日本では近年乳がんにかかる人が増加し、女性では胃がんを抜いて最も頻度の高いがんとなりました。
乳がんが増加している原因には、食生活の変化で脂肪分の多い食事が増えていることや、
社会生活の変化で未婚や高齢出産の女性が増えている事などが関係していると言われています。
乳がんのリスクを上げるもう1つの要因は飲酒です。アルコールと乳がんの関係については、これまで主に欧米の疫学研究で調べられてきました。
その結果によれば、飲酒量が増えると乳がんのリスクは直線的に上昇するという量的な関係があり、
少量の飲酒でもリスクが高まる可能性があるとのことです。
しかし、日本人女性を対象として飲酒と乳がんリスクの関係を詳しく調査した研究はまだ見当たりません。
そこで、我々は、信頼性の高い前向きコホート研究のデータ(JACC Study)に基づき、飲酒と乳がん発生リスクとの関係を調べました。
研究結果をがんの専門誌(Int J Cancer 2005年116巻779-783ページ)に発表しましたので結果の概要を説明します。
乳がんリスクは、1日15g以上飲酒で約3倍に上昇
全国24地域に住む40〜79歳の女性約3万6000人を平均して7年半、追跡調査しました。
調査期間中、乳がんになった人は151人。
図1に非飲酒者を1とした場合の、年齢、乳がんの家族歴、初潮年齢、閉経年齢、出産回数、体格指数などの因子を補正した、
飲酒量別グループの乳がん発生リスクを示します。アルコール類には、日本酒、ビール、焼酎などいろいろありますが、
飲んでいる種類にもかかわらず、アルコール度数や飲酒の頻度などから1日の飲酒量を計算しています。
飲まない女性と比べて1日15g未満の飲酒者には乳がんリスクの上昇が見られませんでした。
しかし、1日15g以上飲酒している女性は、飲酒しなかった女性と比較して2.9倍、乳がんになりやすかったことが分かりました。
さらに、1回飲む量との関係をみると、1回23g以上(日本酒1合以上)飲む女性の乳がんリスクも約2倍に上昇しました。

【図1】乳がん発生リスク
なぜ飲酒が乳がんリスクを上げるかについてはまだ明らかにされていませが、
多量の飲酒で乳がんの増殖に関与している女性ホルモンの一種であるエストロゲンが増加するのが原因の一つだと考えられています。
今回の研究では欧米の女性と同じ量を飲酒した場合には、日本人女性の方が欧米人女性より乳がんになりやすいことを示唆しました。
その理由としては、アルコールを代謝する酵素の働きや血中女性ホルモン濃度などに差があることが挙げられます。
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