高安動脈炎

高安動脈炎

概要

高安動脈炎は,大血管炎に分類され,大きな動脈に炎症を起こします。大きな動脈とは,大動脈と,大動脈から1回分岐した血管くらいの大きさを指します。高安動脈炎は50歳未満の若い女性に多く発症します。9割が女性で,発症年齢は女性の場合20歳前後にピークが見られます。血管の炎症により,血管が狭窄や拡張します。自覚症状は乏しいことが多いですが,発熱(微熱),倦怠感,頸部痛(頸動脈の痛み)や,血管炎が進行して血管が狭窄すると,血流障害の症状が出現します。腕への血流障害により,手首での脈拍の左右差や触れにくくなり,「脈なし病」とも言われます。脳への血流障害で失神,眼への血流障害で視力障害などの症状が出る可能性があります。大動脈弁付近の炎症によって大動脈弁閉鎖不全症になると心不全の原因となり手術が必要になります。しかし,不明熱,原因不明の炎症反応(CRPの上昇)として見過ごされている事もあります。
診断には,血管の炎症を画像で捉えます。造影CT,MRI,頸部血管エコー,PET-CTが有用です。しかし,血管炎と思われる画像所見があっても,高安動脈炎と診断するには,他疾患を除外することが重要で,総合的な判断が必要です。

治療法

ステロイドが第一選択として使用されます。最初は多めの量で開始して漸減しますが,減量の途中で再燃することが多く,プレドニンとして5mg/日以下に減量できない場合や,治療抵抗性の場合は,免疫抑制剤を併用することもあります。アザチオプリン(イムラン®),メトトレキサート(リウマトレックス®),シクロスポリン(ネオーラル®),シクロホスファミド(エンドキサン®)などが使用されます。これらの治療でもうまくいかない時は,生物学的製剤であるIL-6阻害薬のトシリズマブ(アクテムラ®)を選択します。

当院(愛知医科大学病院)の特色

血管炎の炎症,血管の狭窄の状態を確認するために,造影CT(3D-CT),造影MRI,頸部血管エコー検査を行うとともに,高安動脈炎の血管の炎症の拡がりを把握するためにPET-CTが可能です。治療では,トシリズマブ(アクテムラ®)を併用することで,ステロイドをなるべく減量します。