クリティカルケア看護学領域<診療看護師コース>

本領域では,(1)厚生労働省認可の看護師特定行為研修教育 (2) 日本NP教育大学院協議会が指定する診療看護師教育カリキュラムの基準を満たす大学院NP養成コース教育 (3) 基礎看護学,臨床看護学に関する研究と修士論文作成の3つの教育を柱として,高度な知識,技術,判断力を学び高い臨床実践能力を育成するとともに,研究活動を通じて広い視野を身につけることで,チーム医療の中心的役割を果たすことができるリーダーシップを備えた人材の育成を目指しています。診療看護師コース修了生の中には,愛知医科大学病院において,周術期医療に携わっている修了生もいます。修了生が実績を積むことで,診療看護師の必要性についても評価されています。また,急性期周術期医療での経験は,プライマリケア領域に,今後進む上でも生かすことが可能です。診療看護師コース修了者は,高度な思考力・判断力,実践力を備えた看護師として,多くの課題を抱える日本の医療福祉においてチーム医療の中心的役割を果たすことができる人材になると確信しています。              (クリティカルケア看護学 教授 小松 徹)

教育方針

診療看護師コースでは,急性期医療領域において看護学を基盤とした包括的アセスメントに基づいた高度な看護実践力を有し,医師との協働による治療プロセスを実践し,チーム医療の中心的役割を果たすことができる診療看護師を育成することを目標としています。

活動・研究内容

学生活動

在学生の声「M1:吉家さん」

画像説明

若い頃から希望していた訪問看護師として,私が働き始めたのは,出産と子育てが落ち着いた時期からです。働き始めた私は,想像以上にあらゆる場面で,看護能力が求められる仕事に,これまで経験だけでしか判断が出来ない自分の知識と能力のなさを思い知りました。そのような状況の中で,どんどんと,きちんとした環境でもう一度学び直したいという想いが膨らみました。その想いは,ある在宅医師との出会いによってさらに大きく膨らみました。 医師は対象者の病態に変化があった時,知り得た情報をもとに私がアセスメントした報告と,どんな治療が必要であるかを常に私に問いかけました。しかし,私には適切な判断をするために必要な幅広い知識とアセスメント能力が不足しており,十分な答えを返すことが出来ませんでした。私は,在宅看護の仕事を通じて高度な医学的知識技術を修得でき,更に看護を融合させることが可能な大学院で学びたいと思いました。それから数か月後,入学試験に合格し,学ぶ機会を頂きました。 入学にあたり,夫と二人の子供にはこれまでのように手をかけることは出来ないと考え,半年前から生活面での自立を促しました。勉強面では,これまで以上に勤務する中で気になることの意味や理由を考えるとともに,日常のふとしたことを研究材料にならないかと意識するようにしました。 そしてこの春,周囲からは無謀な挑戦だと笑われもしましたが,大きな期待と喜びを胸に大学の門をくぐりました。しかし,喜びも束の間。PCの取扱いから,医学生が受講する講義への参加,看護研究課題への取組みなど,全てが初めてのことばかりで気後れし,場違いな所へ来てしまったと,喜びは不安へと変わりました。入学後,何度辞めようと考えたかしれません。しかし,一緒に入学した仲間が,「助けあって一緒に卒業しましょう!」と言ってくれました。また,指導してくださる先生の細かな配慮もあり,改めてこの大学院で学べることに感謝しました。これからも,幾度となく谷底に落ちることになるかもしれません。しかし,在宅医療に貢献したい気持ちを強く持ち,根拠に基づいた診断や判断ができる診療看護師となることを夢みて,今後も,志高く仲間と恵まれた環境で共に学びたいと思います。

在校生の声「M2:桑原さん」

画像説明

看護師として経験を重ねていくとともに,患者や家族にとって身近な存在である看護師として,もっと自分にできることはないかと日々考えていました。そのようなときに,高い意識と技術を持った看護師として,患者にcareとcureを提供する米国のNurse Practitionerの存在に,看護の新しい可能性を感じ,自身のスキルアップを目的に進学を決めました。 進学の準備として,日常で関る症例を題材に,生理学や病態生理学についての基礎知識を勉強し直すなどを行いました。職場や家族に対しては,進学の理解を得るために,自身の看護に対する思いや,これからの看護師の可能性について説明しました。 今こうして,大学院生として学ぶことができるのは,職場の理解や支えてくれる家族の協力のおかげです。 1年次は,診療看護師に必要とされる3P(Physical Assessment / Pharmacology / Pathology)を中心に講義が展開されました。また,演習を通して,特定行為のスキル習得を行いました。このような講義課程を通じて,医師の思考過程を理解し,医学的知識をもって特定行為を行うことは,効果的で安全な診療の補助が可能になると実感しています。 本学は医学だけではなく,看護学を深く学ぶことも充実しているため,看護師として看護の本質とは何かをあらためて振り返ることで,診療看護師の役割について考えることが出来ました。 当初は医学教育と看護学教育の違いにとまどい,講義から得られる大量の情報を理解するのに苦労しましたが,充実した学習環境のなかで新しい知識を学ぶことは,とても刺激的で,学ぶ楽しさと充実感で,あっという間の1年間でした。 診療看護師の役割は,医学と看護学の両方向からの視点で全人的に対象をとらえ,臨床推論のもと,特定行為を含めた医療の展開を実践していくことだと思います。そして,その役割は,多職種との協働のなかで発揮されるものであり,課程修了後は,チーム医療を担う一人としてがんばりたいと思います。

修了生の声「H27年度:布目さん」

画像説明

入学時は,新しい分野へ挑戦する不安と楽しみが入り混じっていました。入学後に学ぶ医学知識は看護で学ぶ知識に比べるとより深い内容となっており,診療看護師コースに入学したことで,今まで学んできた知識の無さと薄さを思い知らされました。私は,コース修了後に直ぐに自施設に戻るのではなく,周術期管理に関する知識・技術をより多く学ぶことが出来る愛知医科大学病院にて半年間の麻酔・集中治療の研修を行いました。半年間の研修終了後に自施設へ戻り,今は,診療看護師として,看護部に所属しながら実践を行っています。実践内容としては,3回/週は,手術室看護師として看護実践を行い,2回/週は診療看護師として麻酔科医師と共に麻酔管理の業務を行っています。麻酔管理業務では,麻酔科医師により指示された症例に対して,術前診察を行い麻酔計画の立案を行います。それと同時に手術室看護師として患者への説明と観察を行い,看護師としての看護計画の立案も行っています。医師とは異なり,看護の視点も踏まえた判断を医師や看護師へ報告し,麻酔管理方法・看護計画を決定します。 麻酔導入時・抜管時は麻酔科医師とともに行いますが,手術中は診療看護師による患者管理を行っています。医師へは,異常時だけではなく,定期的に報告を行うことで安全に麻酔管理を行うように心がけています。手術後は術後診察を行い,自身が実践した内容を常に振り返るようにしています。 活動を始めて半年ですが,診療看護師が麻酔科業務を行っていくことで,緊急手術への迅速な対応や麻酔科管理ではない自科麻酔が減少するなど,病院での医療の質の向上に繋がるとともに,診療看護師として麻酔科医・外科医,看護師に働きかけることで,これまで以上に,チームで協働する機会が増え,よりよい医療と看護を患者へ提供できるようになってきました。今は,手術室やHCUへの勉強会や複数の部署間で行う症例検討などの企画・運営を行うことで,診療看護師としての役割や業務,連携がより広く認知されるように働きかけています。

修了生の声「H28年度:高林さん」

画像説明

看護学部生の頃,診療看護師が養成されるという情報を知り,患者さんに最も近い立場である看護師が医学的な医療も提供できたら患者さんにとって心強いのではないかと思い,診療看護師を志しました。そして,5年間の看護師経験を積んだ後,大学院に入学しました。入学時は長年の夢であった診療看護師の資格を取得できるという思いと,まだ日本で認知されていない診療看護師としての活動をどのように行っていくのかという不安がありました。 しかし,愛知医科大学大学院では,卒業した診療看護師が在学生を含めて活動状況の報告会を行っており,在学中に愛知医科大学病院や他院で実際に活動している診療看護師の活動状況を聞く機会があり,少しずつ修了後の活動をイメージすることができました。 大学院を修了し,診療看護師の資格取得後は,看護部に所属しながら,麻酔科業務を行っています。手術室・GICUでは,患者の術前評価から術中・術後の患者管理方法を考え,患者の周術期を通して,医師と協働して治療と看護が提供できるように日々活動しています。看護師として一部署に所属しているときは,部署内での活動に留まり,患者の周術期を通して看護することができませんでした。しかし,現在は,1人の診療看護師が術前から術中・術後までの患者管理を行うことで,術前・術中・術後を通して継続性のある看護実践ができるようになりました。今後も医学と看護の双方の視点を持って周術期看護の質向上に貢献できる活動を目指して,日々努力していきたいと考えています。

卒業後の活動

「卒業生の進路状況」

  • 愛知医科大学病院 看護部・麻酔科
  • 独立行政法人地域医療機能推進機構 中京病院 看護部・心臓外科
  • 名鉄病院 看護部・麻酔科
  • 社会医療法人大雄会 総合大雄会病院 看護部(救急外来)


愛知医科大学NP研究会(ANP研究会)

愛知医科大学では,ANP研究会を立ち上げ2か月に1回のペースで研究会を開催しております。現在は,まだ診療看護師の数も少なく,修了された方の多くがそれぞれの施設において,1人で活動しています。1人で何もないところから活動するためのシステムを作り,実践を行っていくのは容易ではありません。そこで,先輩修了生が,後輩修了生をサポートするとともに,相互に情報交換をすることが可能な場を作ることを目的として研究会活動を行っています。 主な活動内容は,病院施設において診療看護師活動のシステムを立ち上げるための情報提供や,卒後臨床研修プログラムの作成,業務規程や特定行為手順書の作成方法などを情報交換会や勉強会の形式で行っています。この他にも,実践報告や共同研究としてデータ収集や,自施設ではできない研修を他施設で行う取組みも実施しています。 自施設に戻った際に,診療看護師が1人になったとしても,皆で協力しサポートできる活動を行っていますので,修了後も1人ではない安心感と心強さがあります。 研究会には,資格の有無に関わらず大学院生も参加していますので,在学中から修了後に想定しえる様々な情報を得る場にもなっています。

NP教育および特定行為研修にかかわる講演会/特別講義の開催実績

画像説明

H26.8.2  特別講義「チーム医療における高度実践看護師の現状と課題」
H27.9.12 特別講義「高度実践看護師の現状と課題」
H28.5.21 ウィンクあいち 研究科セミナー「特定行為研修修了者の役割」
H28.6.18 特別講義「診療看護師(糖尿病看護領域)の活動の実際」

修了生課題研究論文テーマ

  • 先天性心疾患患児への術後看護に関する文献研究
  • 特定行為に係る看護師に関する文献研究
  • 集中治療中に終末期を迎えた患者の家族ニードに関する文献研究
  • わが国の手術室における医療安全に関する文献研究
  • チーム医療における医療者間のコミュニケーションに関する文献研究
  • わが国の救急外来におけるトリアージに関する文献研究
  • 集中治療におけるせん妄に関する文献研究
  • 看護を基盤とした診療看護師による全人的アプローチの探索

スタッフ紹介

氏名 職名 専門分野
小松 徹 教授 周術期
松月 みどり 教授 救急看護学,医療安全管理学
山中 真 准教授 医療安全管理学
黒澤 昌洋 講師 理論看護学,クリティカルケア看護学

研究テーマ

氏名 研究テーマ 参考文献(URL)
小松 徹
  • 麻酔と自律神経活動
  • 超音波ガイド下末梢神経ブロック
  • バランス麻酔
松月みどり
  • 拡張的学習としての特定行為研修制度
  • 看護ケアの組織化,組織行動のマネジメント
  • 看護の質評価とデータベース
山中 真
  • 転倒/転落による外傷評価
  • 看護技術の可視化
黒澤 昌洋
  • 診療看護師・看護特定行為教育・実践に関する研究
  • クリティカルケア患者の経験に関する研究
  • 麻酔と自律神経活動に関する研究

カリキュラムの特色

  診療看護師コースでは,修士の学位に加えて,日本NP教育大学院協議会が定めた標準カリキュラムに基づき,日本NP教育大学院協議会日本NP資格認定試験受験資格を得ることができるとともに,厚生労働省特定行為指定研修機関として特定行為38行為21区分の研修を行っています。
  看護理論,看護倫理,看護研究方法論をはじめとした看護系科目では,診療看護師の実践を探求する基礎的能力を修得します。チーム医療特論などの共通科目では,チーム医療・多職種協働を実践できる知識と思考を修得します。専門科目の病態生理学特論,臨床薬理学特論,疾病特論,臨床推論,フィジカルアセスメント演習,呼吸器・循環器治療のための実践演習などでは,診療看護師に求められる知識と技術を修得します。
  看護系科目による看護学の学びとともに,医学に関する学びは,医学部講義を一部受講し医学部生と学びを深める,各専門領域の医師による講義・演習,大学病院での演習・実習,特定行為に関する局所解剖演習を行うなど,医学部・大学病院を併設するメリットを生かした教育を行っています。また,多くの診療看護師が非常勤講師となり,診療看護師の視点から必要な実践的内容を教育しています。総合学術情報センター,シミュレーションセンターなど充実した教育環境は,診療看護師に必要な学びを支援してくれます。

年間スケジュール

3つのポリシー(診療看護師コース)

高度実践看護師(診療看護師)コースにおいては,研究科のポリシーに加え,次のとおり独自のポリシーを設定している。


卒業認定・学位授与の方針(ディプロマ・ポリシー)

  急性期医療領域における高度な看護実践並びに課題解決と看護の質向上を推進していくために,以下の能力を身につけたものに学位,特定行為研修修了,日本NP大学院協議会日本NP資格認定試験受験資格を授与する。

  1. 包括的健康アセスメント能力
  2. 医療処置管理の実践能力
  3. 熟練した看護の実践能力
  4. 看護管理能力
  5. チームワーク・協働能力
  6. 医療保健福祉の活用・開発能力
  7. 倫理的意思決定能力

教育課程編成・実施の方針(カリキュラム・ポリシー)

  急性期医療領域における高度な看護実践能力を修得するために,以下の方針に基づき教育課程を編成する。

  1. 診療看護師教育課程基準に基づいた共通科目,専門科目(実習,課題研究を含む)で構成する。
  2. 共通科目では,看護理論,看護倫理,看護研究方法論をはじめとした看護系科目により,診療看護師の実践を探求する基礎的能力を修得する。また,チーム医療特論,医療安全・看護管理特論,保健医療福祉システム特論により,チーム医療・他職種協働を実践できる知識と思考を修得する。
  3. 専門科目では,講義科目として診療看護師総論,病態生理学特論,臨床薬理学特論,疾病特論により,看護師に求められる知識と技術の基盤を学習する。
    演習科目としては,臨床推論,フィジカルアセスメント演習,呼吸・循環器治療のための実践演習をはじめとした科目により,診療看護師に求められる知識と技術を修得する。
    実習においては,診療看護師の役割を担うための実践力を養う。
    これらの教育課程においては,厚生労働省特定行為研修指定研修機関としての特定行為38行為21区分の研修を含む。

入学者受入れの方針(アドミッション・ポリシー)

  診療看護師コースでは,急性期医療領域において包括的アセスメントに基づいた高度な看護と,医師との協働による治療プロセスを実践できる診療看護師を育成することを目標としている。そのため,以下のような資質と経験を有する人材を求める。

  1. 急性期医療領域における知識と実践経験を有する者
  2. 診療看護師として,急性期医療領域における看護の発展と役割拡大を目指す意思を有する者
  3. 課題研究に関する展望を持ち,論理的思考力を有する者
  4. 広い視野と探究心を持ち,自ら学ぶ姿勢を有する者
  5. 豊かな人間性と倫理観を備えている者
  6. チーム医療において,多職種と協働できるコミュニケーション能力を有する者

科目概要(診療看護師コース)

*診療看護師コースの専門科目における講義および実習は,昼間に実施されます。

出願資格等

 高度実践看護師(診療看護師)コースに出願できるものは,下記の条件を満たし,募集要項に示した出願資格を有するものとします。

  • 医療機関の急性期領域における看護師としての実務経験を5年以上有する者
  • 修了時まで昼間の就学時間を確保できる者

詳細ついてはこちらをご確認ください。

キーワード

クリティカルケア,診療看護師,看護師特定行為