感染・免疫学講座

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エンドトキシンショックの新規治療法の開発

感染・免疫学講座 横地高志

p_ii_01   エンドトキシンショック、敗血症ショックは我が国で年間数万人が罹患し、一万人以上が命を落とす致命率30%以上という難治の疾患です。エンドトキシンショックの治療法の開発は、医療上今なお解決されるべき重要な課題です。
 細菌毒素であるエンドトキシンはグラム陰性菌の外膜に存在するリポ多糖体(LPS)であり、その受容体であるtoll-like receptor (TLR) 4です。エンドトキシンはマクロファージなどのTLR4に結合し、細胞内シグナル伝達経路を活性化し、炎症性サイトカイン、フリーラジカルなど多様な炎症性メディエーターを誘導し、細胞傷害、組織傷害を引き起こします。さらに、全身性反応性症候群(SIRS)、全身性血管内凝固(DIC)を導き、多臓器不全(MOF)へと進みます。これがエンドトキシンショックの病態です。

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 我々のグループは、エンドトキシンの菌体からの遊離、遊離エンドトキシンの血中動態、標的細胞への結合、細胞内シグナル伝達、各種炎症性メディエーターの産生メカニズム、細胞傷害、組織傷害という一連の過程を研究対象として様々なエンドトキシンショックの治療法を検討してきました。

今回、この戦略事業では、次の点に絞って解析したいと考えています。

  1. ヒトエンドトキシンショックに近い実験モデルの開発
  2. 特に、肺傷害を伴ったエンドトキシンショックの実験モデルの解析
  3. 実験モデルを用いたエ病態の解析および治療法の開発
  4. がん関連遺伝子群によるエンドトキシン誘発炎症反応の制御
  5. 細胞内シグナル阻害薬を応用した治療薬の開発
  6. 抗酸化物質や抗ガン剤によるエンドトキシンショックの制御
  7. エンドトキシンによる細胞活性化を利用した細胞死阻止作用

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成果

  1. αガラクトシルセラミドを用いて、ヒト敗血症ショックに極めて近い肺傷害を伴ったマウスエンドトキシンショックモデルを開発し、その病態解析を行い、その病態を明らかにしてきました。現在、その実験モデルを用いて、新たな治療法を開発中です。
  2. がん関連遺伝子RIZ1、Seladin-1、ASAP1がエンドトキシンの炎症反応を制御していることを見出している。治療法への応用が期待されている。
  3. エンドトキシン刺激による抗がん剤や抗てんかん薬による細胞死を阻止することを見つけ、エンドトキシンの細胞保護作用への応用を試みている。

実験風景

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主要研究者・横地高志先生は2015年3月に定年退任されます。本研究計画は4年目で終了します。