泌尿器科

現在の高齢化社会により,泌尿器科の重要性が増してきています。我々はそれに伴った排尿障害などの一般泌尿器疾患をはじめ,各種泌尿器癌や結石治療に対して力を入れて取り組んでいます。また,内視鏡手術(ロボット支援内視鏡手術,腹腔鏡手術,レーザー治療)による低侵襲治療を積極的に取り入れ,患者さんのQOL(生活の質)の保持に努めています。

診療部門からのごあいさつ

部長
佐々直人

愛知医科大学病院泌尿器科は、男性、女性、お年の方、若い方の尿に関わる臓器(副腎ふくじん腎臓じんぞう尿管にょうかん膀胱ぼうこう前立腺ぜんりつせん)および男性の生殖器(陰茎いんけい精巣せいそう)を担当する診療科です。悪性腫瘍“がん”をはじめとして、男性の7人に1人は経験する尿路結石(腎、尿管結石)、男性の多くの方が困る排尿障害(前立腺肥大症ぜんりつせんひだいしょう夜間頻尿症やかんひんにょうしょう)、多くの女性が悩んでいる尿失禁にょうしっきん過活動膀胱かかつどうぼうこう、そして骨盤臓器脱こつばんぞうきだつ膀胱脱ぼうこうだつ子宮脱しきゅうだつ)などの診療を行っています。
超高齢化社会を迎え、泌尿器科の関わる患者さんは増加しています。年を重ねると、すべての患者さんは病気に、排尿に、がんに、悩まれます。若い人も、結石の痛み、トイレに悩まされます。実は、女性も排尿はいにょう(おしっこをためること、すること)の悩みが多くて困っています。ある調査によると40歳以上の男女のうち、過活動膀胱かかつどうぼうこう(尿意切迫感にょういせっぱくかん夜間頻尿やかんひんにょう尿失禁にょうしっきんといった症状)でお困りの方が7人に1人いるとされています。
地域の皆様に貢献する、患者さんの中心の地域医療を大事にしながら、未来の泌尿器科診療を担える医師の育成、そして安全かつ安心で、患者さんから、医療者からお互いを信頼、尊重しあえる医療体制システムの構築を目指します。最新の機器を活用した継続しての高度な医療レベルの提供も行って参ります。
さらに、将来に貢献できる新しい取り組み、研究を通じて医療技術の開発(創造性)を目指し、未来の社会へ貢献できればと思います。
年齢を重ねますと必ず病気になり、悩みます。その病気との付き合い方、そしてその解決方法をご相談にお越しください。

主な対象疾患

泌尿器科対象臓器の周囲解剖図

泌尿器科対象臓器の周囲解剖図

  • 悪性腫瘍、がん(開腹手術/ロボット手術、免疫療法、放射線治療)
    腎臓がん、腎盂じんうがん、尿管がん、膀胱がん、前立腺がん、精巣がん、陰茎いんけいがん、後腹膜軟部肉腫こうふくまくなんぶにくしゅ脂肪肉腫しぼうにくしゅ平滑筋肉腫へいかつきんにくしゅなど)
  • ロボット手術
    がん:腎摘除術じんてきじょじゅつ腎部分切除術じんぶぶんせつじょじゅつ腎尿管全摘除術じんにょうかんぜんてきじょじゅつ、前立腺全摘除術、膀胱全摘除術
    良性疾患:水腎症すいじんしょうに対する腎盂形成術じんうけいせいじゅつ骨盤臓器脱こつばんぞうきだつに対する仙骨膣固定術せんこつちつこていじゅつ
  • 尿路結石(内視鏡手術、体外衝撃波結石破砕術たいがいしょうげきはけっせきはさいじゅつ、薬物治療)
    腎臓結石、サンゴ状結石、尿管結石、膀胱結石
  • 排尿障害(内視鏡手術、薬物治療;尿意切迫感、夜間頻尿,排尿困難,排尿時痛,尿失禁,夜尿症など)
    男性:前立腺肥大症、過活動膀胱、神経因性膀胱しんけいいんせいぼうこう(ボトックス治療)、夜間多尿症、ハンナ型間質性膀胱炎かんしつせいぼうこうえん(膀胱内DMSO注入療法)
    女性:骨盤臓器脱こつばんぞうきだつ膀胱瘤ぼうこうりゅう子宮脱しきゅうだつ)、過活動膀胱、腹圧性尿失禁ふくあつせいにょうしっきん(せき、くしゃみでの尿漏れ)、神経因性膀胱しんけいいんせいぼうこう(ボトックス治療)、ハンナ型間質性膀胱炎かんしつせいぼうこうえん(膀胱内DMSO注入療法)
  • 尿路感染症
    腎盂腎炎じんうじんえん膀胱炎ぼうこうえん前立腺炎ぜんりつせんえんなどの尿の通り道の細菌感染症
  • 外傷、緊急性疾患
    外傷性腎損傷がいしょうせいじんそんしょう、腎腫瘍の破裂
  • 一般泌尿器科疾患

高度な専門医療

高度な医療

ロボット手術

当院では,2012年6月から前立腺癌に対して内視鏡手術支援ロボット「ダ・ヴィンチS」での手術を開始しました。2016年内視鏡手術支援ロボット「ダ・ヴィンチXi」へ機器更新、2022年より、内視鏡手術支援ロボット「ダ・ヴィンチXi」2台体制となりました。これにより、がん患者さんへの手術の待機期間の短縮を図っています。

ダ・ヴィンチはロボット部と操作部,助手用のモニターで構成され,ロボット部には先端に鉗子やメスなどを取り付ける3本のアームと1本のカメラが装着されています。術者はケーブルでつながったコンソール(操作台)に座り,中に映し出される3D画像を見ながらアームを操り,患部の切除や縫合をします。
このダ・ヴィンチ手術のメリットは以下の通りです。

患者さんのがんへの安全かつ確実な手術が行えます。
通常の開腹手術と比較して傷口が小さく,低侵襲です。
3次元(立体)画像、拡大視野で手術が行えます。
従来の腹腔鏡の2D画像(テレビと同じ)ではなく,術者は鮮明かつ奥行きがある3D画像(開腹術と変わらない)を見ながら手術を行えます。さらにデジタルズーム機能により画像を拡大することができ,今までは肉眼では見えなかった臓器と臓器の間の膜の構造を認識しながら手術を行えます。精緻な手術が可能となり、がんを制御しながら、可能な限りの機能温存が可能です。
人間の手首以上の可動域がある。
精緻な手術ができる理由は,ダ・ヴィンチの腕が手首を持っていることです。今までの腹腔鏡手術は,手首がありませんでした。ダ・ヴィンチが手首を持つことによって,より複雑な動きを可能にし,従来の腹空鏡手術ではできなかった手術操作が狭い空間でも可能となりました。細かい手術、縫う操作をスムーズにかつ安全かつ確実に行うことができます。
手ぶれが全くない。
ムーブメント効果と言って,術者が実際に動かすスピードよりゆっくりとした大きな操作に変換できるため,細かな操作が可能となります。手ぶれや誤作動を防ぐ装置もあり,微細器官の細かい手術、縫う操作などの作業精度が格段にアップしています。
デュアルコンソールを導入
1台のダ・ヴィンチ を2名の術者で同時に操れるデュアルコンソールを導入しました。患者さんの安全に配慮しながら、全く同じ3D映像を共有し、非常にクリアな音声と共にバーチャルポインターを使い細やかな手術を受けることが出来ます。術者のスキルアップが安全に可能になりました。

これらの恩恵はそのまま患者さんへ還元されます。ダ・ヴィンチシステムを使用した手術は,現在,日本では標準的治療となりました。ロボット手術が可能な手術の適応は年々増加しています。すでに当院でも2012年よりロボット手術を開始し、患者さんにより一層高いレベルの医療を提供することが可能になったと考えています。導入後,我々の手術チームでは,術中の出血も抑えられ,術後の創部治癒や尿禁制に関しても良好な結果が得られております。今後も確実なロボット支援手術に取り組んでまいります。(当院で治療が可能な保険承認されたロボット手術は下記の通りです)

  • ロボット支援前立腺全摘除術ぜんりつせんぜんてきじょじゅつ:前立腺がん
  • ロボット支援膀胱全摘除術ぼうこうぜんてきじょじゅつ体腔内尿路再建回腸導管たいこうないにょうろさいけんかいちょうどうかん新膀胱造設しんぼうこうぞうせつ):膀胱がん
  • ロボット支援腎部分切除術じんぶぶんせつじょじゅつ:70㎜以下の腎がん(詳細後述)
  • ロボット支援根治的腎摘除術こんちてきじんてきじょじゅつ:70mm以上の腎がんなど
  • ロボット支援仙骨膣固定術せんこつちつこていじゅつ骨盤臓器脱こつばんそうきだつ膀胱瘤ぼうこうりゅう子宮脱しきゅうだつ直腸瘤ちょくちょうりゅう)(詳細後述)
  • ロボット支援腎盂形成術じんうけいせいじゅつ腎盂尿管移行部狭窄症じんうにょうかんいこうぶきょうさくしょうに伴う水腎症

ロボット支援腎部分切除術

高齢化が進むなか,慢性腎臓病まんせいじんぞうびょう(Chronic Kidney Disease:CKD)という概念に注目が集まっています。これは腎障害を示す所見や腎機能低下が慢性的に続く状態で,放置した場合,腎不全となって人工透析じんこうとうせき腎移植じんいしょくが必要になることもあります。現在,日本には約1,330万人(20歳以上の成人の8人に1人*一般社団法人 日本腎臓学会 編 (2012) CKD診療ガイド2012/東京医学社より)と多数のCKD患者さんがいると言われています。さらにCKDは,人工透析に至らなくても,心臓病しんぞうびょう脳卒中のうそっちゅうなどの心血管疾患しんけっかんしっかんにもなりやすいことが明らかになり,自覚症状のないうちに診断し適切な治療を行うことが大切です。
近年,超音波ちょうおんぱエコー検査やCT検査などの画像診断の普及に伴い,健康診断や他の病気の検査中に,小さな腎腫瘍じんしゅよう(直径4㎝以下)が偶然に見つかる患者さんが増加しています。小さな腎がんが疑われる患者さんの治療を治す方法は、腎臓の片方すべて、もしくは一部分を摘出する手術が第一選択です。手術後に腎臓がんが治っても、腎臓の機能の低下が起こる危険性があります。すでにCKDの患者さん,若い年齢の方、将来に腎臓の機能を悪くする高血圧や糖尿病を抱える方、メタボリックシンドロームの患者さんの小さな腎がん治療に際しては、手術後の腎機能の温存にも注意する必要性があります。我々が行っているロボット支援腎部分切除術は,手術後の腎機能じんきのう温存おんぞんに有利な手術方法です。ただし,小さな腎腫瘍の全てに腎部分切除が行えるものではありません。腫瘍の位置や、腎臓がんの根治性を損なう危険性があるがんの悪性度あくせいど浸潤度しんじゅんど脂肪浸潤しぼうしんじゅんがあるとステージが3となり、部分切除ぶぶんせつじょには適しません)も重要な条件となります。

骨盤臓器脱の治療

女性の骨盤底こつばんていには、尿道にょうどう肛門こうもんに加えてちつという出口があります。出産や加齢かれいで骨盤を支えている支持組織しじそしきが緩むと、子宮しきゅう膣断端ちつだんたん子宮摘出後しきゅうてきしゅつご場合ばあい)、膀胱ぼうこう、直腸が膣から出てくることがあり、これらの病気を総称して「骨盤臓器脱こつばんぞうきだつ」と呼びます。

正常な位置

正常な位置

膣より飛び出した骨盤臓器(子宮)

膣より飛び出した骨盤臓器(子宮)

骨盤臓器脱こつばんぞうきだつ治療法ちりょうほう
軽症の場合、骨盤底体操こつばんていたいそう(肛門をしめる運動)やリングペッサリー(膣内に入れる専用の器具)などにより治療されます。
中等度以上の場合、手術治療が選択されます。骨盤臓器脱の手術は、大きく分けると、①ご自身の体の組織を用いて治療するNative Tissue Repair (NTR)と②メッシュという網目状の医療用布地を用いる手術があります。当院では、膣閉鎖術や腟壁形成術といったNTRや、経腟メッシュ(以下TVM)手術や(腹腔鏡下/ロボット支援)仙骨腟固定術といったメッシュを用いた手術など様々な治療を行っています。これらの中から患者様の病状に応じて最善の手術方法を選択しています。当院で主に行っている手術方法について以下に述べます。
TVM手術は、図のように腟の壁を切開し、膀胱と腟の間にメッシュを挿入し、しっかりした靭帯に固定する手術です。手術時間が短く、身体の負担も少ない利点があります。再発率も低い有効な方法ですが、性交渉の習慣がある方や重度の子宮脱がある方などにはお勧めできない方法です。

腹腔鏡下仙骨膣固定術ふくくうきょうかせんこつちつこていじゅつは、下の図のように膣~子宮の壁にメッシュを固定し、上に吊り上げることにより骨盤臓器の位置を矯正します。全身麻酔が必要であるものの、膀胱瘤や子宮脱、直腸瘤などいずれの病気にも対応でき、成功率の高い方法です。

またロボット支援仙骨腟固定術しえんせんこつちつこていじゅつも当院では行っています。前述の腹腔鏡下仙骨膣固定術と同じ手術内容を、最新の内視鏡手術支援ロボット「ダ・ヴィンチXi」を用いて行う方法です。ダ・ヴィンチは、①鮮明な3D画像、②拡大した画像、③人間の手首以上の可動域、など様々な特徴を持っています。したがって、繊細かつスムーズ、安全かつ確実な手術をすることができます。
優れた特徴を持つダ・ヴィンチを用いて、図のような小さな傷で手術ができますので、術後の痛みも少なく、数日で退院できる非常に満足度の高い手術です。症状でお困りの方は、お気軽に泌尿器科にご相談ください。

腹圧性尿失禁の治療

腹圧性尿失禁とは、出産や加齢で女性の骨盤底を支える支持組織が緩むことで生じる、尿が漏れる病気です。おなかに力が入ったとき(咳やくしゃみなど)に、自分の意思にかかわらず尿が漏れてしまい生活に支障をきたす状態です。多くの女性が悩んでいる病気のひとつです。
軽症であれば薬物治療や骨盤底体操こつばんていたいそうが有効です。中等症以上の場合は、膀胱の頸部をテープで吊り上げ、尿失禁を治療するTVT(Tension-free vaginal tape)手術が選択されます。経腟的(腟の中からの手術です)に行う非常に体の負担の少ない手術で、90%以上の方に腹圧性尿失禁の改善が期待できます。症状でお困りの方は、泌尿器科にお気軽にご相談ください。

がんの先進的医療、がんゲノム医療とバイオバンクへの取り組み

愛知医科大学病院泌尿器科は、がん治療をより先進的、確実なものにするために、以下の取り組みをしています。
当院での手術により摘出されたがんを含む組織の一部を患者さんへ、そして未来の患者さんへ活かすために、同意をいただけた患者さんに以下の取り組みを行っております。

泌尿器科がん病理専門医、放射線診断医、治療医を交えた摘出された臓器、がんへの議論(当院で手術を受けられたすべての患者さんが対象です)
摘出直後の、-80℃環境下での、がん細胞の凍結保存(バイオバンク:同意を得られた患者さんのみが対象です)
治療方針、選択に迷う希少な患者さんに対する腫瘍内科医を交えた多職種での会議(キャンサーボードの開催により多くの診療科で議論をします)
がんゲノム医療の推進(がんゲノム医療地域連携病院)

がん治療は、日々、複雑化、高度化、多様化しております。知の多様性、多くの意見を吸収し、議論し適切な治療が行える体制システムを構築しています。

前立腺レーザー蒸散術について

前立腺肥大症とは
前立腺肥大症は、年齢とともに徐々に肥大した前立腺によって尿道が狭く圧迫されることで、排尿困難感、排尿に時間がかかる、頻尿などの症状を認めます。場合によっては自力では排尿ができずに尿道から膀胱へ管(カテーテル)を挿入する必要が出てくる場合もあります。前立腺肥大による排尿障害に対しては一般的に薬物療法が第一選択とされています。薬によって肥大した前立腺や尿道の筋肉を緩めて尿が出やすくすることにより、自覚症状の改善を期待するものです。多くの方が薬物療法によって症状は改善しますが、十分に改善しない場合、一度は改善したものの徐々に悪化する場合、薬の長期服用を避けたい場合や自排尿ができないなど症状が重症な場合には、肥大した部分を切除する手術が行われます。
前立腺肥大症
前立腺肥大症に対する外科的治療
前立腺肥大によって圧排された尿道を拡げるために、従来から低侵襲手術として、水(灌流液)で視野を確保しながら尿道から内視鏡を入れ前立腺を高周波メスで切除する手術(TUR-P)が広く行われてきました。この手術は高い治療効果があるものの、手術中の出血量が比較的多いこと、術後に尿道カテーテルを留置する期間が長いこと、また灌流液の吸収により水中毒(低ナトリウム血症)を起こすリスクがあるなど課題がありました。また、出血しやすい手術の特性から、脳血管や循環器の疾患で抗凝固薬を服用している高齢者には手術を行うことが難しいとされてきました。
前立腺肥大症に対する従来法の課題に対応した最新の治療法として、2023年3月にハイブリッドツリウムレーザー(HTL)を日本初導入しました。従来の光選択的前立腺レーザー蒸散術(PVP)よりも組織への侵襲がさらに軽減され、大きな前立腺肥大に対して、蒸散する方法だけでなく蒸散核出術も可能になります。また、低侵襲な経尿道的前立腺吊り上げ術(ウロリフト)も導入し、ご高齢の方でも安心して治療が受けられます。前立腺肥大症の症状でお困りの方で、興味がございましたら当院泌尿器科にお気軽にお問い合わせください。
HTL

尿路再建術

私たちは、がんなどの悪い病巣を摘出する手術だけでなく、尿の通り道を作り直す「尿路再建手術にょうろさいけんしゅじゅつ」を積極的に行っています。この尿路再建手術の対象となる病気には、尿道狭窄にょうどうきょうさく(尿道が狭くなり、尿を出すことに困る)や尿管狭窄にょうかんきょうさく(尿管が狭いため尿管ステントを必要とする)、膀胱膣瘻ぼうこうちつろう(常に尿が漏れてしまう)などが含まれます。これらの状態は、生命に、直接関わることは少ないです。しかし、生活の質(Quality of Life)に大きく影響します。
愛知医科大学病院泌尿器科では、『解決のための治療が受けられず諦めてしまっている患者さん』に、できる限り元の生活に戻っていただけるよう、診察、治療をしております。これらの病気、状態でお困りの患者さんは、是非、私たちに、一度ご相談ください。

尿道狭窄にょうどうきょうさく
尿道には、膀胱から尿が出るための通り道としての役割があります。尿道狭窄は、外傷がいしょうや手術、感染症などの原因により尿道が狭くなり、尿が出しにくくなる状態です。これまでは、内視鏡的ないしきょうてきな切開手術や拡張ブジ-(金属の管を通して、尿道を広げるための処置、手術)が主に行われてきました。しかし、この方法には、尿道狭窄が再発しやすいという欠点がありました。私たちは、尿道狭窄症の患者さんに、より成功率が高い尿道形成手術にょうどうけいせいしゅじゅつを積極的に行っています。尿道形成手術は、狭くなった部位を除去し、良い状態の尿道と尿道をつなぎ直す(尿道吻合手術にょうどうふんごうしゅじゅつ)、あるいは口の中の粘膜を尿道の粘膜の代わりに用いて尿道を作り直すことにより、尿道のカテーテルの留置を必要とせず、尿が出せるように、そして、出やすくするような排尿はいにょう症状の改善を目指しています。
尿管狭窄にょうかんきょうさく
尿管は、腎臓じんぞうで作られた尿を膀胱ぼうこうまで運ぶ役割があります。尿管狭窄は、過去の手術や放射線、炎症など様々な原因により尿管が狭くなり、尿路感染症にょうろかんせんしょう(尿に細菌が入り高熱がでる)や腎臓じんぞうの機能が低下する原因となります。尿管狭窄は、カテーテルやステントなどの管により治療されることが多いですが、定期的な交換が必要です。また、これらは対症療法(一時的な解決の方法)であり、根本的な治療方法ではありません。尿管狭窄に対する手術には、病変の部位により様々な方法があります。膀胱や小腸を用いて再建を行うこともあります。患者さんの病態に最も適した方法を提案させていただきます。
膀胱膣瘻ぼうこうちつろう
膀胱腟瘻は、骨盤の手術や放射線などが原因となり、膀胱ぼうこうちつが穴で繋がってしまう状態です。常に膀胱(ぼうこう)から膣(ちつ)に尿が流れることにより、尿失禁(尿漏れ)が生じるため、おむつやパッドが常に必要となります。尿失禁は、生活の質が大きく損なわれる状態であり、外出、旅行に苦労する患者さん、尿漏れを減らすために水分をとることを控える患者さんもいます。瘻孔ろうこう(交通する穴)の位置により、腟のなかを切開して治す手術やお腹を開けて治す手術(開腹手術かいふくしゅじゅつ)など、最も適した方法を検査により、決定し、提案させていただきます。

専門外来

排尿障害専門外来

前立腺肥大症や過活動膀胱などの下部尿路機能障害は、生命に直接影響を及ぼすことは少ないですが、生活の質を大きく低下させる疾患です。適切な薬物治療を行っても効果不十分な症例や、病態が分かりにくい症例など、日常診療で時に遭遇します。愛知医科大学泌尿器科では、様々な下部尿路機能障害について高い専門性をもって診療にあたって参りました。このような背景から、下部尿路機能障害でお困りの患者様の生活の質の向上のため、また地域の先生方との連携を今まで以上に推進するため、このたび排尿障害専門外来(毎週火曜日午前)を立ち上げました。近隣の医療機関の先生方の中で該当の患者様がいらっしゃりましたら、是非ご紹介いただければ幸いです。
ご紹介いただく場合は、専用の紹介状・診療情報提供書をご活用ください。

診療・治療実績

診療実績(令和3年度)

外来患者数(1日平均) 99.5人

治療実績(手術)

  2019年 2020年
経皮的腎・尿管砕石術 (PNL or ECIRS) 4 1
体外衝撃波砕石術 (ESWL) 39 12
経尿道的尿管砕石術 (TUL) 尿管+膀胱 105 102
腎部分切除術 (開腹) 1 0
腎部分切除術 (鏡視下) 0 0
根治的腎摘除術 (開腹) 4 6
根治的腎摘除術 (鏡視下) 10 28
ロボット支援腎部分切除術 16 11
腎尿管全摘膀胱部分切除術 (開腹) 0 1
腎尿管全摘膀胱部分切除術 (鏡視下) 16 16
経尿道的膀胱腫瘍切除術 (TURis-Bt) 115 137
膀胱全摘除術 (開腹) 1 0
ロボット支援膀胱全摘除術 8 9
尿管皮膚瘻造設術 2 3
回腸導管造設術 7 8
新膀胱造設術 0 1
尿失禁手術 (TVT,TOT) 0 0
腹腔鏡下仙骨膣固定術 (LSC) 0 3
ロボット支援仙骨膣固定術 (RASC) 0 3
経尿道的前立腺切除術 (TUR-P/TURis-P) 4 1
光選択的前立腺レーザー蒸散術 (PVP) 27 16
ロボット支援下根治的前立腺全摘術 (RARP) 54 50
人工尿道括約筋留置術 0 0
尿道拡張術 3 5
高位精巣摘出術 13 7
精巣固定術 (精巣捻転に対する) 0 8
停留精巣固定術 4 0
陰嚢水腫根治術 7 4
陰茎環状切開術/背面切開術 5 6
後腹膜腫瘍切除術 0 0
膀胱水圧拡張術 1 4
仙骨刺激装置留置術 0 2
ボトックス療法 0 3
計(その他手術を含めた件数) 455 459

キーワード

泌尿器科,ロボット,内視鏡支援,ダビンチ,体外衝撃波結石破砕術,腹腔鏡下部分切除,TURis, 先進医療,低侵襲,機能温存

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