呼吸器外科

肺癌,縦隔腫瘍だけでなくさまざまな呼吸器疾患を呼吸器内科,放射線科などと連携をとり集学的な治療を行っています。手術では侵襲軽減を目的に特に胸腔鏡手術や小開胸手術に力を入れており,手術の傷を小さくして術後の疼痛を極力減らすことで,入院期間の短縮を目指しています。現在では肺癌の手術であっても,いわゆる後側方切開や肋骨切断などはほとんど行っておりません。
主な疾患に対する診療は後述の通りです。

診療部門からのごあいさつ

部長 羽生田正行

部長 羽生田正行

愛知医科大学病院呼吸器外科は2003年4月に開設された新しい診療科です。診療対象としては,肺癌や胸腺腫瘍,胸膜腫瘍などの胸部悪性疾患のほか,種々の原因による気管・気管支狭窄,気胸・膿胸などの胸膜疾患,肺真菌症などの炎症性肺疾患,重症筋無力症などの特殊疾患などです。また漏斗胸につきましては当院形成外科に協力しNuss法による矯正手術を行っています。最近はほとんどの疾患で胸腔鏡下の手術が行われており,入院期間は1週間から10日で済むようになりました。
肺癌の手術では手術待機期間が長い施設が多いのが現状ですが,当院では手術室の協力を得て初診日から2週間~4週間程度と比較的短い待機期間で手術が行えるよう努力しています。
まだ開設されて間もない科ではありますが,呼吸器外科の新しい時代を切り開くべく,教室員一同,臨床,教育,研究に励んで行きたいと考えています。

主な対象疾患

  • 肺癌
  • 胸腺腫
  • 縦隔腫瘍
  • 気胸
  • 気管気管支狭窄
  • 手掌多汗症
  • 転位移性肺腫瘍
  • 嚢胞性肺疾患
  • 膿胸
  • 胸部外傷

診療・治療実績

平成29年の手術件数は約240例で,その内訳は肺癌が112例と最も多く,他は,自然気胸,縦隔腫瘍,良性肺腫瘍,膿胸などです。

設備等

  • 病床数 6床
  • ハイビジョン胸腔鏡システム
  • 直径3mm鏡視下手術システム
  • 縦隔鏡手術システム
  • ロボット手術支援システム
  • ハイブリッド手術室

主な対象疾患と治療

肺癌

超高齢者の肺癌症例や,CTの普及による小型肺癌症例の増加により,従来からの肺葉切除だけでなく,区域切除術などの縮小手術を積極的に導入しています。病気や手術について,患者さんとご家族が納得いくまでお話しさせていただき,侵襲の低減と安全性・根治性に配慮して,主には胸腔鏡下手術と小開胸手術から,手術術式を決定しています。胸腔鏡下手術では最も大きな傷で約4cm,小開胸手術でも,傷の長さは約10 cm前後と小さく,術後約一週間で退院可能です。また,手術支援ロボットを用いた肺癌手術の導入を行っています。これにより更なる低侵襲化と安全性の両立を目指しています。肺癌に関してはテクニカルタームのところで詳しく説明してありますので御参照ください。

気胸

高齢者を除いて全例に胸腔鏡手術を行っています。若年者では,入院期間の短縮に努めており手術翌日の退院も可能です。細径(3.0mm)の胸腔鏡と器具を用いることにより,創痛の軽減だけでなく美容的にも有効な結果を得ています。

胸腺腫・縦隔腫瘍

縦隔鏡視下手術を導入しています。当科では縦隔鏡を積極的に用い,従来は胸骨を切開しなければ,手術できなかった症例が,胸骨を切断することなく,みぞおちの小切開と胸壁の2~3cmの傷で,従来と同等の治療を行えるようになりました。また,周囲臓器に浸潤した症例では,術前後の化学療法や放射線療法などを組み合わせた集学的治療を行っています。現在,当院ではロボット支援システムを用いた胸腺摘出術が医療保険でできるようになりました。詳細はテクニカルタームを御参照ください。

気管・気管支狭窄 (良性疾患によるもの)

結核や炎症性疾患の後遺症など,良性疾患による気管・気管支狭窄に対しては,当科で治療にあたっております。治療法として狭窄部位の外科的切除に加えて,気管支鏡下での拡張とシリコンステントの挿入を行っています。これにより,従来は救命が困難であった,炎症性に硬化した10cmを越える狭窄に対しても,治療が可能になりました。

呼吸器内科的疾患

悪性リンパ腫やサルコイドーシスなどは縦隔鏡,間質性肺炎などは胸腔鏡にて確定診断を行っています。ほぼ全例,数日以内の退院が可能です。

胸部外傷

高度救命救急センターが対応し,緊急手術例に対しては当科が待機しています。

テクニカルターム

肺癌診療

傷の変遷

図1 傷の変遷

VATS用器具

図2 VATS用器具

胸腔鏡下手術

図3 胸腔鏡下手術

ハイブリッド手術室

図4 ハイブリッド手術室

がんを患っている患者さんの数は,男性では胃がん,女性では乳がんが一位です。しかし,男女合わせた死亡者数は1998年から肺がんがトップを独走しており,年間70,000人以上の命が奪われています。我々,肺がん治療に携わる医師の目的は,このような患者さんを一人でも減らすことです。現在のところ,どんな肺がんにも100%効く薬は無いので,治療の第1選択は切って取ること,すなわち手術になります。

肺がんの手術治療
肺がんを手術で治療するためには,がんを含めて肺を切除します。肺は肋骨(あばら骨)に囲まれた硬い胸壁(胸の壁)の中にあります。肋骨の間から手を入れて手術をするためには,長さ20cm~50cmの傷と1~2本の肋骨切断を必要とします。これを開胸手術,あるいは標準開胸手術といいます(図1-a)。道具と技術の進歩により傷を次第に小さくしていき,同様の肺がん手術が10~20cmの傷でできるようになりました。これを小開胸手術と呼んでいます(図1-b)。ずいぶんと傷は小さくなりました。次に胸腔鏡と呼ばれるカメラが登場し,肺がん手術は劇的に進化しました(図2)。当院では1~4cmの傷,3か所で肺がんの手術を行っています(図1-c)。この3か所の傷からカメラと器具を挿入して肺がんの手術を行います(図3)。これを胸腔鏡下手術(VATS; Video Assisted Thoracic Surgery)と呼びます。開胸手術と傷を比べて,どちらが低侵襲,すなわち体に負担の少ない手術かお分かりになるでしょう。全ての肺がん手術が胸腔鏡で出来るわけではありませんが,当院の肺がん手術の約90%は胸腔鏡下手術です。
現在,当院ではさらなる安全性と正確性を求めて,ロボット支援手術に取り組んでいます。医師がロボットの腕を操って手術を行います。胸腔鏡の器具と異なりロボットの腕の先には小さな関節がついていて,あたかも手首のように動くのです。これによって正確で安全な手術操作が可能になります。現在,当院には最新のロボット支援システムであるダビンチXi®(詳細はロボット支援手術を御参照ください。)があり,このシステムを肺がん手術に導入すべく申請中です。

小さな肺がんも逃がしません=ハイブリッド手術室=
胸のCT検査が簡単にできるようになり,肺がんも早期に発見できるようになりました。一方で直径10mm前後の”影“が見つかることも増えてきました。このような影も,肺がんが疑われる場合には診断と治療を兼ねて手術が必要になることがあります。しかし胸腔鏡では見えませんし,手を入れて触っても触れないことがあります。こんな場合,当院では手術中にCT撮影のできる手術室,通称”ハイブリッド手術室(図4)”を用いて手術を行っています。つまり小さな肺がんも手術中にCTという”眼“を使って見逃さず正確に切除できるのです。

ロボット支援手術

ダビンチ

ダビンチXiサージカルシステム

2018年4月より縦隔腫瘍や胸腺摘出術に対して,当院は認定施設として「ダビンチ Xi」を用いた手術を医療保険で行えるようになりました。
現在,外科手術における低侵襲化(=体に優しい手術)が進んでいます。同じ手術を受けるのであれば,小さな傷でより低侵襲体な手術を望むのは当たり前のことです。縦隔に対する手術も同様で,以前の胸骨正中切開から,カメラを用いて肋骨弓下(“みぞおち“のことです)の小さな傷で同等の手術が行える縦隔鏡下手術へと進化してきました(縦隔鏡手術を御参照下さい)。そして,ロボット支援手術は,今までの縦隔鏡下手術の利点をさらに向上させ,より安全に手術を行える技術であると考えています。

当院には最新の手術支援ロボットである「ダビンチ Xiサージカルシステム(Intuitive Surgical,Sunnyvale,CA)」があります。ダビンチは,多関節を持つロボットアームと鮮明な3次元画像を有した,最先端の手術支援システムです。

例えるなら,今までの縦隔鏡手術は“さい箸”を用いて,その先にある腫瘍や胸腺を切除していたのに対し,ダビンチでは外科医の“手”を縦隔に入れて手術を行っているようなものです。この違いは“手”には手首があり,狭いスペースで手術器具を自由に動かせる点にあります。このため,さらに正確な手術が可能となり,ひいては安全な手術を提供できると考えています。

前縦隔とは,胸骨という“天井”と,左右は肺という“壁”に挟まれ,“床”は心臓で出来ているという,非常に狭くデリケートな場所です。この狭い場所に腫瘍を切除するうえで,“手首”の役割を担う多関節を有する手術支援ロボット“ダビンチ”は,高い操作性により正確で安全な手術を行うことが可能にすると考えています。

さらに当院では平成27年12月に最新の手術支援ロボット「ダビンチ Xi(da Vinci Xi)」を導入しました。これは従来のダビンチシステム=「ダビンチ Si」をあらゆる面で凌駕しており,手術の安全性を担保する上で患者さんにとっても大きなメリットになります。
2018年4月より縦隔腫瘍や胸腺摘出術に対して,認定施設として「ダビンチ Xi」を用いた手術を医療保険で行っています。現在,肺癌に対する手術にもこの手術支援ロボットの導入を目指しています。
呼吸器外科のダビンチロボット支援手術に関するお問い合わせは,沼波(ぬまなみ)までお願いいたします。

縦隔鏡手術

傷正中切開

傷正中切開

主には縦隔腫瘍に用いる。肋骨弓に設けた約3cmの切開創よりカメラを挿入し,鏡視下にて腫瘍および胸腺の切除を行います。従来は胸骨縦切開(胸骨を縦に割って胸の中へ到達する)を必要とした症例に,胸骨を切断することなく,肋骨弓下(みぞおち)の小切開と胸の0.5~1cmの傷で同等の治療を行えるようになりました(図)。さらに,当科では肋骨弓下の傷のみで行う縦隔腫瘍切除術=シングルポート手術にも取り組んでいます。

デューモンステント(Dumon stent)

傷ラパロリフト

傷ラパロリフト

ステント拡張術

狭窄した気管・気管支に挿入し,これを拡張するための管の一つです(図)。シリコンでできており,金属製のステントとは異なり,一定の拡張が得られた段階で抜去できます。当科では主に,結核などの炎症性疾患後の気管・気管支狭窄に用いています(図)。ステントは一定期間で抜去しますが,ステント抜去後も気管の拡張は保たれます(図)。

キーワード

呼吸器外科,肺癌,転位移性肺腫瘍,気胸,嚢胞性肺疾患,胸腺腫,縦隔腫瘍,結核,膿胸,胸部外傷,手掌多汗症,胸腔鏡手術,縦隔鏡手術,シングルポート,開胸手術,低侵襲手術,放射線療法,化学療法,免疫療法,肺,縦隔,胸郭,胸壁,手術支援ロボット,ダビンチ

医療連携について

近隣の医療機関と連携をとって治療にあたっています。手術後にお近くの病院で治療していただくことも可能です。受診の際に直接,担当医に御相談下さい。

関連リンク