教授のご紹介 小林 孝彰

小林 孝彰

感動を分かち合う腎移植医療,チームの力でサポートします。

小林 孝彰 (コバヤシ タカアキ)

腎移植外科 平成27年4月1日就任

外来担当日 月・水曜日

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専門領域 移植外科・移植免疫
認定医・専門医等
  • 日本外科学会:専門医,指導医
  • 日本移植学会:評議員,認定医
  • 日本臨床腎移植学会:評議員,認定医
  • 日本消化器外科学会:認定医
  • 日本組織適合性学会:理事,評議員,認定指導者
  • 日本膵・膵島移植研究会:幹事
  • 日本異種移植研究会:事務局,世話人
  • 日本臓器保存生物医学会評議員
  • 国際異種移植学会 会長

診療についての抱負

座右の銘

座右の銘

(1)移植医療の普及
2010年に改正臓器移植法が施行されましたが,日本では海外と比べて脳死(死体)移植数がとても少ないことが大きな問題となっています。患者さんのコミュニティを通した啓蒙活動,一般市民に対する公開セミナー,そして良好な成績を伴った移植数の増加が移植医療を定着させるために大切だと思っています。  Gift of life(命の贈り物)を通して,1人でも多くの患者さんが,移植医療で救われることを願っております。

(2)安全,安心,最先端医療の提供
日本では,生体腎移植が中心となっておりますが,腎提供者(ドナー)の存在が他の医療と異なるところです。腎移植を受けるレシピエントを思う献身的な行動があるから成り立つ医療です。ドナーとレシピエント,そして家族全体が,移植医療を通してさらに強い絆で結ばれることも多く,愛,希望,勇気,夢,喜び,元気,感謝といった感動を,私たち医療チームにも与えてくれます。
私たちは,腎臓を悪くされた患者さんとご家族にとって最善の治療を選択していただけるようにサポートします。そして,移植を受けられる場合には,それぞれの患者さんに最適の移植医療(手術,免疫抑制療法)を提供します。10年,20年,30年と移植した腎臓が機能し続けるように,患者さんと共に歩んでいきたいと思います。

(3)総合的な移植チームつくり
現在の課題は,長期成績のさらなる改善,慢性拒絶反応の克服,個別化医療の導入,そしてドナー不足問題の解決です。愛知医科大学では,レシピエントコーディネーターが設置されており,コ・メディカルを含めた移植医療チームは充実しております。現在,腎臓病総合医療センターの構築が計画されており,腎疾患に対する総合的な取り組みを始めます。さらに,研究部門を併設することで,科学・技術の進歩を医学に導入し,最新の研究成果に基づく医療を展開していきます。個人の力ではなく,チームの力を発揮できるような組織作りが重要と考えております。

学歴・職歴等

昭和54年 4月 名古屋大学医学部医学科入学
昭和60年 3月 名古屋大学医学部医学科卒業
昭和60年 5月 医師免許取得(医籍登録第290061号)
昭和60年 6月―昭和61年 5月 西尾市民病院研修医(全科)
昭和61年 6月―昭和63年 3月 安城更生病院医師(外科)
昭和63年 4月―平成 2年 3月 愛知県がんセンター外科研修(消化器外科)
平成 2年 4月―平成 2年 9月 名古屋第二赤十字病院医師(移植外科)
平成 2年10月―平成 2年12月 掛川市立総合病院医師(移植外科)
平成 3年 1月―平成 3年 6月 名古屋第二赤十字病院医師(移植外科)
平成 3年 7月―平成 5年12月 名古屋大学医学部医員(第二外科)
平成 5年 1月 博士(医学)学位取得(名古屋大学)
平成 6年 1月―平成 7年 5月 外国留学(アメリカ,オクラホマ州 Baptist Medical Center Oklahoma Transplantation Institute)
平成 7年 6月―平成11年 6月 名古屋大学医学部医員(第二外科)
平成11年 7月―平成14年 6月 名古屋大学医学部助手(副部長)(附属病院材料部)
平成14年 7月―平成16年 6月 名古屋大学大学院医学系研究科非常勤講師(病態制御外科)
平成16年 7月―平成19年 3月 名古屋大学大学院医学系研究科講師(留学生専門教育担当)
平成17年11月―平成19年 3月 名古屋大学大学院医学系研究科医学部長補佐(国際交流)
平成19年 4月―平成24年 3月 名古屋大学医学部教授(免疫機能制御学寄附講座)
平成24年 4月―平成27年 3月 名古屋大学大学院医学系研究科教授(移植免疫学寄附講座)
平成27年 4月―現在 愛知医科大学 医学部 外科学講座(腎移植外科) 教授

診療実績

過去4年間で約200例の腎移植手術に携わり,今までに約600例の腎移植の治療経験がある。

フォトアルバム

インタビュー

ご専門分野について教えてください

専門は移植外科で,今は腎移植医療を行っています。海外では臓器を提供する方は亡くなられた方が中心で,いわゆるGIFT OF LIFE,命の贈物と言われていますが,日本ではその数が極めて少ない。海外と比較してみると,亡くなった方からの移植は50分の1ぐらい,脳死移植では100分の1くらいしかありません。そのため日本では,生体移植が盛んに行われています。生体移植は,生きている方にメスを入れて臓器をいただくということから,本来は進めるべき医療ではないと言われてきましたが,最近は医療では安全性が高まっており,成績も向上しています。そういう背景から,生体移植が少しずつ増えてきている状況にあります。
医療の進化もあり,リスクは少なくなっていますが,0ではないということが生体移植の問題点だと思っています。以前に比べれば,腹腔鏡を取り入れた低侵襲の手術ができるため,ドナーの負担はかなり減り,安全性は100%に限りなく近いものの100%ではありません。この課題解決に向けて私たちは,全身全霊をかけてドナーの安全性の確保,移植後の成績向上のために努力しているところです。

医師になられた動機は何ですか

自分の力で何かを成し遂げ,その結果を近くで見てみたいという思いがありました。
そのために何ができるんだろうと考えてみると,学生時代に憧れていたのは文章で世界に訴える,世界を変えるということでしたが,その才能がないことがわかり断念。元来,理系的な思考があるということから,医学の道を選んだわけです。

医学を選んでよかったなと思うのは?

私は,臨床もやって研究もやりたいという欲張りなタイプです。医学には,そんな人間にふさわしい環境があるのが良かったですね。医学の研究のスタート地点は,患者さんの問題点。そこは身近で考えやすく,そして結果もわかりやすい。こういうところも医学の良い点の一つだと思います。

医学の魅力は?

わからないから,もっと調べよう。もっと何かできるようのではないか。というように,つねに現状を改善するために何ができるのかを探究できるところです。

移植に進むきっかけは?

研修を終えた後に,外科の道に進み,通常の一般外科,消化器外科で胃がん,大腸がん,そういうものを勉強してトレーニングを受けてきました。当時のがんの手術は,拡大,拡大で,とにかく大きく取り除くということがあって,取った後の機能的なことはあまり考えていませんでした。取り残しは,患者さんの生命に関わってしまうので仕方がない面もありますが,機能の悪くなった臓器を健康な臓器と取り換える,移植というものがあることを知らされて,「これは新しい発想だ」と興味を持ちました。また,その当時,動物実験で移植研究をしている人に出会い,その人の影響も大きいと思います。

今までで最もうれしかった出来事を教えてください

そんなに大きなことはなくて,移植というのは,決して1人でやれる医療ではなく大勢で取り組み,みんなで力を合わせて達成する医療です。つまり,それぞれ個人の専門的な能力を発揮して,それが集団となってより大きな力を結集できればいいわけです。私の役割は,皆さんの力を引き出せるような環境をつくるということで,それが実現した時が大きな喜びですね。

今後の夢や目標を教えてください

今,やらなくてはいけないことは,移植医療を一般の医療として定着させることです。日本の移植医療はまだまだ定着しているとは言えませんから。そのためには,脳死の方からの臓器提供の数を増やすとともに,やむを得ない状況ですが生体移植を増やしていくことも必要だと考えています。
そうして生体移植で良い成績をあげ,レシピエントの方もドナーの方も元気におられるということを,広く皆さんに知っていただければ,それが移植医療の定着,発展につながっていくのではないかと思っています。ただ,実践するのは生体移植が中心になってしまうため,安全で安心,ハイレベルな医療を提供できる体制を整えることが前提です。
そして,移植が行われたら,レシピエントの方もドナーの方も,ずっと私たちがフォローアップしていく,それが大切だと思っています。とくにメンタルで負担になるのは,ドナーの方です。ドナーには,レシピエントに対しての愛がある一方で,不安,心配などの悩みを多く抱えていらっしゃいます。そのため移植の前も移植の後も,精神科,こころのケアセンターなどの協力を得て,問題があればできるだけ早く対応できるようにしています。私たちは,レシピエント,ドナーを総合的に支援していきたいと考えています。

座右の銘や好きな言葉はありますか

ありきたりですが「一期一会」です。
私が今まで生きてきた中で,多くの人に出会い,いろいろな影響を受けて,そして今の自分があります。出会いでなくても,出来事でもいいかもしれません。そういうものを非常に大切にしています。
若い人たちへのメッセージとしては,できるだけ多くの経験をして,多くの人に出会って,影響を受けてください,と言いたいですね。

学生時代に打ち込んでいたものは?

学生時代はサッカー部とラグビー部に所属していました。どちらも団体競技なので,個人よりも組織,チームが優先という厳しいところでやっていました。ラグビーで「One for All,All for One.」という言葉がありますが,いい言葉だと思います。私たちも移植のチームとして,頑張りたいと思っています。

患者さんに対する想いは?

基本的に主役は患者さん。私たちの役割は,患者さんが自分自身で病気を治し,長生きをしていただくためのお手伝いをすることです。患者さんの暮らしが良くなり,元気に社会復帰していただくために,私たちは常に全力を尽くして取り組んでいきます。

患者さんへのメッセージをお願いします

日本では,臓器移植の数が少なく,移植を受けられなくて亡くなる方も多くいらっしゃいます。臓器提供の意思表示は,運転免許証,保険証の裏に記入できます。しかし,大切なことは,そこにサインをするということだけではなく,家族などいちばん大切な方と,話し合っていただくということです。それが非常に重要なことだと思います。