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クリティカルケア看護学・阿部恵子教授が発表した論文が BMC Medical Educationに掲載

2018.10.04

看護学部クリティカルケア看護学の阿部恵子教授が発表した論文「Associations between emotional intelligence, empathy and personality in Japanese medical students.」がBMC Medical Educationに掲載されました。
この論文は,入学時の医学生を対象に,自己のコミュニケーション能力を評価するためのアンケートを依頼し,コミュニケーション能力調査の横断研究をしたものです。
医師にとって,「共感的なコミュニケーション」は患者との信頼関係を構築し,治療効果や満足度を高めるために重要です。そこで阿部教授は,医学生の情動能力(Emotional Intelligence:EI)※1や共感能力(Empathy),そして性格特性(personality, Big Five)をアンケート調査し,性格特性と情動能力,共感能力との関係や性差の違いについて探索されました。
先行研究ではこれまで,医学生の情動能力や共感能力は,男性より女性の方が高く,性差の影響が大きいと言われていました。また,5大性格特性の内,A(Agreeableness 調和性),C(Conscientiousness 誠実性)が高いほど医療者に適していると報告されていましたが,今回の研究結果から,情動能力に影響を与える要因は性別より,性格特性の方が強く,中でもN(Neuroticism 神経症傾向)が情動能力に強い負の影響を与えていることが明らかになりました。
その結果,神経症傾向にある学生に対して,適切なコミュニケーション教育を実施し,その傾向を軽減させることで,情動能力を高める可能性があることが示唆されました。
今後の展望として,EIは学習可能と言われているため,医学生の性格特性を理解した上で,神経症傾向の学生に適正なコミュニケーション教育を提供し,その改善を図ることが必要であると考えられます。

研究内容

日本における1年次の医学生357名の情動能力(TEIQue-SF),共感能力(JSPE)及び性格特性(NEO-FFI)を3種類の自記式調査票を用いて評価し,それぞれの関係及び情動能力に影響を与える要因について検討した。その結果,女性の方が情動能力,共感能力において有意に高かった。また,医学生の神経症傾向は,情動能力と強い負の相関があった。しかし,重回帰分析の結果,性差は情動能力,共感能力に対する影響は低く,むしろ性格特性が影響を与えていることが明らかになった。特に,神経症傾向は,情動能力に強い負の影響を与える重要な因子であるという知見を得た。

※1「EI(感情能力)」は,対人関係において,他者の感情や自分の感情を認識し,感情をコントロールして円滑なコミュニケーションを図る能力と言われています。「IQ」が知能指数であるのに対して,「EQ/EU」は社会で成功するために必要な感情管理とコミュニケーション能力を表す情動指数と言われています。