全身性強皮症と強皮症腎クリーゼ

全身性強皮症と強皮症腎クリーゼ

概要

全身性強皮症は,皮膚が硬化する疾患ですが,皮膚以外の臓器障害も起こす疾患です。 男女比は1:12であり,30~50歳代の女性に多く見られます。大きく二つのタイプがあり,全身に皮膚硬化が進展する「びまん皮膚硬化型全身性強皮症」と,皮膚硬化が手足にとどまる「限局皮膚硬化型全身性強皮症」に分けられます。
血液検査で検出される抗体によってある程度判断が可能です。抗Scl-70抗体,抗RNAポリメラーゼIII抗体は,びまん皮膚硬化型に,抗セントロメア抗体は限局皮膚硬化型になりやすくなります。皮膚硬化は手指の腫れぼったい感じからはじまり,手のこわばり感や,指輪が入らなくなったことで気づかれることもあります。びまん皮膚硬化型の場合は,その後,手背,前腕,上腕,体幹と体の中心部分に皮膚硬化が進むことがあります。硬化した皮膚は黒ずんだり,茶色や一部白色になったり皮膚の色が変化します。指先などに潰瘍ができやすくなります。皮膚硬化以外の症状としては,レイノー症状が高頻度に出現します。冷たいものに触れると手指が蒼白~紫色になる症状で,冬に多くみられ,初発症状として最も多く,皮膚硬化が起こる数年前から出現することもあります。内臓の臓器障害としては,肺,腎臓,消化管に症状が出やすいです。肺が線維化すると,肺線維症といわれ,咳や息苦しさが生じるようになります。急な血圧上昇とともに急速に腎機能が悪くなることがあり,強皮症腎クリーゼといいます。消化管が線維化すると,動きが悪くなり,逆流性食道炎になりやすく,胸やけなどを感じます。また,肺高血圧症にも注意が必要ですので,自覚症状がなくとも心エコーなどの検査が必要になります。

治療法

現段階では皮膚硬化や肺線維症を治癒させる確立した治療法はありません。しかし,症状を和らげたり進行を遅らせるための治療法はあります。皮膚硬化の発症早期のむくんだ感じの時期に進行を抑える目的でステロイドを使用します。肺線維症に対しては,進行が速い場合などにはステロイドや免疫抑制剤を使用します。保険適応ではないですが,関節リウマチなどで使用される生物学的製剤が有効であったという報告があります。腎クリーゼを発症した場合には迅速な治療が必要で,ACE阻害薬という降圧薬を開始し,状態によっては血漿交換や血液透析が必要になります。また,レイノー現象には血管拡張薬,皮膚潰瘍には外用薬,逆流性食道炎には制酸剤などで対処します。

当院(愛知医科大学病院)の特色

強皮症,特にびまん皮膚硬化型では,皮膚以外の臓器障害の頻度が高くなり,肺,腎臓の障害を見据えた治療法の選択が必要になりますが,当科は腎臓専門医とリウマチ(膠原病)専門医の両方を標榜しており,病態に合わせた治療法の選択と,腎クリーゼへの速やかな対処,血漿交換,血液透析を行うことができます。