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ピロリ菌に感染した男性の6人に1人が85歳までに胃がんになる可能性が高いことが明らかに

2021.09.01

発表者

川合紗世,王超辰,篠壁多恵,林櫻松,奥田真珠美*,菊地正悟
(医学部公衆衛生学,兵庫医科大学小児科学*)

発表のポイント・概要

ピロリ菌に感染している人では,生まれてから85歳までに胃がんに罹る確率が男性で17.0%(約6人に1人),女性で7.7%(約13人に1人)に上る可能性が高いことが推定されました。この結果は,日本人の生年別ピロリ菌感染率とがん登録による胃がん罹患率年次推移,およびピロリ菌感染による胃がん発生リスクを複合的に解析した研究によるものです。

発表内容

公衆衛生学講座では,以前に実施したメタ解析により得られた生年ごとのピロリ菌感染率データと国立がん研究センターのがん情報サービスでWeb公開されているわが国の年齢階級別胃がん罹患年次推移データ(全国がん登録、地域がん登録事業の成果)を利用し,さらにピロリ菌感染の有無による胃がん発生リスクを仮説設定した上で複合的に解析して胃がん累積罹患リスクを算出しました。解析にはモンテカルロ法(シミュレーションを繰り返す方法)を用い,5000回試行の結果,ピロリ菌感染者では0歳から85歳までに胃がんに罹る確率が男性で17.0%,女性で7.7%であることが推計されました。一方,ピロリ菌に感染していない場合は男性で1.0%,女性で0.5%でした。

成果の意義

この研究成果は,個人がピロリ菌検査やピロリ菌除菌治療を受けるかどうかを決める場合に重要な情報となります。また,ピロリ菌が胃がんの最も大きな原因であることを利用した胃がん対策事業を行うにあたり,ピロリ菌感染コントロールと胃がん検診および治療とのコストバランスを分析する上での基本情報となります。

発表雑誌

雑誌名
International Journal of Cancer
論文タイトル
Lifetime incidence risk for gastric cancer in the Helicobacter pylori-infected and uninfected population in Japan: A Monte Carlo simulation study
著者
Sayo Kawai, Chaochen Wang, Yingsong Lin, Tae Sasakabe, Masumi Okuda, Shogo Kikuchi

International Journal of Cancer はUICC (国際対がん連合:Union for International Cancer Control)のオフィシャル・ジャーナルです。

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