頭蓋底外科センター

頭蓋底外科とは

顔⾯・頭部の最も深い部位である頭蓋底には、脳、目、⽿、⿐、⼝、咽喉頭、頸動脈など⽣命維持に不可⽋な重要構造物が集中しています。ここに発⽣する腫瘍、奇形、外傷等の様々な疾患を扱うのが頭蓋底外科です。(図1)
従来は、上顎や聴器などの悪性腫瘍は頭蓋底内外にまたがるため、切除不能、根治不能とされていましたが、⽿⿐咽喉科、脳神経外科が協働して切除し、形成外科が安全に頭蓋底を被覆・再建することにより、⾼い治癒率を得ることができるようになりました。こういった⼿術の実施には、各領域のエキスパートが揃っている必要があり、全国的には集約化が進んできているものの、若⼿医師がこの領域を目指しても教育できる施設は限られています。
また、かつては頭蓋底付近の脳腫瘍や眼窩内腫瘍の⼿術においては⼤きく顔⾯や頭部を切開する必要がありましたが、近年は内視鏡⼿術の進歩によって非常に低侵襲にできるようになりました。ここでも複数科の協働、協⼒によって⼿術の安全性がたかまり、急速な進歩を続けています。

図1

図1

愛知医科大学病院頭蓋底外科センター

頭蓋底外科センターは国内にはまだ数施設しか存在しませんし、多くは頭蓋底を専門とする脳神経外科あるいは頭頸部外科が単独で運営しています。当院の頭蓋底外科センターは脳神経外科、⽿⿐咽喉科頭頸部外科、形成外科、眼形成・眼窩・涙道外科の協働により運営されます。
⽿⿐咽喉科頭頸部外科と脳神経外科の合同⼿術による領域(上顎癌頭蓋底切除や外⽿道癌などの聴器癌)の切除実績は国内最多であり、その良好な治療成績は全国的に注目を浴びています。頭蓋底⼿術の⼤きな問題点として視機能の温存の困難さがありましたが、当院には眼窩治療のエキスパートとして眼形成・眼窩・涙道外科のセンターへの参画がえられ、病変が目や視神経周囲に及ぶ患者さんにおきましても安⼼して治療を受けていただけます。さらに形成外科が治療チームに加わることで安全な頭蓋底再建も施⾏可能なばかりでなく、可能な限り審美性に配慮した治療や、審美性回復のための治療も必要に応じて受けていただくことが可能です。
当院には最新の⼿術機器もいち早く導⼊されています。従来の⼿術⽤顕微鏡に代わり、3D外視鏡が導⼊され、患者さんは楽な姿勢のまま⼿術が受けられるようになってきています。また、4K内視鏡により、⼩さな傷⼝から詳細な観察と繊細な⼿術も⾏えるようになってきています。⼿術ナビゲーションシステムや術中CT装置も導⼊されており、安全で確実な⼿術が施⾏可能となっています。

診療部門からのごあいさつ

部長 藤本保志

部長 藤本保志

かつては治らないとされた上顎癌の頭蓋底浸潤症例に対して、頭蓋底⼿術を⾏った初期成績を発表させていただいたのが1992年でした。当時は非常に⻑時間で危険を伴う⼿術でしたが、次第に標準化され、安全性を⾼めてまいりました。頭蓋底悪性 腫瘍を安全に⼿術するために最も必要なことはチーム医療体制です。⼀⼈(単科)では専門科を越える領域の⼿術はチャレンジになりますが、隣の領域を専門とする仲間にとっては標準的な⼿技だったりします。ただし、円滑な情報共有と協働がキーになりますが、頭蓋底外科センターではそれが実現しています。⼩児から成⼈まで、様々な頭蓋底腫瘍に対応するチームですから遠慮なく相談にいらしてください。

<副部長 岩味健一郎:脳神経外科>

当院では、3D外視鏡や4K内視鏡をいち早く導⼊し、脳腫瘍や脳⾎管障害に対して、⼩さな傷⼝から根治性の⾼い⼿術を⾏ってきました。これらはKey holeサージェリー(鍵孔⼿術)と呼ばれ、年間の⼿術数は国内トップレベルです。また従来脳神経外科には、脳⾎管カテーテル治療を専門とするチームや脊椎⼿術を専門とするチームも在籍していたことから、脳・⾎管・脊椎などの重要構造が密集する頭蓋底病変の治療を得意としてきました。さらに頭蓋底センターの設⽴により、科の垣根を越えた専門家の知識・技術が結集されることとなり、困難な頭蓋底疾患に対して安全・確実で低侵襲な治療を受けていただくことが可能です。

主な対象疾患

鼻・副鼻腔がん,聴器癌(外耳道癌、中耳癌),副咽頭間隙腫瘍・側頭下窩腫瘍,脳腫瘍・頭蓋底腫瘍(髄膜腫、聴神経腫瘍、下垂体腫瘍など),眼窩内腫瘍頭蓋底骨折・髄液漏

高度な専門医療

高度な医療

3D外視鏡と4K内視鏡によるKey hole手術

画像誘導と3Dバーチャルシミュレーション手術

内視鏡下頭蓋底手術

広範囲頭蓋底腫瘍切除再建術(鼻・副鼻腔癌、聴器癌)

診療・治療実績

耳鼻咽喉科・脳神経外科合同による悪性腫瘍摘出(大半は形成外科による再建あり)

2016年 1件
2017年 2件
2018年 1件
2019年 1件
2020年 2件
2021年(7月まで) 5件

脳外科が参加した頭蓋底再建(脳+形成ないし脳+耳)

2019年~2021年7月 5件

耳鼻科・脳神経外科合同による経鼻良性頭蓋底病変摘出

2019年 13件
2020年 24件
2021年(7月まで) 15件

設備等

  • 3D外視鏡
  • 4K内視鏡
  • 手術ナビゲーションシステム
  • 術中CTシステム
  • 3Dバーチャルシミュレーション

キーワード

広範囲頭蓋底腫瘍切除再建術,内視鏡下頭蓋底腫瘍切除,3D外視鏡手術,Heads-up surgery,Key hole手術

関連リンク

連絡先

TEL
外線 : 0561-62-3311(代表)
内線 : 37200 45耳鼻咽喉科外来
内線 : 36800 35脳神経外科外来
内線 : 35700 24形成外科外来(8:30~11:30)