進的な医療を行うことにより、皆さんを肝胆膵疾患から守りたいと考えています。肝胆膵疾患に関しまして不安や疑問な点等ありましたら、かかりつけの先生に相談して必要あれば当科に紹介していただいてください。また、当院は国が定める肝疾患診療連携拠点病院の一つとなっております。肝疾患に関しまして相談のある方はどうぞお気軽に当院の肝疾患相談部(直通電話:0561-78-6244 [9:00-12:00および13:00-17:00])まで御連絡下さい。皆さんに安心して日々の生活を送っていただくことが我々の最大の望みです。どうぞよろしくお願い申し上げます。

主な対象疾患

  • 肝臓の疾患(肝炎ウイルス,脂肪肝炎(NASH),薬物性肝障害,アルコール性肝障害,肝硬変,肝臓癌,肝膿瘍,原発性胆汁性肝硬変,劇症肝炎,自己免疫性肝炎等,食道静脈瘤等)
  • 胆道・膵臓の疾患(胆石症,胆嚢炎,胆嚢腺筋腫症,各種癌,膵炎,粘液産生膵腫瘍,膵内分泌腫瘍等)

高度な専門医療

高度な医療

原発性肝癌・転移性肝癌ラジオ波焼灼療法(RFA)

肝臓を切らずに,腹部超音波下に短期間で肝癌・転移性肝癌を焼灼する方法

フィブロスキャン

肝臓の硬さをはかる機器を使用して,ウイルス性肝炎や非アルコール性脂肪肝炎(NASH)の進行度測定する方法

造影エコー

超音波用の造影剤を用いて肝腫瘍の診断,治療を行う方法

肝(腫瘍)生検

肝腫瘍を超音波下にて直接穿刺し,原因不明の肝障害や肝腫瘍の診断を行う方法

胃食道静脈瘤治療

胃カメラを用いてEVL(極小の輪ゴムにより結紮する),EIS(直接針を刺し硬化剤を注入する)を行う方法

超音波内視鏡下穿刺吸引細胞診(EUS-FNA)

最先端の内視鏡診断法であり,従来困難とされてきた膵腫瘍・胆管腫瘍等の膵・胆道系腫瘍の組織学的診断が,超音波内視鏡観察下に穿刺する方法

専門外来

ウィルス性肝炎外来

以前よりB型肝炎やC型肝炎と診断されている方や新規でこれらのウイルス性肝炎と診断された方が対象となります。
B型肝炎やC型肝炎は、放置すると肝硬変や肝臓がんといった難治性肝疾患に進展してしまうことがあります。最近では、これらの慢性ウイルス性肝炎に対して遺伝子学的な診断や副作用の少ない新規の内服薬治療など診療方法が大きく進歩しています。病気を進行させないために、肝臓専門医としてウイルス性肝炎に関しての診断や治療を患者さんと相談しながら行っていきます。

担当者 伊藤清顕
受診方法 再診患者,地域連携(注)
診療日時 ※医師の担当日時(週・曜日)についてはこちらでご確認ください。

注:【再診患者】再診患者のみの受付の為,一度,一般外来を受診して下さい。
【地域連携】かかりつけ医から地域医療連携室を通してご予約下さい。

ウイルス性肝疾患外来

慢性肝疾患の多くはB型、C型慢性肝炎を代表とするウイルス性肝炎です。
B型、C型慢性肝炎は放置すると肝硬変に進展し、肝臓がんに進展してしまうことがあり早い段階で治療されることが望まれます。近年C型慢性肝炎に対する抗ウイルス薬の進歩は目を見張るものがあり、従来のインタ-フェロン治療より有効で副作用が少ない飲み薬だけでの治療が可能となりました。これまで副作用に対する危惧からインタ-フェロン治療を躊躇されていた高齢の患者さんも安全に治療を受けていただくことが可能になってきています。肝炎治療が大きく進歩しつつある昨今、多くの患者さんに最新医療を適切かつ安全にご提供するため、当科外来では肝臓専門医が患者さんと相談し診療にあたります。

担当者 中出幸臣
受診方法 再診患者のみ(注)
診療日時 ※医師の担当日時(週・曜日)についてはこちらでご確認ください。

注:【再診患者】再診患者のみの受付の為,一度,一般外来を受診して下さい。
【地域連携】かかりつけ医から地域医療連携室を通してご予約下さい。

脂肪肝専門外来

国内に約200万人存在すると推定される非アルコール性脂肪肝炎(NASH)からの肝がん・肝硬変への進展を予防することを目的とした専門外来です。ガイドラインに沿って肝生検による診断を標準とし,体組成測定,管理栄養士との連携による栄養指導,糖尿病合併例に対しては新規の糖尿病薬(SGLT2阻害薬, GLP-1作動薬)による治療,今後国内で行われる新規薬剤の開発治験への導入など行います。当外来はかかりつけ医との病診連携を重視していますので,初診の方は紹介状を必ずご持参のうえ受診してください。なお,高血圧・脂質異常などの生活習慣病の管理はかかりつけ医の下で行って頂き,当専門外来は肝疾患関連死撲滅を目指した診療を行っていきます(毎週水曜日午前)。

関連リンク

担当者 荒井潤
受診方法 再診患者,地域連携(注)
診療日時 ※医師の担当日時(週・曜日)についてはこちらでご確認ください。

注:【再診患者】再診患者のみの受付の為,一度,一般外来を受診して下さい。
【地域連携】かかりつけ医から地域医療連携室を通してご予約下さい。

膵・胆道内視鏡治療専門外来

胆管炎、胆管結石、胆嚢炎、胆石症、閉塞性黄疸、胆管狭窄、膵管狭窄、膵石症、膵炎、被包化膵壊死(WON)など、多くの膵胆道疾患は内視鏡的な診断・治療が中心となります。一方で膵臓や胆管、胆嚢といった臓器は体の奥まった位置にあり、内視鏡的な処置には高い技術と専用の機材が必要となってきます。当院では膵胆道内視鏡処置に必要な様々な内視鏡や処置具を常備しており、十分なトレーニングを積んだ専門医師が担当致します。また胃や十二指腸術後の方に対するバルーン小腸内視鏡を使用した胆管膵管処置や、経口胆道鏡を用いた胆管処置、胆管結石に対する電気水圧衝撃波結石破砕、超音波内視鏡を使用した膵周囲液体貯留や胆道のドレナージなど、特殊な技術・設備が必要な処置の経験も豊富であり、最先端の治療の提供が可能です。

担当者 井上匡央(金曜 9時~)
受診方法 直接受診して頂くか、他院よりご紹介の方は地域連携を介して事前予約をお取り下さい。直接受診の場合は11時までの受付をお願いします。
診療日時 ※医師の担当日時(週・曜日)についてはこちらでご確認ください。

膵・胆道腫瘍専門外来

膵がん、胆道がん(胆管がん、胆嚢がん)と診断された方や、疑われる方を対象とした外来です(その他の膵・胆道腫瘍にも対応しています)。膵がん、胆道がんは難治がんの代表であり、診断や治療が難しい領域です。これらの疾患に対しては「ERCP」や「EUS」といった内視鏡を用いた低侵襲な診断・治療技術に加えて、化学療法、放射線治療、緩和医療など幅広い知識が要求されます。当院では膵・胆道がん診療に豊富な経験を有する専門医師が担当し、お話を伺いながら、ひとりひとりの患者さんにとって最も適切な方針を決定していきます。消化器外科や放射線科などの関係各科医師や、看護師や薬剤師をはじめとする多職種と連携しながら、質の高い医療を安心して受けられるように努めていきます。セカンドオピニオンも随時受け付けております。お気軽にご相談下さい。

担当者 井上匡央 (月曜 10時~, 水曜 9時~)
受診方法 直接受診して頂くか(紹介状をご持参下さい)、地域連携を介して事前予約をお取り下さい。直接受診の場合は11時までの受付をお願いします。
診療日時 ※医師の担当日時(週・曜日)についてはこちらでご確認ください。

診療・治療実績

外来患者数(1日平均)

平成30年度 79.0人
令和元年度 85.0人
令和2年度 85.8人
令和3年度 101.9人
令和4年度 108.3人

入院患者数(1日平均)

平成30年度 29.0人
令和元年度 32.7人
令和2年度 30.5人
令和3年度 35.0人
令和4年度 32.7人

主な治療実績(令和4年度)

超音波内視鏡検査(EUS) 812例
超音波内視鏡下穿刺吸引生検(EUS-FNA) 150例
内視鏡的逆行性胆管膵管造影(ERCP) 821例
食道静脈瘤硬化療法・結紮術(EIS・EVL) 57例
C型肝炎に対する経口直接作用型抗ウイルス剤(DAAs)治療 16例
経皮的ラジオ波焼灼術(RFA) 14例
肝腫瘍生検・肝生検 72例
造影超音波検査 10例
経皮的肝動脈塞栓術(TAE) 52例

スタッフ募集

肝胆膵内科ではスタッフ、後期研修医を募集しております。もし当科にご興味がおありでしたらお気軽にご連絡下さい。見学も随時可能です。
お問い合わせはこちら kito@aichi-med-u.ac.jp

初診(紹介制)について

かかりつけ医から地域医療連携室を通して,ご予約ください。
外来診療の混雑緩和のため,原則,外来窓口での診療予約は行いません。かかりつけ医からの「診療情報提供書」をもって地域医療連携室より予約をおとり致します。
診療情報提供書をお持ちでない初診患者さんは,プライマリーケアセンターへの案内となります。

キーワード

肝炎ウイルス、非アルコール性脂肪肝炎(NASH)、薬物性肝障害、肝硬変、肝臓癌、肝膿瘍、原発性胆汁性胆管炎、原発性硬化性胆管炎、自己免疫性肝炎、食道静脈瘤、胆管炎、胆管結石、胆嚢炎、胆石症、閉塞性黄疸、胆管狭窄、膵管狭窄、膵石症、膵炎、被包化膵壊死(WON)、自己免疫性膵炎、IgG4関連硬化性胆管炎、膵腫瘍、胆道腫瘍、膵癌、胆管癌、胆嚢癌、膵神経内分泌腫瘍

連絡先

TEL
外線 : 0561-62-3311(代表)
内線 : 23480

さらに詳細な情報はこちらで紹介しています

肝胆膵内科ホームページ(学外)