
最先端の低侵襲手術で縦隔腫瘍や肺癌の治療を行います
矢野 智紀 (ヤノ モトキ)
臨床腫瘍センター腫瘍外科部門部長 令和3年10月1日就任
専門領域 |
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認定医・専門医 |
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診療についての抱負
胸腺腫の低侵襲手術,剣状突起下アプローチの開発
私の専門分野は呼吸器外科全般ですが,ライフワークは縦隔腫瘍の一つである胸腺腫の治療法の確立と非喫煙患者肺癌の病態の解明および治療の確立です。胸腺腫は悪性度が癌ほど高くない腫瘍ですが,重症筋無力症などの自己免疫疾患を併発する非常に厄介な疾患です。胸腺腫の治療では長年,胸骨正中切開という前胸部の骨を切開する手術が行われてきました。しかし,患者さんの負担が大きく,また腫瘍の発見後も低悪性度の認識から手術を行うのが遅れ,自己免疫疾患を併発する症例が後を絶たず,低侵襲手術の必要性を感じていました。そこで,私は側胸部を3カ所切開する側方アプローチによる胸腔鏡手術(VATS)を早くから導入しました。胸骨を切開せずに済むため,胸骨正中切開よりも低侵襲です。その後,新たな手術方法として,腹部のみぞおちに1カ所のみの切開を行う,より低侵襲な剣状突起下アプローチを開発し,発表してきました。この方法は現在,多くの呼吸器外科医にその有用性を認識していただき,少しずつ全国に広まっています。
恩師の故正岡昭先生に憧れて呼吸器外科医を志す
私が呼吸器外科医を志したきっかけは,恩師である故正岡昭先生に対する憧れです。日本で最も有名な呼吸器外科医である正岡先生が,胸腺腫や肺癌についてのお話をされた講義を医学生のときに拝聴して感銘を受けました。特に胸腺腫を手術で取り除くと重症筋無力症が改善する,あるいは大きな肺嚢胞を除去すると肺機能が改善するといったお話を聴いて呼吸器外科医は凄いと心が動かされ,この道に進む決心をしました。私が長年取り組んできたテーマの一つである肺癌の遺伝子研究は非常に発展してきましたが,まだまだ解決していない多くの問題があります。今後はホルモン療法を非浸潤肺癌患者さんに応用し,手術までの期間を遅らせるような臨床試験を行っていきたいです。また胸腺腫に関しては,肺癌ほど研究が進んでいないため,その発症メカニズムをぜひ解明したいと思っています。
学歴・職歴等
1990年 | 名古屋市立大学医学部医学科卒業 医師免許取得 名古屋市立大学病院臨床研究医(第二外科) |
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1991年 | 第一なるみ病院 外科医員 |
1992年 | 聖隷三方原病院 呼吸器外科医員 |
1993年 | 名古屋市立城西病院 外科医員 |
1994年 | 名古屋市立大学病院 第二外科 医員および臨床研究医 |
1996年 | 外国留学(アメリカ,ワシントン大学,ResearchFellow) |
1998年 | 名古屋市立大学病院 第二外科 臨床研究医 |
1999年 | 名古屋市立大学病院 第二外科 助手 |
2000年 | 静岡済生会総合病院 呼吸器外科医員 |
2001年 | 医学博士学位取得(名古屋市立大学) 名古屋市立大学病院 第二外科 臨床研究医 |
2002年 | 名古屋市立大学病院 腫瘍・免疫外科 助手 |
2005年 | 名古屋市立大学病院 腫瘍・免疫外科 講師 |
2007年 | 名古屋市立大学病院 腫瘍・免疫外科 准教授 |
2015年 | 愛知医科大学医学部外科学講座(呼吸器外科)教授(特任) |
2021年 | 愛知医科大学病院 臨床工学部 部長 愛知医科大学病院 臨床腫瘍センター腫瘍外科部門 教授・部長 |
フォトアルバム





インタビュー
座右の銘は?
「Bloom where God has planted you.(おかれた場所で咲きなさい)」。与えられた環境で最高のパフォーマンスをする。花を咲かせられないときは開花できるまでじっくりと地に根を張っていく。そんな意味が込められたこの言葉が好きです。
患者さんへのメッセージをお願いします
呼吸器外科で扱っている疾患の中でも,胸腺腫をはじめとする縦隔腫瘍は肺癌などと比べてまだあまり知られていません。そのため,治療の地域格差や施設格差がありますから,セカンドオピニオンを受けるためでも構いませんので,躊躇せずに愛知医科大学病院に来ていただければと思います。