炎症性腸疾患センター

炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎、クローン病)は原因不明の難治性疾患で、長期にわたり治療を継続する方や治療が困難な方も少なくありません。そのため、この病気は厚生労働省の特定疾患(いわゆる難病)の指定を受け、公費負担の対象となっています。当センターでは炎症性腸疾患患者さんに対して内科・外科・小児科の専門のスタッフが治療指針やガイドラインに基づいた標準治療から、治療に抵抗する難治例や治療困難例など患者個々に対する最適な治療に対応しています。また、新規治療薬の開発(治験)に取り組んでいます。常に最新情報を取り入れ、免疫調節薬、血球成分除去療法、抗サイトカイン療法、栄養療法、内視鏡的治療や低侵襲手術を組み合わせることにより個々に対する専門治療が可能です。当センターでは、患者さんと医師とが連携して最適な治療法を二人三脚で行い、患者さんが安心して通院できるよう心がけています。

診療部門からのごあいさつ

部長  佐々木 誠人

潰瘍性大腸炎、クローン病は厚生労働省の難病疾患に指定されている原因不明の非特異的炎症性腸疾患で、若年で発症し慢性の経過をたどることから学業・就労に大きな影響を及ぼし、患者の生活の質(QOL)の低下ならびに社会生産性の低下が問題視されています。加えて、食生活の欧米化に伴い急速に患者数が増加しています。内科的治療が中心であるが根治は極めて難しく、緊急手術を含む外科的治療を要する場合もあることから、内科と外科とが連携して診療にあたる必要性があります。また、小児期から成人期への治療継続を要するため、小児科から内科へのトランジットを要する疾患でもあります。当院は長年にわたり難治性炎症性腸管障害に関する調査研究班の研究協力者として診断基準・治療方針の作成などに協力するとともに、難病疾患に対する高度医療を提供してきました。近年、新たな内科的治療の開発が盛んに行われ、ますます高度に進歩するIBDの治療には多種の専門医が密に連携する必要があります。これらのニーズに適切に対応するため、2020年10月1日付けで「炎症性腸疾患(IBD)センター」が新たに設置されました。当センターでは、多職種の専門スタッフがQOLの改善を目指した高度かつ最新・最良な個別治療を継続的に提供していきます。

主な対象疾患

潰瘍性大腸炎、クローン病

高度な専門医療

高度な医療

顆粒球除去療法

腕から血液を採取し、特殊なフィルターにより炎症の原因となる顆粒球を除去した血液を、もう片方の腕に戻します。日本で開発された治療法で、安全性・治療効果に優れた特殊治療です。

バルーン拡張術

小腸・大腸の狭窄部に対して内視鏡下でバルーンを用いて拡張します。

腹腔鏡下手術

腹部の傷が小さく、体への侵襲の少ない手術方法です。

小児内視鏡検査

小児においても炎症性腸疾患の患者数は増加しており、それゆえ小児への消化管内視鏡検査は重要な検査となっております。しかし小児への内視鏡検査は負担が大きく、また小児内視鏡検査の経験が豊富な医師が少ないというのが現状です。当院では小児科医師が小児の内視鏡検査を実施している数少ない施設のひとつです。小児の内視鏡検査は安全に苦痛なく行われる必要があります。当院ではガイドラインに基づいて鎮静薬・麻酔薬を用いて内視鏡検査を行なっています。小さなお子さんへの検査が必要な場合は麻酔科に依頼をして全身麻酔下で行います。

専門外来

炎症性腸疾患外来

担当者 内 科 : 佐々木誠人、山口純治
外 科 : 小松俊一郎
小児科 : 宮本亮佑
受診方法 かかりつけ医から地域連携室を通してご予約ください。
診療日時 外来担当医表はこちら

炎症性腸疾患の手術について

炎症性腸疾患に対する外科治療

消化器外科では、潰瘍性大腸炎、クローン病に対しての手術を消化器内科と連携して行っています。これらの病気の内科的治療が困難である場合や炎症性の病変が癌の発生母地となりそうな場合は、小腸・大腸の切除や大腸全摘等の手術治療が必要になります。また、クローン病の肛門病変に対して、外科的治療が必要なることがあります。また、大腸全摘や腸管の切除・再建手術をできるだけ腹腔鏡下に行うようにしています。腹腔鏡下手術と言えば「低侵襲手術」すなわち「患者さんにやさしい手術」と言われています。通常、胃や大腸の開腹手術では腹部を 20 ~ 30cm切開しますが、腹腔鏡手術であれば 4~6cm程度の傷一ヵ所と1cm 程度の傷を数ヵ所切開すれば手術を行うことができます。



腹腔鏡下大腸手術の成績

開腹移行率(腹腔鏡手術をあきらめて開腹となる確率)は、過去5年間で3.7%です。縫合不全(腸を縫い合わせたキズがうまくくっつかないこと)や腸閉塞など患者さんにとって大きな負担となる合併症も年々減少してきており、最近では数%以下の発生率です。難度の高い手術(肛門近くの直腸癌の切除・吻合など)を積極的に行い、いろいろな余病(糖尿病・腎疾患・心疾患など)を抱えた患者さんの手術が増加しているにもかかわらず、手術に関連する死亡率は0.2%程度です。私たちは手術による合併症をさらに減らすよう日々努力と工夫を重ねています。

キーワード

炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎、クローン病、治験、腹腔鏡手術、小児内視鏡

連絡先

TEL
外線:0561-62-3311(代表)
内線:23480