免疫学分野
病原体認識分子群であるTLR(Toll- like receptor)のうちTLR4に会合する分泌タンパクMD-2は、エンドトキシンショックの原因であるリポポリサッカライド(LPS)に直接結合してLPSを認識します。またTLR4同様22個のロイシンのくりかえしモチーフ(LRR,ロイシンリッチリピート)をもつRP105に会合する分泌タンパクMD-1にはリン脂質が結合します。これらのことは構造解析の結果でも報告されています。抗RP105抗体によりRP105/MD-1複合体が架橋されB細胞に強い活性化が誘導されますが、現時点ではそのメカニズムはわかっていません。またB細胞においてRP105/MD-1はTLR4/MD-2を介するLPS応答を増強させる方向にはたらきますが、そのメカニズムもまだわかっていません。
このようにMD-1, MD-2は病原体認識分子に会合する分子として発見されましたが同時に脂質会合分子でもあり、その生体における意義に関してはまだよくわかっていません。最近TLRの中でも特にTLR2,TLR4に関しては生体内の分子も認識して活性化されるという報告が多く認められるため、微生物の暴露のない非感染状態であっても生体内脂質が結合してMD-1,
MD-2を介する活性化反応が生体内で常に生じている可能性が考えられます。このような元来体の中に存在する脂質による活性化反応は、生体にとって益なのか害なのかに関して解析し、疾患発症へどのように結びついていくかを明らかにすることを目的としています。
具体的には以下の項目に関して現在解析を行っております。特に1.に関しては東京大学医科学研究所や愛知医科大学臨床教室との共同研究にてマウスだけでなくヒトに関しても解析を進めております。
1.脂質会合分子による免疫制御機構
2.陰性荷電リン脂質による TLR活性化及び制御機構
3.補体結合分子によるTLR制御機構
寄生虫学分野
今日の日本では寄生虫症は大変稀な疾患と考えられがちですが、近年のグロバール化に伴い日本人の海外渡航者や海外からの移住者は大幅に増加しており、グルメ志向や輸入食品流通の増加、ペットの飼育などが原因となる寄生虫疾患は増加しています。途上国では依然として寄生虫感染者が数十億人もいて大きな社会的問題となっています。
この他に、国内でも蚊によって媒介されるデング熱が流行し、新たにダニによって媒介されるSFTS(重症熱性血小板減少症候群)の国内感染が確認されるなど、これら蚊やダニなど衛生動物による感染症も公衆衛生上見過ごすことが出来ない重要な課題の一つです。寄生虫学分野では、これらの原虫、蠕虫、衛生動物問題の解決に役立つことができるよう国内や海外で研究をしています。