お知らせ

本学医学部学生が『骨学のすゝめ』を上梓

ニュース

2020.03.13

この度,本学医学部Medical Science Clubの学生が解剖学の教科書『骨学のすゝめ』を上梓しましたので,ご紹介します。
本書は,解剖学講座の教員と医学部学生がONE TEAMとなって築き上げた“能動学習のための道標(みちしるべ)”です。近年の臨床実習ではclinical clerkshipが重視され,学生は医療チームの一員として診療に参加します。同様に本書のプロジェクトは,当初から学生の視点を取り入れてきました。基礎医学から臨床医学,臨床実習へと進むにつれて,その時々の視点で解剖学を振り返りながらアイデアを持ち寄り,教員指導の下,学生も自ら筆を執りました。
Medical Science Club部長の蓬莱春日さん(2019年卒業)をリーダーとして,山田崇義さん(2020年卒業),古屋佑夏さん,中山幹都さん,花林卓哉さん,關栄茂さん(現5学年次生)が,5年の歳月をかけて纏め上げました。その間,「学生による医学教育改革に向けた提言」を主題に本書のプロジェクトについて学会発表を行い,2016年春の第121回日本解剖学会全国学術集会(福島県立医科大学)において学生セッション優秀発表賞,翌年春の第122回日本解剖学会全国学術集会(長崎大学)では献体協会賞トラベルアワードを受賞しました。また,本書の図の一部は鰐淵空さん(現2学年次生)が描いています。
『骨学のすゝめ』の前書き「本書に込める私たち学生の想い-医学のすべては骨学から始まる-」を転載します。

解剖学講座・教授 中野 隆




本書に込める私たち学生の想い
-医学のすべては骨学から始まる-

皆さんは今,どのような思いで本書を手に取っているのでしょうか。私たちは本書を読み返すたびに,医学を学び始めた頃の思いに胸が熱くなります。私たちも皆さんと同じように,いよいよ医学のスタートラインに立ったことに胸躍らせたものです。
解剖学,とくに骨学は,医療の道に進む全ての人が最初に学ぶ分野です。記号や方角を知らないと地図を読めないように,解剖学が判っていないと臨床医学の世界で道に迷ってしまいます。その学習過程において,最も貴重な場が骨学実習です。かつて私たちは,初めて真骨に触れてはその質感に感銘を受け,骨同士を組み合わせてはその巧緻な仕組みに驚嘆しました。
近年,医学は飛躍的に進歩しており,私たちが身に付けるべき知識は日々増え続けています。しかし,医学教育は臨床実習重視へと改革が進み,基礎医学に充てられる時間は減少傾向にあります。このため,多くの学生が膨大な解剖学用語の暗記に終始し,解剖学の機能的および臨床的意義を軽視しがちです。
どこが初学者にとって理解しにくい部分か,何が臨床医学において重要な部分かは,臨床医学を学んだばかりの私たち医学生だからこそ判ることです。私たち医学生の視点を生かすことで,医学のスタートラインに立った皆さんを導く教科書を作ることができるのではないかと考えました。そこで,骨学を学ぶ上で重要な3つの柱を掲げ,本書を作成しました。
①頭,頸,結節など共通の部位名を押さえ,各論に結び付ける「総論」。
②実際に骨に触れ,骨を組み合わせて,機能的意義を理解させる「MISSION」。
③骨の形態や関節の機能から骨折や脱臼のメカニズムを考え,臨床的意義の理解へと発展させる「臨床問題を考えよう」。
これら3つの柱により,限られた学習時間の中で能動的に骨学を学び,その知識を臨床医学の理解へ繋げることが出来るのではないか,と考えています。換言すれば,知識を「知っている」から「使える」へと発展させ,私たちが得た感動を共有できることを祈っております。
幸いにも私たちは,中野隆教授を始めとする愛知医科大学医学部解剖学講座からの多大なご支援,ご指導があり,本書の作成に携わることが出来ました。末筆になりますが,この場を借りて御礼申し上げます。

2020年1月吉日


愛知医科大学医学部Medical Science Club                             

蓬莱春日,古屋佑夏,中山幹都,花林卓哉,關 栄茂,山田崇義

左から花林さん,鰐淵さん,古屋さん,中野教授,山田さん,中山さん,關さん

左から山田さん,蓬莱さん