消化器内科
大学病院
理念
当科は,従来,旧第1-4内科の中にあった消化器診療グループを統合し,2001年04月から新たに消化器内科として発足しました。これにより,当科の診療内容が院外の人々に対してわかりやすくなったことに加え,内部的にはこれまで別々に培ってきた専門的知識や技術が統合されたことにより消化器疾患の全てをカバーする診療が可能になりました。
さらにこれを契機として消化器外科や放射線科など,関係する他の診療科と協力して定期的に症例検討会や院内研究会を設ける機会が増え,疾患の病態に応じた適切な検査や治療を行うことができるようになりました。これらの環境がもたらすメリットは,個々の症例の病態・病期に応じた適切な診療を時期を失することなく行うことができる体制になったことです。
これらを踏まえて,診療に対する私どもの理念をあげるならば,まず,スタンダードなレベルの診断と治療が提供できること,さらにスタンダードのレベルに安住するだけでなく症例によっては,より高度なレベルの診療が提供できるように継続的に努力を怠らないことであります。しかし,高い診療レベルのみを追求するばかりでは人間不在の診療に陥ることもあるため,患者さんにとって総合的に満足されるバランスのとれた医療を提供することを目標としています。
キーワード
消化器疾患全般(肝臓,胆嚢・胆管,膵臓,消化管),慢性肝疾患外来,消化器運動外来,炎症性腸疾患外来,胃瘻外来,胸やけ外来
スタッフ
診療時間・外来担当一覧
診療内容
肝疾患
■急性肝炎,劇症肝炎
急性肝炎の原因としては,肝炎ウイルスや薬剤によるものが多くを占めていますが,これらの中から原因を正しく診断し,最も効果的な治療法を選択し実践することを心がけています。また,劇症肝炎に移行した場合や,重症化の予測により劇症肝炎に移行する可能性が高いと判断された場合には,救命のため血漿交換などの人工肝補助療法も積極的に行っています。さらに最近では消化器外科とも連携し,生体部分肝移植の体制を当院に確立すべく準備を進めています。
■慢性肝炎
慢性肝炎のほとんどを占めるC型肝炎性肝炎では,ウイルスの種類,型,量に応じて,各種インターフェロンや抗ウイルス薬等を適切に使い分けた治療を心がけています。また, B型慢性肝炎に対して病態に応じて抗ウイルス薬やインターフェロンによる治療も行っています。ウイルス性以外の慢性肝疾患では,自己免疫性肝炎や原発性胆汁性肝硬変などの,いわゆる難病に対しても最新の知見に基づいた治療を行っています。
■肝硬変
慢性肝炎の終末像としての肝硬変に対しては,肝不全への進展を予防するための治療を行っています。さらに,肝硬変に移行した場合には肝癌の発生が懸念されるため,肝硬変の進行を抑制し,発癌を予防するため抗ウイルス剤などを併用して炎症の沈静化を目指します。不幸にして癌が発生した場合においても,腫瘍が小さい時期に発見されれば治療の選択肢の幅が広いので癌の早期発見を心がけています。
■食道静脈瘤
肝硬変に合併する食道・胃静脈瘤に対しては,内視鏡的に食道静脈瘤硬化療法(EIS),食道胃静脈瘤結紮術(EVL)やカテーテルによる治療(BRTO,PTO)などを積極的に行い,静脈瘤破裂の予防や治療に努めています。
■肝細胞癌
肝細胞癌の治療に関しては,消化器外科や放射線科の専門医と定期的な検討会の機会をもうけており,個々の症例ごとに分野を越えて最善の治療法が行えるように努力しています。内科的治療法では,ラジオ波焼灼療法(RFA)を主体として行っています。この他に症例に応じて,経皮的エタノール注入療法(PEIT)や経皮的マイクロ波凝固療法(PMCT)または放射線科と協力して選択的肝動脈塞栓術(TAE)や動注化学療法などの手法も併用した集学的治療を行っています。また,超音波ガイド下では治療困難な症例に対しても人工胸水の注入やCTガイド下など種々の工夫を加えてRFAを施行しています。さらに,治療効果を確認するための造影超音波検査を積極的に行ない,治療が不十分であると判断された場合には早めに追加治療行うようにして入院期間の短縮を心がけています。また,最近ではCTやMRI画像と連動したエコー像を構築して,エコーでは見えない肝癌も正確にRFAを施行できるRVSなどの新しい検査方法も施行しています。
■肝疾患患者への支援
肝疾患の患者会である愛知県肝友会と連携し,療養相談会で患者さんの疑問や相談にお答えするとともに,最新の医療情報を提供することで,患者さんと医療側が一体となって病気に取り組み,患者さんが安心して治療を受けられる手助けを行っております。
胆膵疾患
■胆石,胆のう炎
胆石に続発する胆のう炎や胆管炎では症状も重篤であり,特に高齢者では生命にかかわる場合があります。したがって,全身状態の改善を図るために,経皮経肝胆道ドレナージ(PTCD)や内視鏡的逆行性胆管ドレナージ(ERBD)などの内科的治療を,時期を失することなく行うよう心がけています。治療を要する総胆管結石では,内視鏡的乳頭切開術(EST)や内視鏡的乳頭バルーン拡張術(EPBD)を適切に選択して行っています。
■膵炎
急性膵炎では一部に重症化する症例があり予後が不良であるため,適応があれば動注療法や持続的血液濾過透析(CHDF)も積極的に行っています。慢性膵炎では症状軽減のため,膵管ステントなどの手技も導入しています。また,最近注目されている自己免疫性膵炎に関しては,その病態の解明と治療法の確立をめざして症例の集積を図っています。
■胆管癌,胆のう癌,膵癌,乳頭部癌
この領域の悪性疾患は,症状が出現したときにはすでに手遅れの場合が多いため,早期診断と早期治療を心がけた診療を行っています。治療法の選択には患者のQOL(生活の質)を考慮して,特に手術不能例に対してはステント留置など種々の内視鏡的治療手技を積極的に導入しています。
消化管疾患
■食道癌
食道癌の診療では,超音波内視鏡(EUS)などの検査を行った上で適応のある症例に対しては内視鏡切除を行っています。一方,切除不能の進行癌に対しては狭窄部にステントを留置するなどQOLを重視した治療を心がけています。
■胃・十二指腸潰瘍
胃・十二指腸潰瘍に対するヘリコバクター・ピロリの除菌治療を積極的に行っています。また,出血性潰瘍に対しては早期に緊急内視鏡検査とこれに引き続き内視鏡的止血術を行い,開腹手術に移行する症例を減らすことを目標としています。
■胃癌
胃癌の診断では,X線・内視鏡・EUSを駆使して正診率の向上に努めています。早期胃癌の治療では,これまで多数例に内視鏡的粘膜切除術(EMR)を積極的に施行しています。最近ではESDを導入して比較的大きな早期胃癌に対しても切除率の向上を図っています。一方,手術不能の進行胃癌に対しては抗癌剤による治療を行っていますが,標準的な抗癌剤治療以外にも症例に応じて抗癌剤の組み合わせを工夫して治療を行っており,現在まで良好な成績を得ています。
■大腸癌,大腸ポリープ
大腸の腫瘍性疾患に対しては多数の内視鏡治療を行っており,これらの経験症例を分析することにより大腸腫瘍切除後の最も効率的な経過観察方法を検討し実践しています。
■逆流性食道炎,胃食道逆流症
近年,わが国においても増加している逆流性食道炎および胃食道逆流症に対しては24時間pHモニタリングや食道内圧測定などの機能検査を行い,これらの結果を基礎として個々の病態に応じた治療を行っています。また,経内視鏡的噴門部縫縮術(ELGP)も行っております。
■炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎,クローン病)
いわゆる難病である炎症性腸疾患の治療では,標準的治療法はもとより,早くから白血球除去療法(LCAP,GCAP)を導入しています。また,病変が直腸ないしS状結腸に限局している比較的軽症例に対しては,エカベト・ナトリウムやレバミピド注腸療法を試みており,副作用の心配の少ない治療法を検討しています。
診療実績
2010年度実績
| 内容 |
件数 |
| 入院 |
66.2人/日 |
| 外来 |
121.9人/日 |
内視鏡関係では検査総数は7778件であり,その内訳は上部4400件,下部2371件。この中には救命救急科やその他の診療科からの依頼による消化管出血に対する緊急内視鏡検査および内視鏡的止血症例も相当数含まれています。この他に内視鏡的逆行性胆管膵管造影(ERCP)395件,超音波内視鏡検査(EUS)136件,超音波内視鏡下針生検(EUS-FNA)36件,小腸内視鏡71件,カプセル内視鏡56件を行いました。内視鏡治療では胃粘膜切除術剥離術(EMR,ESD)50件,経内視鏡的噴門部縫縮術(ELGP)1件,食道胃静脈瘤結紮術硬化術(EVL,EIS)39件,大腸ポリープ切除術431件,胃瘻造設術(PEG)139件,乳頭括約筋切開術(EST)165件,内視鏡的胆道ドレナージ(EBD)93件などを行っています。また,肝臓癌の治療では,これまでRFAを中心とする局所療法を数百例以上に行ってきましたが,重大な合併症は経験していません。
地域医療連携への取り組み
診療実績にも示したように,当科外来の患者紹介率は40%を越えています。また,紹介された患者さんを紹介元へお返しする逆紹介も積極的に行っています。今後も地域の開業医の先生方と密接な連携を心がけて行きたいと考えています。
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