歯科口腔外科

当科は,専門的な治療を要する口腔および顎顔面領域の疾患に対して,最新の診断治療技術を駆使して「良質で安全な医療」を目指しています。外来は午前中の新患外来および専門外来の初診の受付を随時しています。
午後は,再診を行っています。外来での処置(抜歯などの小手術)は,全て予約制で対応しており,待ち時間の短縮を計っています。専門外来は,再診として口唇口蓋裂外来,口腔腫瘍外来,顎関節外来,顎変形症外来,睡眠外来,顎顔面補綴外来、インプラント外来を設けています。
また,緊急疾患に対してはいつでも治療に対応できる体制を整えています。
※原則として通院可能な方の一般歯科治療(入れ歯やむし歯,歯の神経の治療,被せ物の治療など)は,近医かかりつけ歯科へ紹介させていただく場合がありますのでご了承ください。

診療部門からのごあいさつ

部長 風岡 宜暁

部長 風岡 宜暁

愛知医科大学 歯科口腔外科の特徴としましては,年間約1,350症例近くの外来小手術(親知らずの抜歯など)を行っております。外来小手術は平日の午後より毎日行っております。また,毎週木曜日は全身麻酔を用いた比較的大きな手術を行っております。
医局構成としては,主任教授1名,講師2名,助教8名です。(平成28年6月1日現在) 医局カンファレンスは,1回/週です。
新病院の開院に伴い歯科口腔外科の外来診察室も一新されました。歯科口腔外科では,より一層の臨床の充実を図るつもりです。 研究面においては,口腔腫瘍に対しての免疫療法や睡眠時無呼吸症候群についての基礎などの研究をすすめております。 医局は多忙ではありますが,親しみやすい雰囲気です。臨床研修医を経たのち,共に臨床や研究を行いたい意志のある方はご連絡ください。また,大学院に進み学位論文の取得も目指す方も大歓迎です。

主な対象疾患

  • 外傷(歯の脱臼,顎骨の骨折など)
  • 口唇口蓋裂
  • 口腔腫瘍(良性腫瘍・悪性腫瘍)
  • 嚢胞
  • 顎関節症
  • 顎変形症
  • 睡眠時無呼吸症候群
  • 顎顔面補綴
  • インプラント
  • 免疫療法など

専門外来

口腔腫瘍外来

口腔内には様々な腫瘍性病変が生じます。特に悪性腫瘍に対しては手術療法が標準治療とされていますが,治療により食べる・話すなどの機能面や顔貌などの審美面に大きな影響を及ぼします。
当科では,“切らない治療”,つまり,動注化学療法放射線治療を組み合わせた,機能面や審美面への影響を可能な限り回避する治療を行っています。
口腔内の悪性腫瘍の栄養動脈には,主に,顎動脈・顔面動脈・舌動脈があります。浅側頭動脈から逆行性にカテーテルを挿入し、これらの動脈の分岐部近傍に留置します。このカテーテルを利用して高濃度の抗がん剤を悪性腫瘍に対して選択的に投与し,その後,直ちに当院放射線科にて高精度放射線治療システム(TrueBeam STx)を使用したピンポイントの放射線治療を行うことで,手術療法と同等,症例によってはそれ以上の結果を得ることが出来ます。
口腔内の悪性腫瘍に対しては,動注化学放射線療法を中心に治療を行っておりますが,手術療法や化学療法,免疫療法を含めた集学的治療を行うことで治療成績の向上と機能温存を目指しています。手術療法を行う場合の機能温存で重要となる即時再建術では,当院形成外科の協力により,微小血管吻合による遊離皮弁・骨移植を行うことで機能的・形態的に良好な結果が得られています。

動脈の走行とカテーテル挿入の模式図

動脈の走行とカテーテル挿入の模式図

担当者 風岡宜暁,林富雄
受診方法 一般外来受診後に専門外来(再診)となりますので,一度,一般外来にご紹介ください。
診療日時 ※医師の担当日時(週・曜日)についてはこちらでご確認ください。

顎変形症外来

顎変形症とは,下顎前突症(受け口),上顎前突症,下顎後退症,上顎後退症,開咬症(口を閉じても前歯が咬まない),顔面非対称など,顎骨の発育異常により顎顔面形態の不調和や咬み合わせ・咀嚼機能に障害を伴うものをいいます。
当科では,歯科矯正治療のみでは咬み合わせの改善が期待できない骨格性の顎変形症に対して,骨切り手術を行い,咬み合わせの改善および顎顔面形態の調和を図る外科的矯正治療を行っています。この治療は,上顎骨,下顎骨といった顎骨に骨切り手術を行い,適切な位置へ歯を含む顎骨を移動する治療です。一般的に,下顎前突症(受け口)の方は下顎骨を後方へ移動し,上顎後退症の方は上顎を前方に移動することを目指しますが,咬み合わせの状態によっては上顎と下顎の両方に骨切りを行い,最適な位置へ顎骨を移動します。これら骨切り手術は,全身麻酔下にて行い,約10日間の入院を必要とします。
外科的矯正治療は,治療計画→手術前の歯科矯正治療(矯正歯科)→骨切り手術(口腔外科)→手術後の歯科矯正治療(矯正歯科)が必須となります。当科では,地域の歯科矯正専門医と綿密な連携をとり,患者さんにとって最良の結果が得られるように,顎変形症に対する治療を行っています。

担当者 風岡宜暁,古橋明文,林富雄,西尾佳朋
受診方法 一般外来受診後に専門外来(再診)となりますので,一度,一般外来にご紹介ください。
診療日時 ※医師の担当日時(週・曜日)についてはこちらでご確認ください。

口唇口蓋裂外来

右側口唇裂の患児

右側口唇裂の患児

この疾患は,チ-ムアプロ-チが必要である事は言うまでもありません。われわれの施設は大学病院という良い環境の中にあります。この特色を生かし,患者さんの症状に応じて周産期母子医療センター,小児科,形成外科,耳鼻咽喉科と連携を行い患者さんの管理を行っています。当科の基本的手術は,口唇形成術はMillard変法を基本とし,手術時期は体重5kgを目安としています。再形成は変形が顕著で無い限り,出来るだけ学齢期まで待ち,可能な限り手術回数を減らしています。口蓋形成は体重10kgになった時にプッシュバック法で行っています。再形成は言語治療の結果から矯正治療の進展との兼ね合いで行っていますが言語を優先としています。再プッシュバックと咽頭弁移植術の同時併用を行っています。口唇形成の問題点は人中形成と鼻翼形成です。鼻翼形成では,オ-プンメソッド(西村法)を取り入れ形態修正の大きな進歩を見ています。また小児科,麻酔科の協力が得られる事から全身的疾患,他部奇形を有する患者さんの手術も,医科大学病院の特徴を生かして行っております。

担当者 風岡宜暁
受診方法 一般外来受診後に専門外来(再診)となりますので,一度,一般外来にご紹介ください。
診療日時 ※医師の担当日時(週・曜日)についてはこちらでご確認ください。

睡眠時無呼吸外来

口腔内装置(OA)

口腔内装置(OA)

睡眠時無呼吸(OSA)は,睡眠中に呼吸が止まることによって,何度も目を覚まし,深い睡眠が得られない病気です。大きなイビキや日中の強い眠気が代表的な症状であり,循環器疾患など様々な合併症を起こすことが知られています。
当科では,睡眠医療施設における睡眠検査により,睡眠時無呼吸と診断され,口腔内装置(OA:Oral Appliance)治療の適応である紹介状を持参された方に対して,顎顔面形態の評価や口腔精査を行い,口腔内装置治療を行います。
当院睡眠科および近隣の睡眠医療施設と連携し,年間100例以上のOA治療を行うとともに,OSAの病態やOAの作用機序についての研究を行っています。
また当科では,口腔機能および顎顔面形態を熟知した口腔外科医が睡眠医療に携わる利点を生かし,顎顔面形態の不調和がOSAの要因と考えられる方に対し,不調和の改善や症状の緩和を目指した顎顔面外科手術を行っています。

睡眠時無呼吸の原因と口腔内装置治療

睡眠時無呼吸の原因として,肥満により顎や首の周囲の脂肪が増加し気道が圧迫されることや,顎が小さい・下顎が後方に位置していることにより気道が圧迫されることがあります。口腔内装置治療は,睡眠時に下顎を前方に保持するマウスピースを装着することによ,狭くなったり気道を拡大し,イビキや無呼吸の発生を予防する治療です。
口腔内装置治療は,上下の歯を利用し下顎を前方に保持するため,下記の場合には治療を行えないことがあります。
 ・進行した歯周病がある場合  ・顎関節に異常がある場合
 ・残っている歯が少ない場合  ・末治療の虫歯がある場合
虫歯や歯周病がある場合は,口腔内装置治療開始前に歯科治療が必要です。該当する方には,近在歯科医院での治療をすすめさせていただきます。

口腔内装置治療の効果と副作用

口腔内装置治療は,睡眠時無呼吸に対して有効な治療法であり,多くの方のイビキ,無呼吸の減少が期待できます。一方で,十分に治療効果がみられない場合もあり,口腔内装置の装着に慣れた際には,紹介元の睡眠医療機関において睡眠検査を行い,口腔内装置の治療効果を確認することが必要です。治療効果不良の場合には,装置の調整を行います。
また長期間使用することにより顎関節症状の出現,歯の位置の移動といった副作用や治療効果の減少が生じることがあるため,継続的に通院していただき,口腔内装置および口腔内の診察が重要となります。

担当者 古橋明文,伊藤邦弘,西尾佳朋
受診方法 一般外来受診後に専門外来(再診)となりますので,一度,一般外来にご紹介ください。
診療日時 ※医師の担当日時(週・曜日)についてはこちらでご確認ください。

顎関節外来

関節円板洗浄療法

関節円板洗浄療法

顎関節症は顎関節雑音,開口時痛,開口障害を主症状とする疾患で,その数は口腔外科を受診する方の2割ほどです。顎関節症の発生機序や病態は不明な部分が多く,治療法もスプリント(マウスピース)や理学療法,薬物療法などの療法に頼っていました。しかし,MRI,関節鏡の導入により,顎関節症の一部の型については,病態解明や治療方針の改善が進んでいます。愛知医科大学病院歯科口腔外科外来においても1992年より顎関節外来を開設しています。当科での治療は顎関節学会のすべての型で,原則として薬物療法,スプリント(マウスピース)療法やマイオモニター療法(筋の電気的マッサージ)などの非観血的処置を行います。顎関節症のうち,当科での検討から導いた臨床診断で関節円板がずれて元に戻らないタイプ(III b型)が疑われる場合は必要に応じてMRI検査を行い,かつ痛みや開口障害を伴う場合ではマニュピレーション(徒手的円板整復術)や関節円板洗浄療法(改善率70~80%)を行っています。

担当者 林富雄
受診方法 一般外来受診後に専門外来(再診)となりますので,一度,一般外来にご紹介ください。
診療日時 ※医師の担当日時(週・曜日)についてはこちらでご確認ください。

顎顔面補綴外来

エピテーゼによる術後の審美的回復

エピテーゼによる術後の審美的回復

顎顔面口腔領域に生じる諸疾患により,実質欠損を認めると日常生活に著しい支障を来たし,精神的苦痛も計り知れません。マイクロサージャリーを初めとする再建法の進歩により,有茎皮弁に比べ自由度が向上して,口腔腫瘍の進行症例に対して広範囲切除が可能であり良好な成績が得られています。さらに,歯科用インプラントの応用によって,術後の咬合機能再建が図られています。また,年齢や全身状態などの諸事情で再建術が選択できないときは,顎顔面補綴による機能的, 審美的回復が求められ,エピテーゼや矯正装具による回復を得ています。耳介奇形,眼窩欠損や義眼治療を手がけています。

担当者 風岡宜暁
受診方法 一般外来受診後に専門外来(再診)となりますので,一度,一般外来にご紹介ください。
診療日時 ※医師の担当日時(週・曜日)についてはこちらでご確認ください。

診療・治療実績

診療・治療実績(令和2年度)

外来患者数(1日平均) 107.2人
入院患者数(1日平均) 12.6人

設備等

内容
入院病床数 8床

キーワード

口唇口蓋裂,口腔腫瘍,顎関節症,顎変形症,睡眠時無呼吸症候群,顎顔面補綴,インプラント,骨移植,免疫療法

連絡先

TEL
外線 : 0561-62-3311(代表)
内線 : 37100 46歯科口腔外科外来(9:00~17:15)