全身エリテマトーデス(SLE)とループス腎炎

全身エリテマトーデス(SLE)とループス腎炎

概要

SLEとは,若い女性に多く発症する全身の多臓器に障害を引き起こす自己免疫疾患です。皮膚の異常が出現しやすく,顔面の皮疹である蝶型紅斑が特徴的ですが,円板状の皮疹が多発したり,光線過敏症,痛みを伴わない口内炎が出現したりします。関節炎はとても頻度が高く,関節痛で発症することもあります。血液検査にて,白血球(特にリンパ球),赤血球,血小板が減少することがあり,抗核抗体,抗DNA抗体,抗カルジオリピン抗体などの自己抗体が検出されると診断されます。尿検査では,蛋白尿・血尿があるとループス腎炎の可能性があり,腎生検が必要になります。その他,ループス腸炎(腹痛),胸膜炎・心膜炎(胸痛),精神神経ループス(脳炎,精神症状)が出現する場合があります。

治療

SLEの治療を開始するには,まず治療をすべき症状,臓器障害の重症度を十分に評価し,治療の強度を決定します。基本はステロイドを中心とした内服薬ですが,ステロイドは多くの量を長い期間使用すると副作用が心配になるので,ほとんどの場合は,いくつかの免疫抑制剤を併用します。薬剤の種類は多くなりますが,それぞれが必要再小量になるように細やかに投与量を調整します。現在使用している薬剤は,ステロイド以外に,ヒドロキシクロロキン(プラケニル®),タクロリムス(プログラフ®),ミコフェノール酸モフェチル(セルセプト®),アザチオプリン(イムラン®),シクロホスファミド(エンドキサン®),ベリムマブ(ベンリスタ®)などを併用して治療しています。

当院(愛知医科大学病院)の特色

近隣施設で膠原病を専門とする病院が少ないため,当科にはSLEの患者さんは約220人とかなり多くの方が通院されています。当科は腎臓専門医とリウマチ(膠原病)専門医の両方を持つ専門医が多くいますので,ループス腎炎の場合は,迅速に腎生検で診断し治療を開始することができ,さらに,当科は総合腎臓病センターの管理も担っていることから,血漿交換や血液透析が必要な病態の場合は即日に開始することができます。SLEは皮膚や肺,心臓,消化管,神経など多臓器に障害を起こす可能性があり,他科と連携をとって診療にあたります。治療には多種の薬剤併用が必要な疾患ですが,それぞれの薬剤の特性を理解して各患者さんにあった薬剤の組み合わせを選択します。免疫抑制剤(プログラフ®,セルセプト®)は各個人によって血中濃度が異なるため,血中濃度測定を行っており,正確な薬物動態を把握する必要がある場合は1泊入院で頻回の血中濃度モニタリングを行い,必要最小限の薬剤投与量にする試みを行っています。薬剤の副作用,合併症の予防・管理に力を入れています。