抗リン脂質抗体症候群 (APS;antiphospholipid syndrome)

抗リン脂質抗体症候群 (APS;antiphospholipid syndrome)

概要

抗リン脂質抗体症候群とは,血液中に抗リン脂質抗体を有し,血栓症を起こす疾患です。
血栓症は全身のどこでも起こりえますが,動脈系では,脳梗塞(特に若年性の脳梗塞)や一過性脳虚血発作(TIA)が圧倒的に多く,虚血性心疾患は比較的少なく,静脈系では深部静脈血栓症(DVT)が多いです。また,妊娠に関連した血栓症では,繰り返す流産,妊娠高血圧症候群を起こすことがあります。全身性エリテマトーデス(SLE)などの膠原病と合併して起こることが多くみられます。時に,劇症型抗リン脂質抗体症候群と呼ばれる,多臓器に急激に血栓症を多発する病態があり,緊急治療が必要になります。
CTやMRI,エコーで血栓症を確認し,血液検査で抗リン脂質抗体を検出する方法として,抗カルジオリピン抗体,抗カルジオリピンβ2GPI抗体,ループスアンチコアグラントの検査を行います。

治療法

抗凝固薬である,ワルファリン(ワーファリンⓇ)や,抗血小板薬である,低用量アスピリン(バイアスピリンⓇ)やクロピドグレル(ピラビックスⓇ)などを継続内服して血栓ができないように管理します。ステロイドや免疫抑制剤はこの疾患に対しては使用する事は通常ありませんが,劇症型の場合は,血漿交換療法,ステロイド大量療法,大量免疫グロブリン療法,点滴での抗凝固剤の持続点滴を組み合わせて治療します。