乳腺・内分泌外科

乳癌,甲状腺癌を中心に,乳腺良性腫瘍,急性・慢性乳腺炎,甲状腺腫,バセドウ病,副甲状腺腫瘍,副腎腫瘍などの診断と治療を行っています。当院は,日本乳癌学会認定施設,日本内分泌・甲状腺外科専門医制度認定施設に指定されており,常勤の乳腺専門医,内分泌外科専門医が診察にあたります。
乳癌に対しては乳房温存療法と乳房切除術が生存率において,同等の治療成績を示すことがわかっているため,当院では可能な限り乳房温存療法を行っています。腫瘍径や石灰化の拡がりなどで乳房温存術の適応とならない場合でも,乳房切除術に引き続いて組織拡張器を用いた人工乳房埋入法や遊離皮弁移植法による乳房再建術を当院形成外科と連携しながら行っています。また,センチネルリンパ節生検や腹腔鏡下副腎摘除術を取り入れ,より侵襲の少ない外科治療を行っています。エビデンスに基づいた薬物療法を実践し,化学療法は外来通院を原則とするなど,少しでも患者さんのニーズやQOLの改善に応えることのできる医療を目指しています。

診療部門からのごあいさつ

部長 中野正吾

部長 中野正吾

愛知医科大学乳腺・内分泌外科は,平成14年に東海地区初となる乳腺・内分泌外科学を専攻する講座として開講しました。教室の伝統を引き継ぎ,外科学の発展に専心努力するとともに,地域や社会のニーズに応え得る診療体制の確立,およびそれにかなう医療人を育成することを目指しています。
乳癌は年々増加しており,日本人女性の12人に1人が生涯のうちにかかるとされています。乳癌から命を守るためには早期に発見し,適切に治療を行うことが重要です。また近年,画像検査の進歩に伴い,甲状腺癌も年々増加しています。
治療法は病気の状態や患者さんご自身の考え方によっても異なります。当科では治療の前に専門医が患者さんやご家族と時間をかけて話し合い,患者さんご自身が納得して治療を受けられるように心がけています。また遺伝性乳癌・卵巣癌(HBOC)や多発性内分泌腺症に対する遺伝子検査においても,遺伝カウンセリングを通じてメリットとデメリットを十分確認した上で,患者さんご自身の意思により検査を受けるかどうか決めていただいています。
乳腺・甲状腺疾患は女性に多い疾患です。美容的な面,妊娠や性生活の問題など,患者さんが悩まれる多くの問題があります。男性医師に相談しにくいような事柄に関しては,専任の女性医師が懇切丁寧に対応いたします。

主な対象疾患

乳腺疾患
乳癌,パジェット病,線維腺腫,葉状腫瘍,乳管内乳頭腫,乳腺症,急性・慢性乳腺炎など
甲状腺疾患
甲状腺癌,濾胞腺腫,腺腫様甲状腺腫,バセドウ病,プランマー病など
副甲状腺疾患
原発性副甲状腺機能亢進症,続発性副甲状腺機能亢進症,副甲状腺癌など
副腎疾患
原発性アルドステロン症,Cushing 症候群,褐色細胞腫,副腎腺腫,転移性副腎腫瘍,副腎癌など

高度な専門医療

高度な医療

マンモグラフィ検査

マンモグラフィ(右乳癌)

マンモグラフィ(右乳癌)

日本医学放射線学会の使用基準を満たした乳房X線撮影装置を使用しています。日本乳がん検診精度管理中央機構(以下精中機構)が認定した女性放射線技師が撮影を行い,撮影されたマンモグラフィは精中機構が認定した読影医が診断いたします。2013年よりマンモグラフィに断層撮像機能を加えたトモシンセシスを導入しています。

超音波検査

フルデジタル超音波診断装置を導入し,診断精度の向上を目指しています。通常のBモード検査に加え,組織の硬さを色で画像化した組織弾性イメージング(elastography)や,MRI,CTと超音波画像情報を同期させることができるリアルタイムバーチャルソノグラフィ(Real-time Virtual Sonography:RVS)などの超音波診断支援装置を用いて乳癌の術式や乳房切除範囲の決定を行っています。MRIでしか検出できない病変に対しては,RVSを用いたsecond-look USを行い,超音波ガイド下生検を行っています。

リアルタイムバーチャルソノグラフィ(装置,画像)

リアルタイムバーチャルソノグラフィ(装置,画像)

吸引式乳房組織生検(vacuum-assisted biopsy:VAB)

ステレオガイド下マンモトーム生検

ステレオガイド下マンモトーム生検

VABを導入し,11G針による針生検を行っています。従来のTru-Cut typeの針生検に比べ,1回の穿刺で約8倍もの組織採取が可能であり,複数の連続採取も可能です。マンモトーム生検,バコラ生検とも呼ばれます。5mm程度の皮膚切開で検査可能であり,従来の外科生検に代わって細胞診検査では診断がつきにくい症例や術前化学療法前の組織採取などに導入しています。マンモグラフィで発見された石灰化病変に対しては,ステレオガイド下マンモトーム生検を行っています。2015年よりトモシンセシスを併用したトモバイオプシーを導入しました。

センチネルリンパ節生検

色素,RI併用によるセンチネルリンパ節生検

色素,RI併用によるセンチネルリンパ節生検

当科ではRI法,色素法を併用したセンチネルリンパ節生検を行っています。乳癌が最初に転移するとされるリンパ節を検出する方法です。術中迅速病理診断でセンチネルリンパ節に転移がないことを確認できた場合は腋窩リンパ節廓清を省略しています。リンパ浮腫などの腋窩廓清の合併症を減らすことができます。

診療・治療実績

手術実績(2018年-2022年)

  2018年 2019年 2020年 2021年 2022年
1)乳腺疾患
乳癌 226例 272例 258例 266例 260例
乳房温存術(温存率) 76例(34%) 86例(32%) 99例(38%) 81例(30%) 75例(28%)
センチネルリンパ節生検 180例 226例 194例 220例 203例
乳房再建術 23例 17例 10例 16例 13例
2)甲状腺疾患
甲状腺癌,甲状腺腫,バセドウ病 29例 28例 41例 38例 25例
3)副甲状腺疾患
腺腫,過形成 2例 3例 10例 1例 10例
4)副腎疾患
腺腫(内視鏡手術を含む) 6例 3例 5例 4例 3例

当科における乳癌病期別5年生存率(Stage IV期は除く) (2002-2013年)

0期 100%
Ⅰ期 97%
Ⅱ期 91%
Ⅲ期 72%

キーワード

乳癌,甲状腺癌,乳腺腫瘍,甲状腺腫瘍,副甲状腺腫瘍,副腎腫瘍,リアルタイムバーチャルソノグラフィ(RVS),超音波,乳房温存手術,センチネルリンパ節生検,腹腔鏡下副腎摘除術

医療連携について

受診を希望される方へ

かかりつけ医から地域医療連携室を通して,ご予約ください。
外来診療の混雑緩和のため,原則,外来窓口での診療予約は行いません。かかりつけ医からの「診療情報提供書」をもって地域医療連携室より予約をおとり致します。
診療情報提供書をお持ちでない患者さん・健診結果のみ持参の患者さんは,診察をお断りしております。

医療関係者の方へ

  1. 当科は医療連携を重視しております。地域連携クリニカルパスを用いて,患者さんの居住地域において連携医との連絡を取りながら定期検診や薬物療法を行っています。

関連リンク

連絡先

TEL
外線 : 0561-62-3311(代表)
内線 : 36300 30外来(8:30~17:15)