泌尿器科

現在の高齢化社会により,泌尿器科の重要性が増してきています。我々はそれに伴った排尿障害などの一般泌尿器疾患をはじめ,各種泌尿器癌や結石治療に対して力を入れて取り組んでいます。また,内視鏡手術(ロボット支援内視鏡手術,腹腔鏡手術,レーザー治療)による低侵襲治療を積極的に取り入れ,患者さんのQOL(生活の質)の保持に努めています。

診療部門からのごあいさつ

    準備中

主な対象疾患

泌尿器科対象臓器の周囲解剖図

泌尿器科対象臓器の周囲解剖図

  • 排尿障害(過活動膀胱,夜間頻尿,神経因性膀胱,排尿困難,排尿時痛,尿失禁,夜尿症など)
  • 尿異常(血尿,尿混濁など),精液異常(血精液症など)
  • 腎疾患(腎腫瘍,腎結石,腎のう胞,腎盂腎炎,水腎症,腎後性腎不全,腎外傷など)
  • 尿管疾患(腎盂・尿管腫瘍,尿管結石,尿管狭窄など)
  • 膀胱疾患(膀胱腫瘍,膀胱結石,間質性膀胱炎,膀胱炎など)
  • 前立腺疾患(前立腺肥大症,前立腺癌,前立腺炎)
  • 精巣疾患(精巣腫瘍,精巣捻転,精巣炎,精巣上体炎,精索静脈瘤,陰嚢外傷など)
  • 性感染症(淋菌・クラミジア尿道炎など)
  • 外陰部疾患(包茎,陰茎・尿道口異常,外傷など)
  • 男性不妊症
  • 勃起障害・持続勃起症など

高度な専門医療

高度な医療

ロボット支援根治的前立腺全摘術

内視鏡手術支援ロボット
手術ロボット「da Vinci」導入

ロボット支援根治的前立腺全摘術

当院では,2012年6月から前立腺癌に対して内視鏡手術支援ロボット「ダ・ヴィンチS(da Vinci Surgical System)」での手術を開始しました。ダ・ヴィンチはロボット部と操作部,助手用のモニターで構成され,ロボット部には先端に鉗子やメスなどを取り付ける3本のアームと1本のカメラが装着されています。術者はケーブルでつながったコンソール(操作台)に座り,中に映し出される3D画像を見ながらアームを操り,患部の切除や縫合をします。
このダ・ヴィンチのメリットは以下の通りです。

患者さんへの負担が少ない。
通常の開腹手術と比較して傷口が小さく,低侵襲です。
3次元(立体)画像で手術が行える。
従来の2D画像ではなく,術者は鮮明な3D画像下で手術を行うことができること。さらにデジタルズーム機能により画像を自在に拡大することができ,奥行きがあり,しかも拡大された画像によって,今までは見えなかった膜構造を認識しながら操作を行うことができるため,今までとは比べものにならない精緻な手術が可能となります。
人間の手首以上の可動域がある。
精緻な手術ができる理由は,ダ・ヴィンチの腕が手首を持っていることです。今までの腹腔鏡手術は,まっすぐな鉗子しかなかったのに対し,ダ・ヴィンチが手首を持つことによって,より複雑な動きを可能にし,従来の腹空鏡手術ではできなかった手術操作が狭い空間でも可能となるため,手術をスムーズにかつ安全かつ確実に行うことができます。
手ぶれが全くない。
ムーブメント効果と言って,術者が実際に動かすスピードよりゆっくりとした大きな操作に変換できるため,細かな操作が可能となります。手ぶれや誤作動を防ぐ装置もあり,微細器官の剥離,縫合などの作業精度が格段にアップします。

これらの恩恵はそのまま患者さんへ還元されるものと思います。ダ・ヴィンチシステムを使用した手術は,現在,欧米や韓国などを中心に行われており,症例は年々増加しています。すでにアメリカでは前立腺手術の約70%がダ・ヴィンチで行われていると言われています。2012年の4月からは日本でも保険診療の認可がおり,患者さんにより一層高いレベルの医療を提供することが可能になったと考えています。導入後,我々のチームでは,術中の出血も抑えられ,術後の創部治癒や尿禁制に関しても良好な結果が得られております。

また、これまで当院では腹腔鏡手術や前立腺癌に対するロボット手術の経験を活かして,自費診療でロボット支援腎部分切除術を行ってきましたが,2016年4月1日から健康保険の適用となりました。今後もロボット支援腎部分切除術も積極的に取り組んでまいります。

ロボット支援腎部分切除術

腎部分切除シェーマ

腎部分切除シェーマ

腎部分切除術の腹腔鏡手術におけるモニター画像

腎部分切除術の腹腔鏡手術におけるモニター画像

高齢化が進むなか,慢性腎臓病(Chronic Kidney Disease:CKD)という概念に注目が集まっています。これは腎障害を示す所見や腎機能低下が慢性的に続く状態で,放置した場合,腎不全となって人工透析や腎移植が必要になることもあります。現在,日本には約1,330万人と多数のCKD患者さんがいると言われています。さらにCKDは,人工透析に至らなくても,心臓病や脳卒中などの心血管疾患にもなりやすいことが明らかになり,自覚症状のないうちに診断し適切な治療を行うことが大切です。
近年,超音波検査やCT検査などの画像診断の普及に伴い,健康診断や他の病気の検査中に,小さな腎腫瘍が偶然見つかるケースが増加しています。健常人でも,高齢化により腎機能の低下が,心血管イベントを引き起こすことにつながると危惧されている中で,腎腫瘍の治療の中心は手術であり,腎臓の片方あるいは一部を摘出するため,術後にある程度の腎機能の低下リスクがあります。したがってCKDの患者さんが腎腫瘍と診断された場合,治療に際して特に腎機能温存に留意する必要があります。我々の行っている腹腔鏡下腎部分切除は,手術後の腎機能温存に有利な手術です。
臨床的に腎癌と診断された場合,従来は腎臓を周囲の脂肪組織ごと丸ごと摘出する根治的腎摘除が標準的治療でしたが,最近では,(約4cm未満の)小さな腎腫瘍に対しては腫瘍の部分のみを摘出する腎部分切除を行うケースが増えています。腎部分切除は,小さな腎癌では根治的腎摘除と同等の根治性が示されており,標準的治療になりつつあります。また術後の腎機能を保つ上では根治的腎摘除より優れていることが明らかになり,これは腎部分切除の大きな長所です。また腎癌(疑いを含む)と診断され腎部分切除を行った場合,病理検査で実際は良性腫瘍と診断されることがあります。欧米の複数の施設からの報告では,腎部分切除症例での良性腫瘍の頻度は20~25%と比較的高いと報告されています。 これらのことから,小さな腎腫瘍に対しては,可能であれば腎部分切除を行うことがよいと考えられます。ただし,小さな腎腫瘍の全てに腎部分切除が行えるものではなく,腫瘍の位置も重要な条件となります。
2016年にはロボット支援腎部分切除術も保健承認を受け,当科でも適応症例に対しては施行しています。

診療・治療実績

診療実績(平成29年度)

外来患者数(1日平均) 112.4人

治療実績(手術)

12月現在

  2011年 2012年 2013年 2014年 2015年 2016年 2017年
TUR-Bt(経尿道的膀胱腫瘍切除術) 111 104 97 110 129 107 98
TUR-P(経尿道的前立腺切除術) 32 27 26 20 29 21 0
PVP(光選択的前立腺レーザー蒸散術) 0 0 0 0 0 10 29
TUL(経尿道的結石破砕術) 144 67 76 51 88 95 75
PNL(経皮的腎砕石術) 2 1 4 3 3 2 4
体外衝撃派結石破砕術) * 96 71 66 85 85 65
小切開根治的前立腺全摘除術 37 13 0 0 0 0 0
ロボット支援根治的前立腺全摘除術 0 41 92 91 96 91 88
膀胱全摘除術 8 9 6 8 8 9 11
後腹膜腫瘍切除術 1 3 0 0 0 3 2
高位精巣摘除術 4 7 5 3 9 9 5
根治的腎摘除術(開腹/腹腔鏡下) 7/9 8/3 6/10 4/11 4/12 6/7 3/6
腎部分切除術(開腹/腹腔鏡下) 1/1 3/8 2/6 1/2 3/4 1/1 0/0
腎尿管摘除術(開腹/腹腔鏡下) 2/11 0/8 0/9 0/13 1/15 2/8 0/16
副腎摘除術(開腹/腹腔鏡下) 0/2 0/1 0/0 0/1 1/0 0/4 0/5
ロボット支援腎部分切除術(RAPN) 0 0 0 7 3 10 27
ロボット支援膀胱全摘除術(RARC) 0 0 0 4 2 1 0
計(上記以外含め) 516 462 450 418 542 428 478

設備等

軟性尿管鏡結石破砕術(f-TUL)

f-TULで使用する軟性尿管鏡

f-TULで使用する軟性尿管鏡

当科で導入しているf-TUL は,胃カメラのように軟らかい軟性腎盂尿管鏡とホルミウムヤグレーザーとを組み合わせた比較的新しい治療法です。従来金属製の硬性尿管鏡で行っていたTUL は内視鏡を尿道から膀胱,尿管へ挿入して,結石を直接カメラで確認しながら少しずつ砕石あるいは抽石する手術法です。硬性尿管鏡は観察範囲は限られ,患者さんによっては尿路の観察が充分にできない場合があります。これに対して軟性腎盂尿管鏡では腎臓内まで充分に観察でき,結石をホルミウムヤグレーザーで破砕することができます。f-TULにより腎・尿管のほとんどすべての部位の結石をより高い確率で,かつより安全に治療することが可能になりました。破砕後には砕石片の回収も行うので,今までより短期間での結石消失も期待できます。

体外衝撃波結石破砕術(ESWL)

両側腎結石のレントゲン写真

両側腎結石のレントゲン写真

ESWLの機器

ESWLの機器

いち早く体外衝撃波砕石術(ESWL)を導入し,多くの腎・尿管結石症患者さんの治療をしてきました。体外衝撃波とは,体外で発生させた衝撃波を集束させて,これを腎臓や尿管の結石に伝え,結石を砂状に破砕する治療法です。そして砂状になった結石は,尿の流れとともに自然に排出されます。すでに多くの方々がこの治療法を受けており,その安全性は広く確認されています。体外衝撃波の利点としては,身体に傷をつけず,治療ベットに寝たまま治療ができます。ただ,この治療法が適応になる結石とならない結石とがありますので,当科受診の際には担当医師にご確認ください。

光選択的前立腺レーザー蒸散術(PVP)について

前立腺肥大症とは
前立腺肥大症は,年齢とともに徐々に肥大した前立腺によって尿道が狭く圧迫されることで,排尿困難感,排尿に時間がかかる,頻尿などの症状を認めます。場合によっては自力では排尿ができずに尿道から膀胱へ管(カテーテル)を挿入する必要が出てくる場合もあります。前立腺肥大による排尿障害に対しては一般的に薬物療法が第一選択とされています。薬によって肥大した前立腺や尿道の筋肉を緩めて尿が出やすくすることにより,自覚症状の改善を期待するものです。多くの方が薬物療法によって症状は改善しますが,十分に改善しない場合,一度は改善したものの徐々に悪化する場合,薬の長期服用を避けたい場合や自排尿ができないなど症状が重症な場合には,肥大した部分を切除する手術が行われます。
前立腺肥大症
前立腺肥大症に対する従来法
前立腺肥大によって圧排された尿道を拡げるために,従来から低侵襲手術として,水(灌流液)で視野を確保しながら尿道から内視鏡を入れ前立腺を高周波メスで切除する手術(TUR-P)が広く行われてきました。この手術は高い治療効果があるものの,手術中の出血量が比較的多いこと,術後に尿道カテーテルを留置する期間が長いこと,また灌流液の吸収により水中毒(低ナトリウム血症)を起こすリスクがあるなど課題がありました。また,出血しやすい手術の特性から,脳血管や循環器の疾患で抗凝固薬を服用している高齢者には手術を行うことが難しいとされてきました。
当院で採用する最新の手術法

PVP1

前立腺肥大症に対する従来法の課題に対応した最新の治療法が,今回当院で2016年10月より導入する光選択的前立腺レーザー蒸散術(PVP)です。前述の課題に対応しているため,より優しい手術といえます。前立腺肥大症の症状でお困りの方で,PVPに興味がございましたら当院泌尿器科にお気軽にお問い合わせください。

光選択的前立腺レーザー蒸散術(以下,PVP)とは
PVPに使用する緑色レーザー光には,水にはほとんど吸収されない一方,血液中の酸化ヘモグロビンに選択的に吸収され,強い熱エネルギーを生じさせる特性があります。生理食塩水(灌流液)で視野を確保しながら,内視鏡を使って血流の豊富な前立腺組織にこのレーザー光を照射すると,組織は瞬時に加熱・蒸散され,同時に蒸散部の表面に1-2 mm程度の薄い凝固層ができます。PVPでは,緑色レーザー光による肥大組織の強大な蒸散効果と確実な止血凝固効果が発揮されるため,前立腺肥大症による下部尿路閉塞が効率的にかつ安全に解除されます。
PVP2
手術方法
麻酔: 下半身麻酔,もしくは全身麻酔で行います。
方法: 麻酔が効いていることを確認した後,膀胱内へ内視鏡を挿入し,生理食塩水を流しながら前立腺部尿道を確認し,閉塞の原因となっている部分に緑色レーザー光を照射し,前立腺組織を内側から蒸散させます。
手術時間:前立腺の大きさ次第ですが,およそ1時間から2時間です。
術後:手術後は尿道から膀胱内へ尿を排出する管(カテーテル)を挿入しますが,血尿の程度や発熱といった術後合併症がなく術後経過が順調であれば1~3日後にはカテーテルを抜去します。抜去後に手術部位の腫れで一過性に排尿困難を生じる場合もあり,予定より長くカテーテルを留置する場合もありますが,排尿の問題がなければ退院可能となります。
手術の効果と限界
効果:前立腺肥大症を改善し,尿の勢いを改善させます。
限界:頻尿や尿意切迫感,尿漏れなどの症状は,前立腺切除術のみでは改善が乏しい場合があり,投薬を要する可能性もあります。脳梗塞,脳出血,糖尿病などで膀胱を支配している神経に異常があり,膀胱の収縮力が低下している場合も,手術による改善が乏しい場合があります。PVPでは前立腺組織を蒸散させるため,組織が採取できないことが難点と言われています。前立腺肥大症は良性疾患ですが,まれに悪性の前立腺癌細胞が発見されることがあります。しかし,PVPの前にPSA(前立腺癌腫瘍マーカー)値を調べ,前立腺癌が疑われる方には別に組織を採取(前立腺針生検)し,PVPの後も定期的にPSA値を確認するなど,経過を観察して対応します。
従来の手術との比較
安全性に優れ,他の術式に劣らない治療成績である点です。具体的には,経尿道的前立腺切除術(TURP)に比べて,出血が少ないため,輸血の準備がいらないこと,組織に穴が開くこと(穿孔)がないこと,TUR反応(希釈性低ナトリウム血症)が起きないこと,および尿道カテーテル(管)を手術翌日に抜いて退院できる点が優れています。心臓や肺,脳血管に病気を抱えた患者も手術ができる場合があり,股関節手術後で十分な手術姿勢がとれない患者さんも治療できる場合があります。
TURP-PVP比較
男性機能について
この手術を受けても男性機能障害(ED)にはなりません。従来法のTURPなどの手術では,多くの方(約8-9割)で逆行性射精(射精液が膀胱側に排出されて,前に出てこない合併症)が起こりますが,PVPでは比較的少ないとされています。
PVPに関して
前立腺肥大症の症状でお困りの方で,PVPに興味がございましたら当院泌尿器科にお気軽にお問い合わせください。
   連絡先:電話 代表 0561-62-3311,内線 35700 <24番(泌尿器科)外来(8:30~11:30)>

キーワード

泌尿器科,ロボット,内視鏡支援,ダビンチ,体外衝撃波結石破砕術,腹腔鏡下部分切除,TURis, 先進医療,低侵襲,機能温存

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