消化管内科

2001年4月に旧内科学第1講座から旧内科学第4講座の中にそれぞれ個別に存在していた消化器グループを統合し内科学講座(消化器内科)が発足し各務伸一が教授に就任した。2007年3月に各務教授が定年退職した後,消化器内科を消化管分野と肝胆膵分野に分けることとなり,2007年9月に消化管分野の教授として春日井邦夫が就任した。その後,両分野のますますの専門化や専門医制度の変更などに伴い2015年4月に消化器内科を消化管内科と肝胆膵内科に改編し教授は春日井が務め現在に至っている。
当科では消化管疾患全般にわたり高度で専門的な診療と臨床研究を積極的に推進するとともに,教室員一丸となってシームレスな卒前・卒後教育を積極的に行なっている。特に,消化管内視鏡診療(検査・治療)は消化管内科の診療の中で大部分を占めており,件数は年々増加の一途をたどっている。最新の設備を備えた内視鏡センターで先進的な内視鏡診療を行うとともに,新技術の研究・開発も行なっている。近年はAIを活用した内視鏡画像による先進的な医用イメージング技術の確立に関する研究や消化器がんに対する内視鏡診断の研究も推進している。また,消化管領域の基礎研究はもとよりランダム化比較試験,ビッグデータによる実態調査,多施設共同研究などにも取り組んでいる。
当教室では従来から積極的に若手医師を採用し育成を行ってきた。さらに,女性医師の登用・活用や今後の働き方改革を見据えた労働環境の整備にも着手している。

教育方針

大学・大学病院の最も重要な使命である医学教育は卒前教育,初期臨床研修教育,専門医教育,そして生涯教育へとシームレスにつながるもので,各自の状況に応じた適切な教育体制の構築が必要です。当講座では消化管を中心とした消化器疾患のみならず,全身のトータルケアが可能な高い専門性と幅広い総合力を兼ね備えた医師を育成し地域社会に貢献することを目標に,スタッフ全員が高い意識のもと情熱を傾けて教育を行なっております。
学生教育では,消化管領域の系統講義や総合医学などで,基本的知識のみならず臨床現場で必要とされる思考力等の習得を目標として,積極的にアクティブラーニングを取り入れています。臨床実習では指導医を中心としたチームにスタッフの一員として参加することで,患者中心の医療や良好な人間関係の構築を学び,自発的な課題探求・問題解決能力を育成することを心がけています。研修医教育では,救急現場などでの消化器疾患の対応を中心に,病棟管理や消化器系検査の習得を目標にチームでの指導に取り組んでいます。専攻医には内科各領域の知識や経験を重ねつつ,消化器内科医として独立して診療が可能なレベルを目指して指導を行なっています。さらに,大学人としての学際的な思考や取り組みを促進し大学院での研究に繋げてゆきます。大学院では臨床を行いながら,独創的で臨床に役立つような研究を立案し遂行できるように指導を行っており,現在まで大学院生は全員修了時に医学博士を取得しています。その後は指導医として後進の育成に尽力するとともに,自身の専門領域を探究・発展させ,全国あるいは世界にむけて情報発信し国際舞台で活躍できることを目標としています。
このように当講座では多くのスタッフによる屋根瓦式の教育体制が確立しており,毎年多くの若手医師が入局することで,臨床・教育・研究に高いアクティビティを発揮しております。

活動・研究内容

基礎的研究


1)大腸癌における上皮細胞増殖因子および新規分子標的遺伝子の機能解析
大腸癌発生の転写制御因子機構について研究しています。潰瘍性大腸炎患者の大腸粘膜組織においてTNF-a-NTFならびにADAM17は大腸上皮細胞に発現しており,潰瘍性大腸炎における炎症抑制に関するメカニズムについて明らかにしました。
2)消化管運動機能検査と病態についての研究
消化管運動機能検査と病態及び病理組織学的特徴について研究しています。食道運動機能,大腸運動機能,肛門機能など各々の機能異常に起因する疾患に対して各種消化管運動機能検査や心理検査を通して病態の解明に貢献しています。
3)炎症性腸疾患における血清由来タンパク質についての研究
炎症性腸疾患の発症や重症度と関連する血清由来タンパク質(SHAP)とヒアルロン酸との複合体について研究しています。病理学的にSHAPが炎症性腸疾患と関連すること,また血中SHAPが潰瘍性大腸炎の重症度と相関することを明らかにしました。

臨床的研究


1)内視鏡操作法
内視鏡的手術の効率的な術法について研究しています。ポリペクトミースネアの外筒を利用した糸付きクリップ法による内視鏡的粘膜下層切開剥離術を開発しました。MLTDという3つのループのある道具を用いた内視鏡手術に関する前向き試験を行っています。また外科と合同での非穿孔式内視鏡的胃壁内反切除術における安全な術法について検討しています。
2)Gastric non-Helicobacter pylori Helicobacter(NHPH)感染症
NHPH感染症の同定検査,薬剤感受性について研究しています。Helicobacter菌種に特異的なプライマーを用いた感染検査,菌株のゲノム解析による感染菌種とそれらの病原遺伝子の同定,収集菌株の薬剤感受性試験,マウスを用いた感染実験,抗ペプチド抗体を用いた免疫組織化学と便中菌体の検出検査の有用性を検討しています。
3)潰瘍性大腸炎の内視鏡所見とバイオマーカー
潰瘍性大腸炎の内視鏡スコアとバイオマーカーの関連について研究しています。潰瘍性大腸炎の内視鏡スコアとしてulcerative colitis endoscopic index of severity(UCEIS)やMayo endoscopic subscoreを用い,各種炎症関連マーカーと内視鏡スコアおよび組織学的炎症スコアと臨床的再燃や薬剤効果との関連について検討しています。
4)機能性ディスペプシア症状を伴う難治性GERD患者に対する消化管運動改善薬の有用性の研究
機能性ディスペプシア症状を伴うPPI抵抗性NERD患者の上腹部症状に対し,無作為化二重盲検プラセボ対照クロスオーバー比較試験にて,アコチアミド追加投与による効果について検討をおこないました。アコチアミドの併用投与により,軽微な食道運動障害患者は一次蠕動運動と食道下部括約筋の向上効果と上腹部症状の改善効果を明らかにしました。
5)酸分泌抑制薬抵抗性GERD患者の病態解明と治療法の確立
酸分泌抵抗性GERD患者の病態解明は,24時間食道内インピーダンス・pHモニタリング検査による胃食道逆流動態とHigh resolution manometry による食道運動機能の評価をおこなっています。病態にそって個別化し,それぞれの確立した治療のストラテジーの研究をおこなっています。
6)便秘患者におけるインターネットサーベイを使用した機能性消化管障害の解析
便秘を訴える人にインターネットサーベイを行い過敏性腸症候群便秘型と機能性便秘症の相違点を解析し,人口構成比に基づく2疾患の有病率を明らかにしました。過敏性腸症候群は有意に症状が強く生活の質が阻害されており,食習慣や薬剤選択に気を配っていることが判明しました。今後も過敏性腸症候群の病態解明に結び付く研究を行いたいと考えています。
7)便秘患者におけるインターネットサーベイを使用した睡眠の質の解析
便秘症状がある人のインターネットサーベイを用いた検証で,睡眠障害を訴える人は有意にQOLその他の生活習慣指標が悪く,睡眠障害のない人は有意に良い便性状の排便(すっきり排便)であることが判明しました。睡眠の質と腸機能不良の結果である便秘症を分類し適切な治療戦略に寄与する研究を行っています。


スタッフ紹介

研究業績については,研究者データベースをご覧ください。

氏名 職名 専門分野
春日井 邦夫 教授 消化器病学
佐々木 誠人 教授(特任) 消化器病学
小笠原 尚高 教授(特任) 消化器病学
舟木 康 教授(特任)(メディカルセンター) 消化器病学
海老 正秀 准教授 消化器病学
山本 さゆり 講師 消化器病学
井澤 晋也 講師 消化器病学
田村 泰弘 講師 消化器病学
山口 純治 助教 消化器病学
足立 和規 助教 消化器病学
吉峰 崇 助教(メディカルセンター) 消化器病学
杉山 智哉 助教 消化器病学
山本 和弘 助教 消化器病学
越野 顕 助教(医員助教) 消化器病学
小野 聡 助教(医員助教) 消化器病学
加藤 駿介 助教(医員助教) 消化器病学
高山 将旭 助教(医員助教) 消化器病学
吉峰 尚子 助教(医員助教) 消化器病学
杉村 明佳音 助教(医員助教) 消化器病学
加藤 綾 助教(医員助教) 消化器病学
田代 崇 助教(医員助教) 消化器病学
加藤 真子 助教(医員助教) 消化器病学
榊原 裕行 助教(医員助教) 消化器病学
東 美佳 助教(専修医) 消化器病学
伊藤 千晴 助教(専修医) 消化器病学
大島 みど梨 助教(専修医) 消化器病学
三輪 峻大 助教(専修医) 消化器病学
安藤 慧 助教(専修医) 消化器病学
飯田 將博 助教(専修医) 消化器病学
大鹿 美由 助教(専修医) 消化器病学
小林 大記 助教(専修医) 消化器病学
南谷 真理弥 助教(専修医) 消化器病学
市田山 宝 助教(専修医) 消化器病学
野村 朗弘 助教(専修医) 消化器病学

研究テーマ

氏名 研究テーマ
春日井 邦夫
  • 機能性消化管疾患の病態解析
  • 消化管腫瘍の内視鏡診断と治療
  • 慢性便秘症の診断と治療
  • AIによる内視鏡診断支援技術の開発
佐々木 誠人
  • 炎症性腸疾患の病態・診断・治療
  • 消化管粘膜障害の分子生物学的病態解明および新規診断法に確立
  • 消化吸収制御による疾病予防
小笠原 尚高
  • 消化管腫瘍の内視鏡的治療
  • 消化器腫瘍の化学療法
  • 消化管GISTの診断治療
  • 消化器癌細胞増殖機構における転写制御因子の機能解析
  • 消化器系腫瘍における細胞形質発現の解析
舟木 康
  • 難治性胃食道逆流症の病態解析に基づいた治療法の確立
  • 食道運動障害の病態診断と治療
  • 機能性排便障害の病態解析
海老 正秀
  • 消化管癌の内視鏡診断および内視鏡手術
  • 胃粘膜下腫瘍に対する内科外科合同手術
  • 消化管癌の化学療法
  • A型胃炎の診断および病態の解明
  • 消化器内視鏡治療に伴う偶発症予防
  • 消化器内視鏡診療における患者の苦痛緩和
山本 さゆり
  • 過敏性腸症候群の病態解明及び心身医学的治療
  • 慢性便秘症,機能性便秘症の診断と治療
  • 睡眠障害と便通異常との関連性
井澤 晋也
  • 消化管内視鏡治療
  • 消化器病病態診断学
田村 泰弘
  • 消化管病の診断と治療
山口 純治
  • 炎症性腸疾患の病態・診断・治療
  • 消化器病の診断と治療
足立 和規
  • 消化器病の診断と治療
吉峰 崇
  • 消化器病の診断と治療
杉山 智哉
  • 炎症性腸疾患の病態・診断・治療
  • 消化器病の診断と治療
山本 和弘
  • 消化器病の診断と治療
長尾 一寛
  • 消化器病の診断と治療
越野 顕
  • 消化器病の診断と治療
小野 聡
  • 消化器病の診断と治療
加藤 駿介
  • 消化器病の診断と治療
高山 将旭
  • 消化器病の診断と治療
吉峰 尚子
  • 消化器病の診断と治療
杉村 明佳音
  • 消化器病の診断と治療
加藤 綾
  • 消化器病の診断と治療
田代 崇
  • 消化器病の診断と治療
加藤 真子
  • 消化器病の診断と治療
榊原 裕行
  • 消化器病の診断と治療
東 美佳
  • 消化器病の診断と治療
伊藤 千晴
  • 消化器病の診断と治療
大島 みど梨
  • 消化器病の診断と治療
三輪 峻大
  • 消化器病の診断と治療
安藤 慧
  • 消化器病の診断と治療
飯田 將博
  • 消化器病の診断と治療
大鹿 美由
  • 消化器病の診断と治療
小林 大記
  • 消化器病の診断と治療
南谷 真理弥
  • 消化器病の診断と治療
市田山 宝
  • 消化器病の診断と治療
野村 朗弘
  • 消化器病の診断と治療

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関連リンク

連絡先

TEL
外線 : 0561-62-3311(代表) 愛知医科大学医学部 消化管内科
内線 : 23480