ベーチェット病

ベーチェット病

概要

主に口腔粘膜,皮膚,眼,外陰部に急性の経過で炎症性病変を繰り返す,原因不明の慢性炎症性疾患です。日本では30歳代で発症する事が多く,男女比はほぼ同等です。主症状は再発性の口内炎,外陰部潰瘍,皮膚病変,眼病変であり,発症初期に出現することが多いです。
皮膚病変としては毛嚢炎様皮疹,結節性紅斑が多く,下肢に血栓性静脈炎を認めることもあります。眼病変はぶどう膜炎が主体で,前眼部病変として虹彩毛様体炎を生じ,眼痛,霧視,羞明(光をまぶしく感じる),瞳孔不正,前房蓄膿などの症状が出現します。後眼部まで炎症が及ぶと網脈絡膜炎になり,視力低下や視野異常が出現します。副症状として関節炎,副睾丸炎,消化器病変,血管病変,中枢神経病変があります。副症状のうち消化器病変,血管病変,中枢神経病変が主の臨床症状である場合には,特殊病型として血管ベーチェット,腸管ベーチェット,神経ベーチェットと定義されます。血管病変は大中動静脈とその分枝に生じ,動脈瘤や血栓性静脈炎などが出現します。腸管病変は回盲部病変が最も多く,腹痛や下痢,下血などが出現し,時に穿孔を生じます。神経ベーチェットは,髄膜脳炎や神経巣症状を主体に発症し急速に増悪する急性型と認知症様の精神神経症状や片麻痺・小脳失調が緩徐に進行する慢性進行型があります。検査所見は白血球増加やCRP陽性,赤沈亢進などの非特異的炎症反応を認めますが,特異的なものはありません。血清IgDやIgAの上昇,HLA-B51陽性,針反応陽性が参考となります。血管病変では血管CTやMRI,腸管病変では消化管下部の造影検査や内視鏡検査,中枢神経病変では髄液検査や頭部・脊髄MRI検査が有用です。

治療法

反復する外陰部潰瘍,結節性紅斑,関節炎などに対しコルヒチン,非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)が有効です。眼病変や特殊病型に対しては,ステロイドおよび免疫抑制剤(アザチオプリン(イムラン®),シクロスポリン(ネオーラル®),シクロホスファミド(エンドキサン®),メトトレキサート(リウマトレックス®)など),生物学的製剤(インフリキシマブ(レミケード®),アダリムマブ(ヒュミラ®))を病変に応じて使用します(一部適応外使用)。