学長あいさつ

学長 祖父江 元

学長 祖父江 元

愛知医科大学の所在地である長久手市は,1584年の小牧・長久手の戦いで名を残しておりますが,2005年日本国際博覧会(愛・地球博)で一躍知名度がアップしました。愛知医科大学のほか,愛知県立大学,愛知県立芸術大学,愛知淑徳大学があり,県内有数の文教地区となっています。長久手市の西半分は市街地ですが,東半分はモリコロパークを始めとする緑の景観が保存され,優れた自然環境と市街地の利便性が両立した「住みたい街」として,若い世帯の転入が続き,5年間で人口増加率が5%を超えています。

愛知医科大学は1972年に建学され,今年は創立50周年に当たります。11月3日の開学記念日を中心に,種々の記念事業を予定しております。先人のこれまでの努力に感謝し,本学の今後の発展に向けた1年になればと思います。建学の精神は「新時代の医学知識・技術を備えた教養豊かな臨床医を養成する」,「時代の要請に応じて地域社会に奉仕できる医師を養成する」,「医療をよりよく発展向上させる為の医学指導者を養成する」です。その後,大学院医学研究科,看護学部,大学院看護学研究科が設置され,現在までに,医学部卒業生は4,529名,看護学部卒業生は1,995名を数えており,有能な医療人材を輩出してきております。

愛知医科大学は,2007年からキャンパス再整備計画を進めてきました。医学部,看護学部学生の勉強スペースである「医心館」建設,立体駐車場建設,保育園建設に引き続き,2014年に中央棟(新病院棟)が開院し,2017年にバスロータリー,立石プラザ,2018年に立石池周辺道路の拡幅工事,ドクターヘリ格納庫整備など進めて参りました。更には創立50周年記念事業として,2021年4月に愛知医科大学メディカルセンター(分院)開院,2022年7月愛知医科大学眼科クリニック MiRAI開院を行い,地域医療の拠点,先進眼科診療・研究拠点の立ち上げを行っております。

医学教育においては,2019年に国際認証評価である医学教育分野別評価,2020年には大学評価を受審し,いずれも高い評価を頂いています。看護学教育についても,2023年の看護学教育分野別評価に向けて準備を,さらに博士課程開設に向けた準備を進めているところです。医学・看護学教育の実技実践教育としてシミュレーションセンターは大変重要な意味を持ちますが,スペースを約2倍に拡張して,チーム医療にも資するものとしています。また,診療能力評価のためのOSCEの評価・実習体制の整備も完了し,これらはいずれも次世代の医学・看護学教育をめざすものであり,全国的にも高い水準の施設となっています。医師国家試験の新卒合格率は,94.1%(2021年度),看護師国家試験の新卒合格率は100%(2021年度)であり,大変高い合格率を誇っております。

2019年度からの新型コロナウイルス感染症に対しても万全の対応を行ってきました。日々の行動指針策定,体調管理,リモート講義,実習の対応,更にワクチンの接種,生活や修学環境の整備支援など細かな対策・支援を行ってきております。このような対応が高い国家試験合格率にもつながっていると考えております。

また,研究創出支援センターでは,研究支援部門,共同実験部門,バイオバンク部門が充実してきており,特にバイオバンクは,AMED(国立研究開発法人日本医療研究開発機構)のバイオバンクリストに,私立医科大学としては最初に登録され,がん組織,患者血液を中心として検体の蓄積が進んでいます。更に,文部科学省の私立大学ブランディング研究事業,私立大学等改革総合支援事業にも採択されており,特色ある研究が進んでいます。大学附置の加齢医科学研究所では6,000例を超えるブレインバンクが構築されており,これは脳研究の世界的な研究基盤ともなっています。また,今年1月からは日本造血細胞移植データセンターを学内に設置しました。ここでは全国350施設からの白血病を中心に患者データを集積・解析しています。

診療では,地域がん診療連携拠点病院及びがんゲノム医療連携病院に指定されており,院内にがんセンター及びゲノム医療センターを設置しております。手術件数は年間13,000件を上回っており,ドクターヘリも活躍しています。この地域の中核病院として益々充実してきています。新任教授を中心に診療体制の充実を図っています。脳神経外科では,血管内治療,脊椎脊髄外科治療,神経内視鏡治療では全国でも有数の体制を整えています。また,痛みセンター,睡眠医療センターは,全国的にも治療に直結するユニークな試みを展開しています。昨年度から愛知医科大学メディカルセンター(分院,270床)を開院しました。これは,地域の中核病院として地域医療密着型の病院として発展しています。

これらの先進化した教育,研究,診療リソースを最大限に活用して,医学部・看護学部の学部生,大学院生は充実した学習・実習を進めることができます。ちなみにTHE世界大学ランキング2022日本版では,教育リソース部門で我国のすべての大学中第12位(昨年14位,一昨年17位)となっています。

更に,県内の救急災害医療の拠点病院として,災害医療研究センターを設置し,災害医療研究や教育,災害医療の啓発活動に積極的に取り組み,南海トラフ大地震に備える役割を果たせるように努めております。また,新型コロナウイルス感染症の重点医療機関にも指定されております。

愛知医科大学は,21世紀における新しい医療の在り方を提示する為,教育・研究・診療の全てにおいて,効率化を実践し,成果を上げてまいります。

プロフィール

略歴

1975年3月 名古屋大学医学部 卒業
1981年3月 名古屋大学大学院医学研究科 修了(医学博士)
1995年4月~2000年3月 名古屋大学医学部神経内科教授
2000年4月~2015年3月 名古屋大学大学院医学研究科神経内科教授
「医学研究科」は,平成14年4月の組織改編により「医学系研究科」に名称変更。
2001年11月~2007年3月 名古屋大学総長補佐(鶴舞地区)
2007年4月~2009年3月 名古屋大学大学院医学系研究科副研究科長
2009年4月~2012年3月 名古屋大学大学院医学系研究科長・医学部長
2015年4月~2021年3月 名古屋大学大学院医学系研究科神経変性・認知症制御研究部特任教授
2018年1月~2019年1月 学校法人愛知医科大学副理事長
2019年1月~現在 学校法人愛知医科大学理事長
2020年4月~ 愛知医科大学学長

所属学会

1996年5月~ 日本神経学会理事
2003年1月~ 日本老年医学会代議員
2004年10月~ 日本自律神経学会理事
2006年7月~ 日本神経治療学会理事

受賞

2005年 時実利彦記念賞
2007年 中日文化賞
2018年 武田医学賞
2020年 文部科学大臣表彰(科学技術分野)