神経内科

神経内科は,名古屋市を含め愛知県東部地域を広く実診療圏とした神経疾患の診療拠点としての役割を担っています。診療領域は神経疾患全般を網羅し,特に脳卒中センターを兼務して,脳梗塞,脳出血を中心とした脳卒中急性期診療体制の強化と地域医療連携体制の充実に貢献しています。また本学は愛知県難病ネットワークの拠点病院でもあり,神経変性疾患を中心とした難病医療の社会的側面にも深く貢献しており,加えて本学は研究教育機関として神経変性疾患・筋疾患研究に邁進し,その成果を社会に還元するとともに,学生教育,研修医教育,神経内科専門医教育を精力的に実践し,現代社会の求める後継医師の育成に努めています。
種々の神経疾患,特にパーキンソン病や脊髄小脳変性症,筋萎縮性側索硬化症などを代表とする神経変性疾患による症候・症状は,患者の日常生活動作・能力に直接大きく影響することから,各疾患の治療ガイドラインに基づく治療を駆使するだけでなく,丹念な診察の積み重ねによる予後予測を行うとともに,病期に対応した日常生活指導,精神的サポートを提供していくことを当教室の信条として神経内科専門診療を実践しています。また主治医は患者・家族に対する社会的サポートにも積極的に参画し,医療ケースワーカー,ケアマネージャー,保健師との連携を密にとり,患者・家族のQOL向上に努めています。
遺伝性神経疾患については,神経内科学を専門とする臨床遺伝専門医による遺伝カウンセリングを積極的に取り入れた神経疾患診療を実践しています。
さらに,脳卒中センターにおける脳卒中診療は,救命救急医のトリアージを経て神経内科当番医が診察し,神経学的所見,CT所見,MRI/MRA所見,血液検査所見を含む身体諸検査所見を基に病型診断,およびt-PA静注,血管内治療による超急性期血栓溶解治療を含む抗血栓療法治療を迅速かつ適切に行っています。また神経内科病棟内に急性期リハビリ室の設置しており,より早期からの重点的急性期リハビリテーションを実現しています。

診療部門からのごあいさつ

部長
道勇 学

21世紀は「脳の世紀」と云われています。これは近年の脳科学の目覚ましい発展から生まれてきた言葉ではありますが,臨床の現場においても2つの意味でまさに脳の時代の到来といえます。1つは,高齢化社会を迎え神経疾患患者が増加してガンを優に凌ぐようになったことであります。2000年度に行った名古屋市の介護保険実施の実態調査結果では,すでに被保険者全体の過半数が脳卒中,認知症,パーキンソン病で占められていることが明らかとなっております。もう1つは,脳卒中に代表されるBrain attackに対する急性期医療の分野が目覚ましく注目されてきたことです。欧米においては早くからその重要性が認識されCritical Care Neurologyとして確立しておりますが,日本においては発展段階にあり,その確立に向けた早急な整備が進められています。その中にあって本学においては先駆けて脳卒中診療をセンター化し,すでに本格稼働を開始しており,その規模を目覚ましく拡大してきております。
このように社会における神経内科診療に対する需要は,これまでの主流を占める神経難病を含む神経疾患患者の慢性期医療における拡大に留まらず,急性期神経疾患の領域においても拡大しておりますが,その一方において,昨今の医療行政の変革により医療供給の量から質,効率性を追求した医療組織/体制の構築への転化が迫られており,神経内科診療に対して多大なる影響を及ぼしています。とりわけIT導入および包括医療報酬制度の導入と,介護保険をはじめとする社会保障制度の変革による影響は決定的で,前者においてはこれまでの神経内科診療体制自体を大きく揺り動かし,後者については神経内科診療,特に慢性期神経疾患患者に対する診療が医療と福祉を一つにした新たな概念で捉えるべきものとなって,神経内科診療におけるその対応およびシステムの整備が社会の大きなニーズとして要請されています。今や神経内科診療の在り方そのものが大きな変革期を迎えているといっても決して過言ではありません。このように膨化,多様化した神経内科診療に対する社会的要請に答えるためには,脳科学の進歩によりもたらされる学問としての神経内科学の発展をリアルタイムに最大限に享受しつつ,今後の我が国における医療の方向性を見据えた愛知医科大学病院としての神経内科診療の確立が必須であります。
以上の神経内科という診療科が置かれた社会的情勢を鑑み,我々神経内科スタッフ一同は,第一に神経内科診療の先進性,最新性を担保しつつ,最先端の総合的神経内科診療を行うことにより地域の神経内科医療を先導すること,第2に教育機関における診療科として卒前・卒後教育に対する貢献を最大限に行っていくこと,第3に研究機関の診療科として臨床および病態基礎研究と,神経内科診療の擦り合わせを巧みに行っていくこと,第4に急性期疾患から慢性期疾患まで広く拡大した医療を総合的に展開するために,他の診療科ならびに地域医療との提携のパイプラインを通して他の診療科・地域関連施設との学問的,臨床的交流をはかることを実践し,その責務を確実に果たして行きたいと考えています。

主な対象疾患

  • 神経変性疾患
  • 脳卒中を含む脳血管障害
  • 免疫性神経疾患
  • 感染性神経疾患
  • 代謝栄養障害性神経疾患
  • 脊髄疾患
  • 神経筋接合部疾患
  • 筋疾患
  • 頭痛やてんかんなどの機能性脳疾患

専門外来

パーキンソン病外来

担当者 齋木英資,田口宗太郎
受診方法 直接受診していただくか、他院から紹介の方は医療連携を介して事前予約をお取りください。
診療日時 外来担当医表はこちら
※医師の担当日時(週・曜日)についてはこちらでご確認ください。

ボツリヌス治療外来

担当者 中尾直樹
受診方法 神経内科の外来に受診いただいた後の予約となります。
診療日時 神経内科外来担当医表はこちら
※医師の担当日時(週・曜日)についてはこちらでご確認ください。

脳機能検査外来

担当者 泉雅之
受診方法 神経内科の外来に受診いただいた後の予約となります。
診療日時 神経内科外来担当医表はこちら
※医師の担当日時(週・曜日)についてはこちらでご確認ください。

診療・治療実績

診療実績(脳卒中センターを含む) 令和2年度

外来患者数(一日平均) 71.0人
入院患者数(一日平均) 42.1人

設備等

MRI,CT,SPECT,血管撮影,超音波(心エコーを含む全身用および経頭蓋ドップラー),脳波,筋電図など,神経疾患診療に必要な医療設備は完備しています。CT,MRI/MRAは24時間緊急対応可能であり,脳卒中急性期診療をはじめとする神経疾患救急医療に威力を発揮しています。

高度な専門医療

神経疾患の内訳は,脳血管障害(脳梗塞,脳出血,一過性脳虚血発作,一過性全健忘,脳血管性認知症,脳静脈洞血栓症など),大脳皮質変性疾患(アルツハイマー病,レビー小体病,前頭側頭型認知症,大脳皮質基底核変性症など),錐体路変性疾患(筋萎縮性側索硬化症,球脊髄性筋萎縮症,原発性側索硬化症),基底核中脳変性疾患(パーキンソン病,進行性核上性麻痺,ハンチントン病など),小脳脳幹脊髄変性疾患(多系統萎縮症,遺伝性脊髄小脳変性症など),脱随疾患(多発性硬化症,急性散在性脳脊髄炎),神経系感染症(辺縁系脳炎,髄膜炎),栄養障害性神経疾患(アルコール脳症,ウェルニッケ脳症,糖尿病性ニューロパチーなど),代謝異常による神経疾患(ミトコンドリア脳筋症;CPEO,MERRF,MELAS),脊髄疾患(頸椎症性脊髄症,HTLV-1関連脊髄症(HAM),脊髄梗塞など),末梢神経疾患(CIDP,AIDP〔ギラン-バレー症候群〕,クロウ-深瀬症候群,CMT,FAPなど),神経筋接合部・筋疾患(重症筋無力症,皮膚筋炎,多発筋炎など),機能性脳疾患(てんかん,不随意運動など),内科疾患の神経合併症(サルコイドーシス,傍腫瘍性症候群,甲状腺機能亢進症など),その他低髄圧症候群や正常圧水頭症,トローザ-ハント症候群であり,各疾患に対し,一般医療施設では実践困難かつ高度な神経内科専門医療を行っています。
脳卒中診療は,救命救急医のトリアージを経て可及的速やかに神経内科当番医が診察します。神経学的所見,CT所見,MRI/MRA所見,血液検査所見を含む身体諸検査所見を基に病型診断,およびt-PA静注,血管内治療による超急性期血栓溶解治療を含む抗血栓療法治療を迅速かつ適切に行っています。退・転院時日常生活自立率は6割。また病棟内に急性期リハビリ室を設置しており,より早期からの重点的急性期リハビリテーションを実現しています。
種々の神経疾患,特にパーキンソン病や脊髄小脳変性症,筋萎縮性側索硬化症,脳卒中などを代表とする神経変性疾患による症候・症状は患者の日常生活動作・能力に直接大きく影響することから,各疾患の治療ガイドラインに基づく治療を駆使するだけでなく,丹念な診察の積み重ねによる予後予測を行うとともに,病期に対応した日常生活指導,精神的サポートを提供していくことを当教室の信条として神経内科専門診療を実践しています。また主治医は患者・家族に対する社会的サポートにも積極的に参画し,医療ケースワーカー,ケアマネージャー,保健師との連携を密にとり,患者・家族のQOL向上に努めています。
さらに,遺伝性神経疾患については,密な大学間連携のもと,神経内科学を専門とする臨床遺伝専門医による遺伝カウンセリングを積極的に取り入れた神経疾患診療を実践しています。

初診(紹介制)について

かかりつけ医から地域医療連携室を通して,ご予約ください。
外来診療の混雑緩和のため,原則,外来窓口での診療予約は行いません。かかりつけ医からの「診療情報提供書」をもって地域医療連携室より予約をおとり致します。
診療情報提供書をお持ちでない初診患者さんは,プライマリーケアセンターへの案内となります。

キーワード

神経難病,脳卒中,脳梗塞,脳出血,脳の病気,神経の病気,脊髄の病気,筋肉の病気,脱力,筋肉の痩せ,感覚のしびれ,しゃべりにくさ,歩きにくさ,ふらつき,手足のふるえ,物忘れ/健忘,頭痛,意識障害,けいれん

医療連携について

愛知県難病医療ネットワークは,愛知県が推進する難病患者に対する支援事業の1つであり,愛知医科大学病院を拠点病院として県下90病院が協力病院,一般協力病院として参加しています。難病医療ネットワークでは愛知県を3つの地域ブロック(三河ブロック,尾張ブロック,名古屋ブロック)に区分し,各ブロックにおいて協力病院が中心となって一般協力病院との連携のもとに難病患者支援活動を展開しています。拠点病院である愛知医科大学病院では難病医療専門員が常駐し,難病患者・家族からの各種相談応需,協力病院等の関係機関との連絡調整を行い,支援要請,適切な施設紹介,入院先調整等の業務を行っています。

関連リンク

連絡先

TEL
外線 : 0561-62-3311(代表)
内線 : 23510 神経内科医局