多発性筋炎/皮膚筋炎

多発性筋炎/皮膚筋炎

概要

筋肉に炎症を起こし,筋肉痛や力が入りにくい,疲れやすいといった症状がでます。特に上腕~肩,頸部や大腿の筋肉に症状が出やすく,腕が挙げにくい,しゃがみにくい,立ち上がりにくいという症状が出やすくなります。発熱,関節痛も伴うことがあります。特徴的な皮膚症状を伴う場合は皮膚筋炎,伴わない場合を多発性筋炎と診断します。筋肉だけでなく,肺,心臓などの他臓器にも炎症が起こりえます。
皮膚筋炎の皮膚症状の特徴は,上まぶたのやや腫れた赤色の皮疹であるヘリオトロープ疹,手指の関節や肘,膝にカサカサしたやや紅色の皮疹であるゴットロン徴候,首~前胸部の紅斑であるVネックサイン,首から肩の後ろにかけて出現する紅斑はショールをかける部位なのでショールサインと呼ばれる皮疹が特徴的です。皮膚筋炎の中には,皮膚症状のみで筋炎症状が乏しいタイプがあります。これは皮膚症状のみで軽症というわけではなく,肺障害が急速に進行する可能性があり,要注意です。
肺障害は間質性肺炎を合併しやすく,緩徐に進行し次第に肺が縮小し,咳,息切れが出ます。心筋障害はまれですが,不整脈,心不全の原因となります。
血液検査では,筋肉の炎症を反映して,CK,アルドラーゼ,CRP値が上昇します。また,抗ARS抗体(抗Jo-1抗体含む),抗Mi-2抗体,抗TIF-1γ抗体,抗MDA5抗体など筋炎特異抗体が測定可能で,抗体の種類によって疾患の特徴が把握しやすくなります。
また筋炎は,悪性腫瘍を合併することがあり,癌の検査も行います。

治療法

多発性筋炎も皮膚筋炎も,ステロイド治療が基本となります。高用量から開始して,徐々に減量します。間質性肺炎合併時や,ステロイドだけでは再燃する例では,タクロリムス(プログラフ®),シクロホスファミド(エンドキサン®)といった免疫抑制剤や,大量免疫グロブリン療法(IVIg)を組み合わせて治療します。急速に進行する間質性肺炎に対しては,アフェレシス療法(血漿交換,PMX-DHP)を行うことがあります。

当院(愛知医科大学病院)の特色

診断にあたっては,MRIによる筋炎の画像診断や,皮膚科,神経内科の協力を得て,皮膚生検,筋電図,筋生検を行います。筋炎の治療には,長期のステロイド投与を余儀なくされることが多いため,合併症予防が大切になってきます。感染症,胃・十二指腸潰瘍,ステロイド骨粗鬆症,ステロイド糖尿病への対策を講じながら治療します。アフェレシス療法が必要な場合は,期を逸することなく迅速に開始することが可能です。