抗糸球体基底膜腎炎

抗糸球体基底膜腎炎

概要

尿を作っている糸球体に炎症が起こる病気は,糸球体腎炎と呼ばれます。抗糸球体基底膜腎炎は,抗基底膜抗体(抗GBM抗体)が糸球体に沈着することで,急激に腎機能が低下する糸球体腎炎のことを指します。この病気の頻度は非常に低いですが,中高年に多い傾向にあります。病気の初期には,発熱,だるさ,食欲低下などの全身の症状がみられ,進行すると血尿や尿量の減少,むくみなどが出現することがあります。また,経過中に肺の中の血管が破れて出血をきたし(肺胞出血),息切れ・喀血などが認められ,呼吸管理を必要とすることがあります。
発症機序は,糸球体の基底膜のコラーゲンに対する抗体(抗糸球体基底膜抗体)が産生され,基底膜に沈着することによって,糸球体や肺に炎症が起こると考えられています。
診断は血液・尿検査,画像検査などを組み合せて行いますが,最終的には可能な限り腎生検を施行して組織学的になされます。腎生検では,多くの糸球体に半月体という細胞の増殖する構造物が観察され,壊死性半月体形成性糸球体腎炎とよばれています。最終診断は,血液・尿検査に加えて,腎臓の組織を一部採取し,顕微鏡で調べる検査(腎生検)を行うことによって組織学的になされます。腎生検では糸球体の中に“半月体”という構造物を認め,“半月体形成性糸球体腎炎”とよばれています。

治療法

免疫の異常によって,腎臓の糸球体が強い炎症を起こしているため,その免疫反応をいち早く抑えることが必要です。血管の炎症をしっかりと抑え込むために,まずはステロイドを中心とした治療を行いますが,多くの患者さんで血液成分を交換する治療法(血漿交換)を併用します。進行した腎不全の状態であれば,血液透析を併用しますが,腎機能が回復しない場合には継続的な血液透析が必要となるケースが多くみられます。病気をしっかりと抑え込んだ後は,病気が再発してこないように,治療を継続します。

当院(愛知医科大学病院)の特色

抗糸球体基底膜腎炎は,急激な経過をたどることが多く,不可逆的な臓器障害をきたさないためには,早期診断・早期治療が重要となってきます。また,再発時にも早期に必要な検査を行い,早期治療を行うことが重要になります。当院の患者さん中心の診療体制によって,最善の治療を行うことが可能になると考えております。