泌尿器科

腹腔鏡下腎摘除術中の手術室

腹腔鏡下腎摘除術中の手術室

院内所在マップ

現在の高齢化社会により,泌尿器科の重要性が増してきています。我々はそれに伴った排尿障害などの一般泌尿器疾患をはじめ,各種泌尿器癌や結石治療に対して力を入れて取り組んでいます。また,内視鏡手術(ロボット支援内視鏡手術,腹腔鏡手術,レーザー治療)による低侵襲治療を積極的に取り入れ,患者さんのQOL(生活の質)の保持に努めています。

診療部門からのごあいさつ

部長 住友 誠

部長 住友 誠

愛知医科大学泌尿器科では,現代医学には必須の「低侵襲・機能温存治療」に重点を置いた診療を展開しております。腎癌では残存腎機能を重視した腹腔鏡下腎部分切除術を積極的に行っています。また,2012年4月より健康保険の対象となった内視鏡手術支援ロボットda Vinciによる前立腺癌に対する根治的前立腺摘除術(RARP)を尾張東部地区では初めて導入し,排尿機能,性機能温存にも重点を置いた治療を行っています。現在までに200名を超える患者さんにRARPを施行しています。また,2014年5月より膀胱癌に対するロボット支援膀胱全摘除術(RARC),2014年7月より腎癌に対するロボット支援腎部分切除術(RAPN)を導入しました。導入当初は,ロボット手術免許取得者は4名でしたが,2013年8月現在には8名まで増員でき,今後も若手泌尿器科医が早期にロボット手術に携わることができる環境を整え,ひいては患者さんに安心して手術を受けていただけるシステムを構築していく方針です。膀胱癌で膀胱全摘出術をしなければならない患者さんの場合でも,術後のQOL(生活の質)を重視し,自然排尿型の尿路再建術に力を入れています。進行癌の診療にも重点を置き,エビデンスレベルの高い化学療法や分子標的治療を提供しています。当然ながら,一般泌尿器科疾患である前立腺肥大症や尿路結石症に対しても,新しい内視鏡治療や体外衝撃波結石破砕術を行っています。さらに,本邦の超高齢化社会の実情を考慮し,女性泌尿器科学,特に尿失禁の分野にも積極的に取り組みたいと考えております。愛知医科大学泌尿器科の特色を連携施設の先生方にご理解いただきつつ,スムーズな連携を通じて,愛知医大及び周辺施設の相互フィードバックが可能になるような病診連携のシステムを最大限に有効活用させていただきたく存じます。
研究面では,尿路悪性腫瘍の進展機序解明を中心に,病態に即したオーダーメード治療の提供を目的として,特に腎癌と前立腺癌に対するバイオマーカーや新たな治療法の探究を行っています。さらに,尿路感染症に対する抗菌薬の薬物動態研究により,抗菌薬の適正使用に対する新しい知見を多くの学会や論文で報告しています。
泌尿器科の医局は非常に明るく,面倒見の良いメンバーがそろっていますが,唯一の欠点は女性泌尿器科医がほぼ皆無だということです。前述のように,これからは女性泌尿器科学の分野が脚光を浴びる時代であり,情熱をもって診療・研究に従事する女性泌尿器科医の育成を目指したいと考えております。もちろん,体力に多少自信のある男性医師の訪問を大歓迎いたします。泌尿器科疾患に少しでも興味がある方は気軽にご連絡ください。1日で愛知医大泌尿器科が大好きになることをお約束いたします。

主な対象疾患

泌尿器科対象臓器の周囲解剖図

泌尿器科対象臓器の周囲解剖図

  • 排尿障害(過活動膀胱,夜間頻尿,神経因性膀胱,排尿困難,排尿時痛,尿失禁,夜尿症など)
  • 尿異常(血尿,尿混濁など),精液異常(血精液症など)
  • 腎疾患(腎腫瘍,腎結石,腎のう胞,腎盂腎炎,水腎症,腎後性腎不全,腎外傷など)
  • 尿管疾患(腎盂・尿管腫瘍,尿管結石,尿管狭窄など)
  • 膀胱疾患(膀胱腫瘍,膀胱結石,間質性膀胱炎,膀胱炎など)
  • 前立腺疾患(前立腺肥大症,前立腺癌,前立腺炎)
  • 精巣疾患(精巣腫瘍,精巣捻転,精巣炎,精巣上体炎,精索静脈瘤,陰嚢外傷など)
  • 性感染症(淋菌・クラミジア尿道炎など)
  • 外陰部疾患(包茎,陰茎・尿道口異常,外傷など)
  • 男性不妊症
  • 勃起障害・持続勃起症など

高度な専門医療

高度な医療

ロボット支援根治的前立腺全摘術

内視鏡手術支援ロボット
手術ロボット「da Vinci」導入

ロボット支援根治的前立腺全摘術

当院では,2012年6月から前立腺癌に対して内視鏡手術支援ロボット「ダ・ヴィンチS(da Vinci Surgical System)」での手術を開始しました。ダ・ヴィンチはロボット部と操作部,助手用のモニターで構成され,ロボット部には先端に鉗子やメスなどを取り付ける3本のアームと1本のカメラが装着されています。術者はケーブルでつながったコンソール(操作台)に座り,中に映し出される3D画像を見ながらアームを操り,患部の切除や縫合をします。
このダ・ヴィンチのメリットは以下の通りです。

患者さんへの負担が少ない。
通常の開腹手術と比較して傷口が小さく,低侵襲です。
3次元(立体)画像で手術が行える。
従来の2D画像ではなく,術者は鮮明な3D画像下で手術を行うことができること。さらにデジタルズーム機能により画像を自在に拡大することができ,奥行きがあり,しかも拡大された画像によって,今までは見えなかった膜構造を認識しながら操作を行うことができるため,今までとは比べものにならない精緻な手術が可能となります。
人間の手首以上の可動域がある。
精緻な手術ができる理由は,ダ・ヴィンチの腕が手首を持っていることです。今までの腹腔鏡手術は,まっすぐな鉗子しかなかったのに対し,ダ・ヴィンチが手首を持つことによって,より複雑な動きを可能にし,従来の腹空鏡手術ではできなかった手術操作が狭い空間でも可能となるため,手術をスムーズにかつ安全かつ確実に行うことができます。
手ぶれが全くない。
ムーブメント効果と言って,術者が実際に動かすスピードよりゆっくりとした大きな操作に変換できるため,細かな操作が可能となります。手ぶれや誤作動を防ぐ装置もあり,微細器官の剥離,縫合などの作業精度が格段にアップします。

これらの恩恵はそのまま患者さんへ還元されるものと思います。ダ・ヴィンチシステムを使用した手術は,現在,欧米や韓国などを中心に行われており,症例は年々増加しています。すでにアメリカでは前立腺手術の約70%がダ・ヴィンチで行われていると言われています。2012年の4月からは日本でも保険診療の認可がおり,患者さんにより一層高いレベルの医療を提供することが可能になったと考えています。導入後,我々のチームでは,術中の出血も抑えられ,術後の創部治癒や尿禁制に関しても良好な結果が得られております。

また、これまで当院では腹腔鏡手術や前立腺癌に対するロボット手術の経験を活かして,自費診療でロボット支援腎部分切除術を行ってきましたが,2016年4月1日から健康保険の適用となりました。今後もロボット支援腎部分切除術も積極的に取り組んでまいります。

腹腔鏡下腎部分切除術

腎部分切除シェーマ

腎部分切除シェーマ

腎部分切除術の腹腔鏡手術におけるモニター画像

腎部分切除術の腹腔鏡手術におけるモニター画像

高齢化が進むなか,慢性腎臓病(Chronic Kidney Disease:CKD)という概念に注目が集まっています。これは腎障害を示す所見や腎機能低下が慢性的に続く状態で,放置した場合,腎不全となって人工透析や腎移植が必要になることもあります。現在,日本には約1,330万人と多数のCKD患者さんがいると言われています。さらにCKDは,人工透析に至らなくても,心臓病や脳卒中などの心血管疾患にもなりやすいことが明らかになり,自覚症状のないうちに診断し適切な治療を行うことが大切です。
近年,超音波検査やCT検査などの画像診断の普及に伴い,健康診断や他の病気の検査中に,小さな腎腫瘍が偶然見つかるケースが増加しています。健常人でも,高齢化により腎機能の低下が,心血管イベントを引き起こすことにつながると危惧されている中で,腎腫瘍の治療の中心は手術であり,腎臓の片方あるいは一部を摘出するため,術後にある程度の腎機能の低下リスクがあります。したがってCKDの患者さんが腎腫瘍と診断された場合,治療に際して特に腎機能温存に留意する必要があります。我々の行っている腹腔鏡下腎部分切除は,手術後の腎機能温存に有利な手術です。
臨床的に腎癌と診断された場合,従来は腎臓を周囲の脂肪組織ごと丸ごと摘出する根治的腎摘除が標準的治療でしたが,最近では,(約4cm未満の)小さな腎腫瘍に対しては腫瘍の部分のみを摘出する腎部分切除を行うケースが増えています。腎部分切除は,小さな腎癌では根治的腎摘除と同等の根治性が示されており,標準的治療になりつつあります。また術後の腎機能を保つ上では根治的腎摘除より優れていることが明らかになり,これは腎部分切除の大きな長所です。また腎癌(疑いを含む)と診断され腎部分切除を行った場合,病理検査で実際は良性腫瘍と診断されることがあります。欧米の複数の施設からの報告では,腎部分切除症例での良性腫瘍の頻度は20~25%と比較的高いと報告されています。 これらのことから,小さな腎腫瘍に対しては,可能であれば腎部分切除を行うことがよいと考えられます。ただし,小さな腎腫瘍の全てに腎部分切除が行えるものではなく,腫瘍の位置も重要な条件となります。

診療・治療実績

診療実績(平成27年度)

外来患者数(1日平均) 103.8人

治療実績(手術)

12月現在

  2011年 2012年 2013年 2014年 2015年 2016年
TUR-Bt(経尿道的膀胱腫瘍切除術) 111 104 97 110 129 107
TUR-P(経尿道的前立腺切除術) 32 27 26 20 29 21
PVP(光選択的前立腺レーザー蒸散術) 0 0 0 0 0 10
TUL(経尿道的結石破砕術) 144 67 76 51 88 95
PNL(経皮的腎砕石術) 2 1 4 3 3 2
対外衝撃派結石破砕術) * 96 71 66 85 85
小切開根治的前立腺全摘除術 37 13 0 0 0 0
ロボット支援根治的前立腺全摘除術 0 41 92 91 96 91
膀胱全摘除術 8 9 6 8 8 9
後腹膜腫瘍切除術 1 3 0 0 0 3
高位精巣摘除術 4 7 5 3 9 9
根治的腎摘除術(開腹/腹腔鏡下) 7/9 8/3 6/10 4/11 4/12 6/7
腎部分切除術(開腹/腹腔鏡下) 1/1 3/8 2/6 1/2 3/4 1/1
腎尿管摘除術(開腹/腹腔鏡下) 2/11 0/8 0/9 0/13 1/15 2/8
副腎摘除術(開腹/腹腔鏡下) 0/2 0/1 0/0 0/1 1/0 0/4
ロボット支援腎部分切除術(RAPN) 0 0 0 7 3 10
ロボット支援膀胱全摘除術(RARC) 0 0 0 4 2 1
計(上記以外含め) 516 462 450 418 542 428

設備等

軟性尿管鏡結石破砕術(f-TUL)

f-TULで使用する軟性尿管鏡

f-TULで使用する軟性尿管鏡

当科で導入しているf-TUL は,胃カメラのように軟らかい軟性腎盂尿管鏡とホルミウムヤグレーザーとを組み合わせた比較的新しい治療法です。従来金属製の硬性尿管鏡で行っていたTUL は内視鏡を尿道から膀胱,尿管へ挿入して,結石を直接カメラで確認しながら少しずつ砕石あるいは抽石する手術法です。硬性尿管鏡は観察範囲は限られ,患者さんによっては尿路の観察が充分にできない場合があります。これに対して軟性腎盂尿管鏡では腎臓内まで充分に観察でき,結石をホルミウムヤグレーザーで破砕することができます。f-TULにより腎・尿管のほとんどすべての部位の結石をより高い確率で,かつより安全に治療することが可能になりました。破砕後には砕石片の回収も行うので,今までより短期間での結石消失も期待できます。

体外衝撃波結石破砕術(ESWL)

両側腎結石のレントゲン写真

両側腎結石のレントゲン写真

ESWLの機器

ESWLの機器

いち早く体外衝撃波砕石術(ESWL)を導入し,多くの腎・尿管結石症患者さんの治療をしてきました。体外衝撃波とは,体外で発生させた衝撃波を集束させて,これを腎臓や尿管の結石に伝え,結石を砂状に破砕する治療法です。そして砂状になった結石は,尿の流れとともに自然に排出されます。すでに多くの方々がこの治療法を受けており,その安全性は広く確認されています。体外衝撃波の利点としては,身体に傷をつけず,治療ベットに寝たまま治療ができます。ただ,この治療法が適応になる結石とならない結石とがありますので,当科受診の際には担当医師にご確認ください。

経尿道的切除術(TURis)

経尿道的手術に使用する硬性膀胱鏡

経尿道的手術に使用する硬性膀胱鏡

膀胱腫瘍

膀胱腫瘍

TURisによる膀胱腫瘍切除の内視鏡画像

TURisによる膀胱腫瘍切除の内視鏡画像

前立腺肥大症や膀胱腫瘍に対する内視鏡手術である経尿道的切除術(TUR)は,泌尿器科において代表的な手術です。当院では従来のTURからTURisに変更することにより,高い切れ味を維持できる利点があるほかに,手術中に尿道~膀胱内を満たす灌流液として,身体の体液に近い組成の生理食塩水を使用するため,血液中の塩分濃度が低下しないなどの安全性が向上しました。

キーワード

泌尿器科,ロボット,内視鏡支援,ダビンチ,体外衝撃波結石破砕術,腹腔鏡下部分切除,TURis, 先進医療,低侵襲,機能温存

関連リンク

連絡先

TEL
外線:0561-62-3311(代表)
内線:35700  24外来(8:30~11:30)