3つのポリシー

卒業認定・学位授与の方針(ディプロマ・ポリシー)

本学医学部では,建学の精神に基づき,新時代の医学知識と技術を身につけて科学的・倫理的判断能力および情緒と品格を兼ね備えた教養豊かな人間性を培い,地域社会に奉仕できる医師の養成を目指します。カリキュラム・ポリシーに沿ったカリキュラムを履修し,卒業時能力達成基準(コンピテンス,コンピテンシー)に定める項目を身につけた学生に卒業を認定し,学士(医学)の学位を授与します。

卒業時に修得しておくべき臨床能力(コンピテンス,コンピテンシー)

本学医学部では,次のとおり学生が卒業時に修得すべき主要な能力を5つのコンピテンスとして設定し,各コンピテンスにはそれぞれ具体的な到達目標がコンピテンシー(観察可能な能力)として47項目を設定しています。

プロフェッショナリズム

医師としての価値観・態度・姿勢
  1. 高潔,誠実,正直,共感の態度を保ち,それらを示すことができる(人間性)。
  2. 他者の多様な価値観を尊重できる(価値観の尊重)。
  3. 自分の利益よりも患者・家族・住民・社会の利益を優先的に考え,その利益を達成するために可能な限り努力できる(利他主義)。
  4. 倫理原則,法律に基づいて行動できる(倫理的・法的理解)。
  5. 患者と家族の心理・社会的背景を理解し,全人的に対応できる(全人的対応)。
  6. 自分の行為と決断を振り返り,次の行為と決断に活かすことができる(省察的実践)。
生涯学習・自己啓発・自己管理
  1. 自己の目標を設定し,目標達成のための方法を見いだし,それを実行できる。
  2. 適切に自己評価をし,能力の向上のために,自己学習を自律的に継続できる。
  3. 自らの知識や技能を多職種で共有し,それを後進に伝え,後進を育成できる。
  4. 精神面,身体面で自己管理に努めることができる。
チーム医療・医療安全
  1. 医療チームの一員として協働し,効果的な役割を果たすことができる。
  2. 他の職種の考えや役割を理解,尊重し,多職種協働を実践できる。
  3. 患者,家族,住民を医療チームの一員として考え,協働できる。
  4. 安全な医療を提供するための基本原則を理解し,実践できる。
  5. 常に医療の質を改善することを考え,質改善を実践できる。

コミュニケーション

  1. 患者・家族・医療チームメンバー・住民・社会と良好な関係を構築できる。
  2. 患者・家族・医療チームメンバー・住民・社会の心理・生活・文化的背景を適切に把握するための,支持的・共感的なコミュニケーションをとることができる。
  3. 効果的な協働のために,相手に応じて適切な方法で情報の収集・集約・伝達を行うことができる。
  4. 患者,家族と情報に基づいた意思決定の共有(インフォームド・シェアード・ディシジョン・メイキング)ができる。
  5. 個人とだけでなく,集団,社会との適切なコミュニケーションをとることができる。
  6. 様々なICT(Information and Communication Technology)を適切に選択し,活用できる。

医学知識と科学的探究心

  1. 医学的発見の基礎となる科学的理論と方法論を説明できる。
  2. 生体の正常な構造や機能,および発生,発達,加齢,死を生命科学的知識により説明できる。
  3. 疾病の病因・病態・治療につながる基礎医学的な要素を説明できる。
  4. 疾患の病態と症候を説明でき,その鑑別と診断を計画できる。
  5. 疾患の適切な治療,最新の治療を理解し説明できる。
  6. 人の健康行動につながる生物学的・心理学・社会的要因を理解し,健康増進の方法を説明できる。
  7. 疾病・障害・健康問題と社会との関係を説明できる。
  8. 医学・医療と社会との関連,社会の医療問題を説明できる。
  9. 新しい医学・医療情報を探索し,医学・医療における疑問点を見出し解決しようと努力できる。
  10. 医学,医療における客観的根拠を適切に探索し,EBMを実践できる。

診療技能

  1. 心理・社会的状況を含め患者の病歴を正確に聴取できる。
  2. 身体診察と基本的臨床手技を適切に実施できる。
  3. 診療録をSOAP形式で,客観的,かつ簡潔に記載し,プロブレムリスト,鑑別診断を作成できる。
  4. 適切な検査を選択し,結果を正しく解釈できる。
  5. 時,相手・場所に応じた適切なプレゼンテーションができる。
  6. 患者と家族に対し,エビデンスに基づいて,適切に治療法・予後を説明できる。
  7. 感染管理を考慮した診療ができる。
  8. プライマリ・ケア領域の救急対応ができる。
  9. 慢性疾患・高齢者・緩和・予防・健康増進・リハビリテーション,介護/ケアの視点から患者ケアの実践ができる。

地域社会へ貢献

  1. 地域社会における疾病予防,健康の維持・増進のための医師の役割を説明できる。
  2. 地域の医療状況,社会経済的状況を含めた特殊性や課題について説明できる。
  3. 医療計画,地域医療構想について説明できる。
  4. 住民啓発活動や一次医療の診療補助により地域医療に参加ができる。
  5. 社会保障制度を理解し,地域包括ケアの実践に参加できる。
  6. 災害における被災者や,社会的弱者の現状について理解し,医療に関わるボランティア活動に参加できる。
  7. 国際社会の健康問題を把握,説明することができ,可能な範囲でその問題に対処できる。

教育課程編成・実施の方針(カリキュラム・ポリシー)

医師に求められる知識・技能・態度を,段階的,スムーズに修得できるように講義および医療実習・臨床実習を1学年次から6学年次まで継続的,かつ,らせん状の学修方法にて積み重ねていきます。
学修内容が真の効果的な学びとなるように講義は単なる一方向性の座学ではなく,教員との双方向性のやりとり,学生間の意見交換・議論などのアクティブ・ラーニングを6年間通して行います。また,6年間継続する医療実習および臨床実習では,常に,事前学習,実地体験,体験の振り返りのまとめとプレゼンテーションを行い,経験からの学びを深め,確実にそれらを身につけられるようにします。
これらによって修得された学びは,医学的知識を評価する試験だけではなく,シミュレーションを使った技能の評価,振り返り記述や多職種を含めた多方面からの態度評価など,多面的・複合的な方法によって学修成果の達成度を明らかにします。

  • 1~4学年次まで継続的にプロフェッショナリズム科目(多職種連携教育IPEを含む)を開講して,良き医療人としての在り方・資質について考え,目標を保ち続けるようにしている。さらに行動科学も,プロフェッショナリズム教育と連携し継続して行う。人間の行動をまず科学として捉え,さらに社会の中で患者・住民に寄り添う関係を考え,健康問題など予防医学的観点へ繋がる学修を目指す。
  • 臨床の現場における学びを入学後早期から継続的に行うため,1学年次で「早期体験実習」,2学年次で「地域社会医学実習」,「チーム医療実習」,「外来案内実習」,3学年次で「地域包括ケア実習」,4学年次で「地域医療早期体験実習」を実施し,その後,4~6学年次でクリニカル・クラークシップ(診療参加型臨床実習)を実施する。様々な実習およびクリニカル・クラークシップでは,医学知識のみならず医師としての人間性を涵養する。(1~6学年次までの継続的な学び)
  • 1学年次には,医学の基礎となる知識と概念を得るために医学に沿った自然科学科目とリベラルアーツを開講し,さらに「アカデミックリテラシー」によるICT(Information and Communication Technology)やアクティブ・ラーニングから自学自習の習慣をつける。
  • 1学年次から解剖学,生化学および生理学を開講し,早期から基礎医学領域の学びを開始することで,医学への関心を刺激し学修意欲を高める。
  • 1学年次に行う「早期体験実習」では,プロフェッショナリズムの一環として,目指すべき医療人,医療のあり方を理解するようにする。
  • 2学年次後学期までに「解剖学」,「発生学」,「生理学」,「生化学」,「薬理学」,「病理学」,「免疫・寄生虫学」および「微生物学」等の基礎医学の講義,実習を実施し,臨床医学のための基礎を早期に築き上げることを目指す。
  • 2学年次で行う「地域社会医学実習」,「チーム医療実習」および「外来案内実習」では,社会的存在としての患者,患者をケアする医療チームのあり方を体験する。
  • 3学年次にEBM(Evidence-Based Medicine)と併せて社会医学科目である「公衆衛生学」,「衛生学」,「法医学」を実施し,患者を一人の人間,また社会の中で生活する住民として広い視野から理解できるように講義と地域の様々な施設・機関での実習を連動させる。
  • 3学年次で行う「地域包括ケア実習」では,超高齢社会での医療供給体制と社会に対する医療の責任についての理解を深める。
  • 3学年次に「基礎医学セミナー」を開講し,科学的探求心を涵養する。
  • 3学年次からは,臨床医学総論として症候学,診断学および検査学を学んだうえで,各科目を集中的に学修する臨床講義を実施する。また,医療安全の授業を実施し,医療の実践に必要な知識・技能を学ぶ。講義の最終日には科目毎に知識の定着を評価し,このことで継続的な自主学修も促す。
  • 4学年次には,医療と倫理の授業が行われる。
  • 4学年次前学期で臨床講義は終了し,前期終了時にCBT(Computer-Based Testing)を実施し,クリニカル・クラークシップに参加できる医学知識が身についているかどうかを総括的に評価する。
  • CBT後には,クリニカル・クラークシップに臨むための診断学,臨床・診断推論の知識,技能の修得のため,「臨床実習入門」を講義および演習・実習にて実施する。
  • 臨床実習入門後には,実際の診療のための手技を修得する基本手技・医療面接実習を実施し,この実習の総括的な評価をOSCE(Objective Structured Clinical Examination:客観的臨床能力試験)にて実施する。これに合格した学生のみがクリニカル・クラークシップに参加することができる。
  • クリニカル・クラークシップ前に,地域医療早期体験実習を行う。地域社会の中における医療の理解をさらに深め,4学年次後学期からのクリニカル・クラークシップにて常に地域社会を意識できるようにする。
  • 4学年次後学期から計72週のクリニカル・クラークシップを行う。クリニカル・クラークシップは,必修診療科ローテーションと選択診療科ローテーションの組み合わせにて実施する。大学病院の他,教育協力病院など地域医療機関での実習で多様な体験をし,大学病院と地域医療機関との連携についても理解しコモンディジーズを診るプライマリ・ケアから高度先進医療まで幅広い診療技能を修得する。
  • クリニカル・クラークシップ期間中には,総合試験を実施し,クリニカル・クラークシップで修得した医学知識の評価を行う。
  • クリニカル・クラークシップの診療技能評価は,Post-CC OSCE にて実施し,本学独自の技能課題も取り入れる。
  • 6学年次後学期に総合試験を実施し,6年間の医学知識の総括的評価を行う。クリニカル・クラークシップの評価,Post-CC OSCE および総合試験の全てに合格することによって,本学医学部を卒業する資格を得ることができる。

入学者受入れの方針(アドミッション・ポリシー)

本学医学部のカリキュラムを修得し,卒業時に求められる能力を身につけることができる者として,次の能力を持つ者を求めています。

求める学生像

  1. 医学への強い志向と学習意欲を持つ人
  2. 医学を学ぶために必要な基礎学力と問題解決能力を備えた人
  3. 人間性と教養が豊かで,倫理的価値判断に優れた人
  4. 協調性を持ちコミュニケーション能力に富んだ人
  5. 誠実で常に努力を怠らない人

本学医学部が求める学生を受入れるための入学者選抜は,次の方針により実施します。

  1. 医学部の学生として相応しい基礎的学力の到達度を確認するため,理科・数学・英語の筆記試験を実施します。
  2. 医師として求められる倫理的価値判断,感性,コミュニケーション能力などを判断するため,面接試験および小論文試験を実施します。

本学医学部の学生は,医師国家試験の合格という大きな目標の達成だけでなく,医師に相応しい教養や感性(情緒と品格)を持つことが求められます。入学者の選抜においては,基礎的学力のみでなく,思考力・表現力・学ぶ意欲・コミュニケーション能力なども重視します。また多様な学生の受入れのため,一般入学試験のほかに国際バカロレア入学試験など多様な入学者選抜を実施します。