巨細胞性動脈炎

巨細胞性動脈炎

概要

巨細胞性動脈炎は,高安動脈炎と同じ大型血管炎に分類されますが,高安動脈炎が若い女性に多いのに対して,平均発症年齢約70歳と高齢者に多い特徴があります。大動脈とその分岐した動脈に炎症を起こしますが,特に側頭動脈(頭のこめかみの付近)に炎症を起こしやすく,頭痛の原因になります。発熱や,側頭動脈の肥厚・疼痛がでることがあります。顎の動脈の炎症では,顎関節の痛みや,食事で噛んでいる時に顎が疲れやすいという症状が出ます。眼動脈にも炎症を起こすことがあり,視力障害が出現すると失明の危険が高く,速やかな治療が必要です。リウマチ性多発筋痛症も同時に合併することがあり,その場合は,肩周囲や股関節周囲の筋痛症状によって,起床動作や歩行,手の挙上などが困難になります。
血液検査でCRPなどの炎症反応上昇がみられますが,特異的な項目がありません。画像検査で血管の炎症を検出できない場合には,側頭動脈の生検(手術で一部採取)が必要になります。

治療法

ステロイドが第一選択として使用されます。視力障害が出現した場合は,迅速なステロイドの投与が必要です。最初は多めの量で開始し,漸減しますが,減量の途中で再燃することが多く,プレドニンとして5mg/日以下に減量できない場合や,治療抵抗性の場合は,免疫抑制剤を併用することもあります。アザチオプリン(イムラン®),メトトレキサート(リウマトレックス®),シクロスポリン(ネオーラル®),シクロホスファミド(エンドキサン®)などが使用されます。これらの治療でもうまくいかない時は,生物学的製剤であるIL-6阻害薬のトシリズマブ(アクテムラ®)を選択します。

当院(愛知医科大学病院)の特色

血管の炎症を検出するために,造影CT(3D-CT),造影MRI,頸部血管エコー検査を行うとともに,血管の炎症の拡がりを把握するためにPET-CTが可能です。視力障害が疑われる場合は速やかに眼科と連携し,迅速な治療を開始します。治療では,トシリズマブ(アクテムラ®)を併用することで,ステロイドをなるべく減量します。リウマチ性多発筋痛症合併時は,関節エコー検査などによって病態を把握し,同時に治療を行います。